生きてここに… 本編 第12章
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私と奈々ちゃんはまだ警察に話を聞かれていた
東児さんの次は仁くんその次が私と奈々ちゃん
私たちはあやふやな記憶を補い合ってなんとか警察の人に伝えた
その後二人でお迎えが来るのを校門の前で待っていた
もちろん後ろには警察の人が立っている
「なんか人が見えませんか?」
奈々ちゃんが不思議そうな顔をして暗闇の向こうを指差した
私が目をこらすと・・・・・
「高田さん!」
暗闇に浮かぶ姿に私は思わず駆け寄っていた
「詩織さま・・・・・仁さまが・・・・・仁さまを・・・・」
肩からたくさん血が・・・・矢?折れてるけどこれって矢だよね?
それが刺さってる
高田さんは後ろの刑事さんに肩を借りてパトカーで病院まで送られていった
「ねぇ、詩織さん・・・・さっきの」
仁くんが・・・・危ない!
私は奈々ちゃんを連れて仁くんの家の道をたどっていく
すぐに炎上する車を発見した
刑事さんも遅れてやってきて消防車を呼んでいる
「仁くーん!」
私は祈りをこめて必死で叫んだ
答えはない
「詩織さん・・・・」
「奈々ちゃん・・・・」
私は奈々ちゃんを見つめ奈々ちゃんは軽くうなずいた
「仁ちゃんのために一時休戦です」
「ええ、仁くんのためだからね」
確認しあって私たちは仁くんの捜索を始めた

 

「ここは・・・・?」
目が覚めると俺はどこかの倉庫に居た
必死で身体を動かすが動けない
手に縄みたいなものが結ばれ腰にも何かが巻きつけられている
脚は・・・・なにもないが痛みが走った
「お目覚めはいかが?」
最悪に決まってるだろ
「香葉さんか・・・・」
「そうよ・・・・仁さん」
嬉そうな声だな
そんなに嬉しいか?
ショートカットの髪に鋭い目つきの悪魔が暗闇の中で月に照らされ姿を現した
「これで二人きりだね・・・・さぁ、愛し合いましょ?」
近づきゆっくりと唇を寄せる悪魔
俺は唾を吐きかけそれを止める
「強情ね・・・・」
顔をハンカチで拭くと悪魔は笑んだ
「そんなに彼女がいいの?」
「あいにく、たった一人しか愛せないタイプなんでね」
また顔を近づけてくる
「男の子なんだから・・・・見境なくなったっていいじゃないの?」
「面くいだから・・・・俺」
「私だって良い線だと思わない?」
悪魔はそう言って微笑んだ
まるで映画とかの悪女だな
「あんたの家・・・・鏡ないのか?」
「・・・・・・え?」
「自分の顔を見たことあるのかって聞いてるんだよ!」

 

「・・・・っ!」
顔を強張らせて俺の頬を殴りつける
何だよ・・・・悪魔でもそんな顔できるのかよ
「俺は折れないぞ・・・・どんなことをされたってな!」
また頬を叩かれる
何度も何度も・・・・
それだけで疲労と怪我の痛みで身体が軋む
「痛い?・・・・苦しい?・・・・開放されたかったら私の物になりなさい」
「痛くなんてないな・・・・東児のパンチの方が数倍効く・・・・な」
今度は腹に一発
「俺は許さない・・・・詩織や奈々を傷つけようとしたあんたを!」
次は顔面に戻る
「・・・・・・」
やっぱりあんた悪魔だよ
だって、なんか嬉しそうな顔してるしな
おもむろにバケツを持つと中の水を俺に掛けた
「ごめんなさいね・・・・せっかくの綺麗な顔なのに・・・・でも、これで綺麗になった」
そう言ってまた俺の腹を殴りつける
殴られなれてるとはいえ・・・・これは・・・・効くな
あれだけ大暴れしたのになんでこんな元気なんだ?
俺なんてヘロヘロなのによ
「どう?私の物になる気になった?」
悪魔め・・・・俺は屈しないぞ
今の俺にはこれしかできない
こうやって時間を稼ぐことしか・・・・


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