姉妹日記 『もう一つの姉妹の形』 第5話
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 なんだろう?今日のお姉ちゃんは何時になく上機嫌だ・・・・
 鼻歌なんて歌いながら料理するお姉ちゃんなんて初めて見たよ・・・・
 お花畑をバックにスキップしそうな勢いのお姉ちゃんとは対照的に
 今日のお兄ちゃんは顔を俯けたり元気がなかったりと沈んでいる
 声を掛けても「なんともないよ」そう言っていつものお兄ちゃんに戻り笑顔を作る
 でもすぐに表情は曇り悲しげに俯く、その繰り返しだった
「熱でもあるの」
 おでことおでこをくっ付けた、驚くほど冷たいお兄ちゃんの肌に一瞬驚いてしまった
 でもそれ以上にお兄ちゃんからしたシャンプーの香りに私は違和感を覚えた
 いつもはツンと鼻をつくようなお兄ちゃんのシャンプーの香りに混じって
 お姉ちゃんのシャンプーの香りがした
 私は髪が痛みやすいのでお姉ちゃんとは違うシャンプーを使っている
 だから、私のシャンプーの香りではない、私は頭を巡った光景にハッとし息を飲んだ
 上機嫌なお姉ちゃん、どこか沈んだ様子のお兄ちゃん・・・・
 お兄ちゃんから漂うお姉ちゃんのシャンプーの香り
 点と点とが繋がり私は驚愕した、お兄ちゃんがお姉ちゃんのシャンプーを
 使った可能性もあるけど・・・・
 考えないように、気づかないように・・・・二人の様子が違うのを・・・・
 二人の間に漂う、空気を見ないように・・・・
 けど・・・・できなかった
 私はお兄ちゃんが大好きだから、愛しているから
 小さい頃病弱で家の外に出れないで退屈していた私を外に連れ出し、
 楽しいという感情を教えてくれた
 そのあと、両親に怒られそうになった私を庇い、自分が勝手に連れ出したと言ってくれた
 後で来たおじさんがお兄ちゃんの頭を殴って大声で怒鳴ってもお兄ちゃんは泣かなかった
 私に心配を掛けたくないから
 涙を溜め、私を安心させようと微笑むお兄ちゃんを見て私は思った
 この人とずっと一緒に居たいって

 深夜、遠くで聞こえる車の音以外しない中で私はお兄ちゃんの部屋にこっそり忍び込んだ
 驚いたことにお兄ちゃんはこんな時間でも起きていて、一人か考え事をしているようだった
「冬香?」
 暗闇の中でお兄ちゃんは私の姿を捉えて「なんでこんな時間に?」と目で語った
 私はなにも言わずお兄ちゃんの横に腰掛た
「失恋でもした?」
 そう問うとお兄ちゃんは目線を反らした、そして窓の外を見てため息をついた
 肯定なのか否定なのか解らない、でも・・・・
「私が慰めてあげようか?」
「え・・・・・」
 声と共に視線が私に戻ってきた
 この機を逃さずに私はお兄ちゃんに思い切り抱きついた
「どう、前はあるかないかって言ってた胸・・・・結構大きくなったでしょ?」
「そんな小さな胸で誘惑してるのか?」
 どうやらからかっていると思ったらしいお兄ちゃんはおどけてそう言うと私を離そうとした
 私はそれを許さずにさらに強く抱きつき、離すもんかとお兄ちゃんに訴えた
 上目で見つめ、「こら・・・・」と言うお兄ちゃんの唇に口付け言葉を止める
「ん・・・・・ん・・・・・ん」
 私の人生初となるキスは数秒で終わり、初めてにしてはねちっこく舌を絡めた
「冬香?」
 ようやく私の意図を知ったお兄ちゃんがなにをしているんだという表情で私を見た
「本気だよ、私・・・・・」
「・・・・・・」
「いいよ、お兄ちゃん・・・・」
 お兄ちゃんの服をつたない手つきで脱がして、私も一枚一枚服を脱いでいく
「ふ、冬香!!!!」
「あん、お兄ちゃんあんまりがっつかないでよ」
 獣のように私に飛び掛かりお兄ちゃんはまるでなにかを忘れたいかのように私を激しく抱いた
 もう、初めてだったのに・・・・お兄ちゃんの鬼
 でもいいの・・・・これでやっと・・・・お兄ちゃんは私もモノだもの・・・・
 少し気になることはあったけど・・・・
 そう、お姉ちゃんだ・・・・けど、失恋したお兄ちゃんの心の隙間に
 無理やり入り込んだだけだと思う
 気にすることもない、今はこの幸せを胸いっぱいに感じていればいいんだ・・・・
 お兄ちゃんの腕に抱かれ私は今までで一番安らかな眠りについた

「あ、ん・・・・く・・・・あん!」
 一人涼さんのことを思って私は一人自分を慰めていた
 まさか、あんなことになるなんて・・・・
 どうしても自分に自信がなかった、そして勇気もなかった
 だから、告白のとき妹の春乃に頼み込んで私に成り代わって告白してもらった・・・・
 デートの時も私は地味だから嫌われたらどうしよう・・・・
 嫌われたくなくて私はまた春乃に私のふりをして涼さんとデートして頼んだ
 春乃は「もうコレで最後だよ」そう言って承諾してくれた
 たった二度・・・・それだけのに・・・・私は全てを失った
 やるせなさがこみ上げ、私は一人で自分を慰めることしか出来なかった・・・・
 
「おわ、どうしたの?目にクマさんがあるよ?」
 挨拶も早々に春乃がそう言った・・・・私は軽く解釈してイスに腰掛けた
「それで、どうなのよ?あの彼とは?」
 心にナイフが刺されたように胸の中が跳ね心が騒いだ
「・・・・・・」
「もう、内気なんだから・・・・せっかく私が手を貸してあげたのに」
 また心が痛んだ・・・・

 やってしまった・・・・僕は頭を抱え苦悩した
 勢いとは言え、夏姉ちゃんとキスし冬香とやってしまった
 どうすればいいんだ?もう取り返しがつかないのは解っている・・・・
「・・・・・・」
 なにかごまかす様にケータイに手を伸ばした・・・・
 メールBOXを見るとほぼ全てが秋乃さんからだった・・・・
『秋乃:逢いたいです・・・・』
『秋乃:返事ください、涼さん』
 最初のだけ見て僕はケータイをベットに置いた
 少ししてケータイが鳴った、また秋乃さんからだ
『秋乃:いま、涼さんの家の前まで来ています・・・・お話、聞いてくれませんか?』
 窓を光を閉じるカーテンを開き外の様子を見る・・・・
 居ると解ってたのにそこに居た秋乃さんを見て僕は驚いてしまった
 僕と目が合うとニコッと笑んだ
 僕は慌ててカーテンを閉じて秋乃さんから目を背けた
 自分の存在をアピールするかのようにケータイが鳴った
 ゆっくりとした動作で僕はケータイの電源を切るとベットに置いた
「・・・・・・」
 コンコン、ドアを誰かが叩いた
 まさか・・・・秋乃・・・・さん
「涼ちゃん?お姉ちゃんよ〜開けて〜」
 夏姉ちゃんか・・・・僕はホッとしてドアを開いた
「あら、浮かない顔ね?」
 ・・・・・・・
 開けた瞬間唇が触れ合い、そして夏姉ちゃんはいつものように笑んだ
 その瞬間、僕の逃げたいという思いが弾け夏姉ちゃんをその場に押し倒していた
「あん、もう・・・抱いてくれるなら、ベットで・・・・ね?」
 僕は何度かうなずくと夏姉ちゃんの身体をベットに運びその大きな胸に顔を埋めた

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