生きてここに… 本編 第13章
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「誰が・・・・悪魔なんかに」
「酷いわね・・・・あなたのことをこんなにも愛してる女に向かって」
歪んだ愛なんて向けられてもね
詩織や奈々のような純粋なのを俺は希望するよ
「まぁ、いいわ・・・・時間はたっぷりあるんだし」
何言ってるんだ?この悪魔は・・・・
自分のしでかしたことの大きさに気づいてないのか?
俺は思わず苦笑していた
「なに・・・・・笑っているのよ」
「ここがどこだか知らないが・・・・そう遠くないんだろ?」
「・・・・・」
「警察があんたを探してるんだ・・・・もしかしたら今頃近くに来ているかもな」
そう俺が言ってやると悪魔は脱力したかのように肩を落とした
そして再び聞こえてくるあの音
金属音と共に銀色の刀身が再び俺の前に現れた
俺が死を感じたときだった

見せてあげる私がどれだけあなたを愛してるか
私は刀で自分の左肩を斬った
あはは・・・・ぜんぜん痛くない・・・・
噴出す血が仁さんを赤く染め上げる
呆然としちゃって・・・・・
ふふふ・・・・綺麗・・・・
私は染めてあげる・・・・あなたを私だけのあなたに・・・・
「愛してるわ・・・・仁さん・・・・」
ゆっくりと近づく
「・・・・・・・あんた」
どう?私の愛を感じてくれた?
綺麗な顔・・・・綺麗な身体・・・・・
ふふ・・・・・あ、はははは・・・・・く・・・・・あ、はははは!
何よりも誰よりも・・・・あなたのためなら私は世界中の人を敵に回しても構わないわ
でも・・・・あなたに近づく雌犬だけはゆるせないの・・・・
だからそれは必ず排除するの・・・・
だってそうでしょ?私にはあなたしかいないの
だからあなたも私だけなの・・・・・
ふふ・・・・あ、はははは!

「予想はついてるんですか?」
そんなものあるわけないでしょ
「もう、愛の力よ!それでなんとかするの!」
我ながら呆れてしまう
でも、そんな風に思っていないと不安で押しつぶされてしまう
「よく、考えてください・・・・そうだ!」
奈々ちゃんがポンと手を合わせる
何か思いついたの?
「愛の力です・・・・・」
ダメだ・・・・どうしよう
そんな時だった
私のケータイ電話が鳴った
「はい・・・・」
〈詩織さまですか?〉
電話の相手は坂島さんだった
〈時間がないので申し上げます・・・・仁さまは近くの倉庫に閉じ込められているようです〉
倉庫?あたりを見回す
〈仁さまの持ち物には特殊なGPSが付いていまして、説明している時間はありませんね、
すぐに座標を送ります〉
私は送られてきた座標を見てその場所に向かった

「ここだね・・・・」
奈々ちゃんが中の様子を伺っている
どうしよう・・・・また刀なんて持ち出されでもしたら仁くんが
私たちが乗り込めば間違いなく彼女を刺激してしまう
そんな私をよそに奈々ちゃんは深呼吸して後ろに下がっていく
なにをする気?
まさか!
「とう!」
とび蹴り?目の前の鍵のかかっているドアにとび蹴りをして蹴倒す
「仁ちゃん!」
聞き耳を立てていたのか奈々ちゃんは中の様子がわかったみたい
私も後に続く
中にあるダンボールをかき分けた先に出るとそこには刀を振り上げた香葉さんと椅子に縛られた
仁くんがいた
怒りがこみ上げる仁くんが・・・・仁くんが
それは奈々ちゃんも同じようだ
「邪魔・・・・入ったみたいね」
月明かりに照らされた悪魔が私たちを見つめる
その瞳に先ほどの恐怖がまた込み上げる
でも・・・・許さない!
私は奈々ちゃんとうなずきあい悪魔に立ち向かっていく

「そうね、あなたたちを殺せば・・・・もしかしたら」
悪魔は何事かつぶやいた
「待てってね・・・・仁さん」
「詩織・・・・奈々・・・・・逃げてくれ・・・・・警察を・・・・・」
ああ、仁ちゃんの声がかすれている
身体も・・・・・大量の血で染まっている
どれだけ酷いことされたの?
初めてだよ・・・・こんなにもヒトを憎く思ったのは
違う・・・・もうヒトじゃない・・・・・この姿はまるで悪魔そのもの
私は詩織さんに目線で合図した
そのまま私は悪魔に向かっていく
目先の私を標的にした悪魔は刀を突いてきた
刀身が顔の横をかすめる
刃先が横になり今度は横から刀身が・・・・
「・・・・っ!」
ゴンと詩織さんが悪魔に体当たりする
けれど悪魔は詩織さんの髪の毛を掴んで頭を引き上げる
そしてそのノド元に剣先を向けた
悪魔さん・・・・私を忘れていますよ!
私はとっておきをポケットから出すとそれを悪魔に押し当てボタンを押した
「ぐ・・・・・う!」
断末魔の声を上げて悪魔は後ろに下がる
このスタンガンは高田さんが護身用にと私と詩織さんにくれたものだ
まさかこんな形で使うなんて
けれど悪魔は口元をゆるめるだけだ
スタンガンを使ったのに何で?
けれど詩織さんは怯まずに悪魔に向かっていく
私も・・・・・!


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