鬼ごっこ 第5回
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「えっ?に、日曜日って……あさって?」
「あ、そうか。今日はもう金曜日だったっけ……急すぎたかな?なにか予定入っちゃってる?」
「ううん!ぜんぜん!なにも!」
ブンブンと何度も頭を横に振る。そんなに振ったら目が回っちゃうよ。
「うん、じゃあ日曜日。出かけようか。」
「あのっ、その……どこへ行くとかの予定は……」
「うん、そうだなぁ…麻理が行きたいところでいいよ。麻理のために出掛けるんだし。」
「じゃ、あ……映画!見たい映画があるの!だからおにいちゃんと見たい!」
「うん、じゃあそうしよう。」
よかった。いつもはなんだかんだで怒ってばかりだけど、こうやって笑顔も見せてくれるんだよな。
………こんなこと、沙恵ちゃんに言ったらまたシスコン扱いされるかな?
でも仲が悪いよりはマシだよね。
結局麻理はそれから鼻歌交じりで過ごし、どんな話をしてもご機嫌だった。
ご飯を食べ終え、テレビを見ながら話していたら、もう遅い時間だった。
「もう寝ようかな…おやすみ、麻理。」
「うん、おやすみなさい、おにいちゃん。」

ベットに横になる。まだ残暑が厳しく、夜になってもまだ蒸し暑い。窓際にベットがあるため、
風が通って気持ちいいけど。
「あっ、部長にメールしなくちゃ…」
折角アドレスを教えてもらったんだ。連絡しなくちゃ失礼だよな。
『To秋乃葉先輩
sub海斗です。
今日は遅くまでありがとうございました。こんな時間にメール送ってすみません。』
どうもメールって苦手だな。どうやって送ればいいかよくわからないや。
ましてや秋乃葉先輩だし……まぁ、こんな感じでいいかな。
送ってから少しして。
〜〜♪
『frm秋乃葉先輩
こちらこそ家まで送ってくれてありがとう♪また今度機会があったら一緒に帰っていいかな?』
『To秋乃葉先輩
喜んで。部長がよければいつでも送りますよ。暗くても、明るくても。』
『frm秋乃葉先輩
うーん…二人っきりの時やメールやってるときは部長って呼ぶのはやめて欲しいかなぁ。
華恋、て呼んでほしいな。あと…一緒に帰るなら、二人っきりで、ね♪』
『To秋乃葉先輩
わかりました、「華恋」センパイ。』
それから何通かメールをして、おやすみを言った。

〜〜♪
「ん?誰だろ……華恋先輩はさっき終わったし……沙恵ちゃんかな?」
よく沙恵ちゃんともメールをやるから……いや………この時間なら…
『誰とメールしてたの?隣りの家のあの女?それとも私の知らないお友達?
…随分と楽しそうな顔してたね(怒)
隣りの女だったら……殺してこようか?そうすればその分私からのメールを見てくれるもんね♪♪』
果たして冗談か本気か。いや、『彼女』のことなら本当に殺しかねない。……っていうか、
なんでメールしてたのを知ってるんだ?
「っ!?もしや…!」
網戸を開けて窓から体を乗り出し、辺りを見回す……ダメだ、暗くてこっちからじゃあ何も見えない。恐らく外からなら電気のついてる僕の部屋は丸見えだろう。
「くそぉっ!」
慌てて窓とカーテンをしめる。外から見られてるとなると、のんびりと涼んでもいられない。
それにしても……どこから見てるんだ?
〜〜♪
また着信。
『アはハはハ♪恥ずかしがらなくってもいいのに。もういまさら隠しても意味ないよ?
海斗君のことはなんでも知っちゃったんだから。』

……これで確定した。絶対に外から見られてる。
そうだ、沙恵ちゃんは大丈夫だろうか。この様子だとまだ何も起こっていなさそうだけど……
「一応…確かめてみようかな……」
安全確認のため電話をする。こんな時間なら寝ちゃったか?とおもったら、
二回コールがなっただけで電話に出た。
「も、もしもし?か、海斗?」
「あ、沙恵ちゃん?…だよね?」
「や、やだなぁ、あったりまえじゃんか。ボクの携帯に電話かけたんでしょ?」
よかった。本物の沙恵ちゃんだ。カーテンをしているとはいえ、一応部屋の隅に移動し、
外からの死角に座る。
「いったいどうしたの?こんな時間に。」
「あ、ごめん。寝てたかな?」
「ううん。お風呂からあがって、ごろごろしてたところ。……それで、何の用?」
しまった…まさか誰かに襲われてないか心配だったか電話したなんて言ったら怪しすぎる。
ましてや用もないなんてのは失礼だし。
「えと…うん……」
「あっ!はっはーん。わかったぞ。さては寂しくってボクの声が聞きたくなったんだなぁ。
うんうん、憂いやつめ〜。いくらでも聞かせちゃおう。」

「へ?…あ、あはは。そ、そう。そうだよ。なんとなく、沙恵ちゃんの声が聞きたく
なっちゃって……電話しちゃった……」
しどろもどろで言われた通りの返事をする。
「えっ?ええっ!?」
物凄い勢いで大慌てする沙恵ちゃん。その慌て様はおかしいぐらいだ。自分から言ったのに……
「えっ……か、いと……うく……う…」
「?…さ、沙恵ちゃん?…」しばらく受話器からはなにも聞こえない。
「も、もしもし?沙恵ちゃん?」
「うぐ……うぅ…ひく…か、ひっく…かい…ぃ…とぉ…うぅ…うええん…」
「さ、沙恵ちゃん!?どうしたの!?泣いてるじゃんか!なにかあったの!?」
受話器の奥からいきなり沙恵ちゃんの涙声が聞こえ、一気に不安になる。
まさか、なにか痛い目にあったとか?
「ま、待ってて!いまからそっちに行くから!」
「うく…あ、あは…ううん、だ、らひじょうぶ…らから…ちょ、ちょっと、
テレビで感動しちゃって…ぐず…えへ、ボクとしたことが、らしくないなぁ。」
「は、はぁ…よかった…」
「ごめんね、心配させちゃって。ホントに大丈夫だから。じゃ、ボクはもう寝るね。」電話を切り、
またベットに寝る。よかった。なんだかほっとしたら眠くなってきちゃったな……
〜〜♪
〜〜〜♪
電話がなってるみたいだけど……だめだ…眠くてとる気も無いや…寝ちゃおう……
〜〜♪









〜〜♪♪





〜〜〜♪♪
『もうっ、海斗君たら優しいんだから。そんな所が好きなんだけどね。
だから今回は特別に許してあげる♪
でも……誰か他の女に手を出すようなら……そのときは本当にそいつを殺すよ?我慢できないからね。
(^з^)-☆Chu!!』


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