姉妹日記 『もう一つの姉妹の形』 第12話C
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 案外近場にあったあの女共の隠れ家
 夜にはもうその根城にたどり着いた
 私は今から、悪女共を討伐し、涼さんを取り戻す!
 川の穏やかなせせらぎにしばし耳を傾け熱い想いを少し鎮める
「ふぅ〜」
 私が深呼吸した時だった、月の光に照らされたシルエットが一つ私の方に向かって来た
 私は咄嗟に木の陰に隠れ様子を伺った・・・・その人は涼さんだ!
 喜びのあまり飛び出し抱きつこうとした時、今度は二つのシルエットが現れ涼さんのと重なった
 許せなかった、あの女共が・・・・
 涼さんをたぶらかし洗脳し私から遠ざけあげくの果てには奪い去った
 限界だった、私の思考回路も理念も自我も・・・・
 そろそろ決着をつけましょうか?
 最後に勝つのも笑うのも私です、涼さんをモノにする為なら私は修羅となり
 邪魔するモノすべてをなぎ払ってやる!
 神も私に味方してくれている、涼さんはあの女共を残してどこかに立ち去った
 勝機を見出した

 恐怖で一杯だった心が夏姉ちゃんと冬香のおかげでその気持ちを洗い流すことが出来た
 二人には感謝だ、二人とも僕が、夏姉ちゃん、冬香の両方と関係を持ったことを知っても
 尚僕を思ってくれている
 なら、僕は全力でその想いに応えるしかない
 だから―――――次にまた秋乃さんと対峙したときは僕の本当の気持ちを伝えよう
 そして、さよならしよう・・・・南条秋乃が好きだった僕に
「りょ〜お〜さ〜ん♪」
 え―――――

 心が壊れそうになる、なぜなら後ろからの声に振り返った僕の視界に入ってきたのが
 秋乃さんだったからだ
 愛らしい容姿を存分に際立たせる服装で天使のように笑む
 けれども僕にとってその微笑は恐怖の対象でしかない、冷たい汗が背中を伝った
 細く白い指が僕に迫ってくる
 ――――逃げなきゃ、頭で理解していても身体がいうことを聞いてくれない
 恐怖が完全に僕の頭の神経を掌握し、縛り付ける
「大丈夫ですか?怖かったですね?でも、もう安心ですよ?悪女共の手から助けだしてあげます」
 指が頬を這い、唇をなぞる――――
「もらった!!!!!」
 瞬間、影から人が飛び出し秋乃さんを抑えた

「やったよ!お姉ちゃん!!!!」
 く、油断した・・・・物陰から飛び出した冬香によって私は両手を拘束されてしまった
 そして冬香の呼びかけに夏美が不敵に笑みながら私に近づいてきた
「涼ちゃんにしたこと、存分に後悔させてやるんだから・・・・」
 私が涼さんに付けた腕輪を手にも持ちカチカチと音を鳴らしながら夏美は近づいてきた
 そっか、涼さんを助ける前に、まず魔王共を倒さなくちゃいけなかったんだ
 つい、舞い上がってしまって、私のバカ!
「・・・・っ!」
 私は夏美が腕輪をつけようとした瞬間、僅かな隙を突き飛び起きると
 脚に忍ばせておいたナイフを手に取った
「あぁぁぁ―――――!」
 まず、冬香に標的に据え飛び掛る
 馬乗りになり私は冬香の右肩に思い切りナイフを突き刺した
「あ・・・・が!」
 瞳孔が開き苦悶する冬香が無事な左の手で私の腕を凄まじい力で掴んできた
「・・・・・・」
 ナイフを右肩から引き抜く、血が飛び私の顔を鮮血に染める
 私は自らの顔が血に汚されるのも気にせずに今度は左肩を突き刺した
「きゃは♪見てみて〜、血が吹き出たよ〜涼さ〜ん♪」
 私は子供が親に自分の作った工作を見せるかのように血に染まった手に平を見せた
 驚愕し、顔をゆがめる涼さん、待っててね、すぐにこの女共をぶっ殺してやるから
 私はもだえる冬香のわき腹を思い切り蹴り飛ばすと今度は標的を夏美に変えた
 それを察知し咄嗟に逃げようとするけど、下げた脚を元の位置に戻した
「ふふ、逃げないんだ?いいのかな〜♪死んじゃうよ?」
「逃げるわけない、涼ちゃんは私と冬香で守ってみせる」
 良い度胸してるじゃない、さすが私から涼さんを奪い去っただけのことはある
 けどね、勝者は私、その未来だけは誰も覆せない
 一旦距離と取り、先ほどと同じように飛び掛る
 それを見て夏美は姿勢を低くして私にタックルしてきた
「く!」
 倒れた拍子にナイフが手元から落ちた、すぐに夏美はそれを蹴り遠くへ飛ばすと
 すぐに私の両手を抑え馬乗りになった
 すぐに私の首に手が掛けられる
「く・・・・ふふふ」
 この場に及んでなぜ余裕を見せられるの?
 そんな表情で夏美が私を見た
「ナイフが、一本だけって――――どうして思ったの」
 私はもう片方の脚に忍ばせておいたナイフを取ると首を絞める腕の肘のちょっと上を
 逆手に構えたナイフで突き刺した
「あぁぁ!!!!」
 痛みで我を失い私から離れてその場に膝を付き私に背を向ける
 私は後ろから夏美の肩を掴んでこちらに振り向かせ右手を思い切り踏みつけてやった
「あく・・・・ぅ」
 踏みつけるのをやめ、痺れで動けないその手にナイフを刺した
「あぁぁぁぁああああああぁぁ!!!!!」
 想像を絶する痛みに夏美は苦痛から逃げようとして必死でもがいた
 さぁ、そろそろとどめと行きますか?


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