生きてここに… 本編 第11章
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警察の人がいじめにあっていた子に事情を聞いている
彼女は以前の子と違って軽度のケガで済んでよかったよ
でも、私は仁くんにたっぷりとお説教された
無茶したのは私だから仕方ないか
でも仁くんはこんな危険なことになる前に俺に言ってくれ
それだけ最後に言うと許してくれた
「まさか、あなたに助けてもらえるなんてね」
「あの状況で助けないわけ・・・・ないじゃないですか」
それもそうだよね
でもここはとりあえず
「ありがとう・・・・」
「いえ・・・・仁ちゃんをくれたらチャラにしてあげますよ」
こんな時までこの子は・・・・
「ダメです、仁くんは私のなんだから」
「いずれは私のモノになるんですから・・・・そこんとこわかってます?」
この子はまったく口の減らない子ね
「だぁぁ!貴様!なにをする!離せ!俺を解き放て!」
仁くんらしくない声が当たりに響く
私と奈々ちゃんは思わずその声の方向へ目を向けていた
医務室の窓の向こうでベットに包帯で両手と脚を縛られた仁くん
その横には東児さんが・・・・仁くんにイタズラしている
「積年の恨みじゃ!弱ってるいまこそ勝機じゃ!」
まったくなにをやってるのかな?
私は校内に入ると医務室を目指した
そして後姿の東児さんの後頭部を近くにあった椅子でゴンと殴りつける
「・・・・・ひどいと思うよ・・・・いくらなんでも」
地面に顔を付けてぴくぴくしている東児さんに仁くんは少し心配げな顔をした
「まぁ、こんなんで死ぬようなら、とっくに死んでるか」
すぐにいつもの仁くんに戻っていた
もう、相手が男の子なのに・・・・嫉妬しちゃったよ
だって仁くん東児さんと一緒の時はいつも楽しそうなんだもの

「脚のほうだいじょうぶ?」
「げふ・・・・」
下に横たわる東児さんを踏みつけると奈々ちゃんは仁ちゃんのベットに肘を着いてそう言った
「これくらい・・・・平気さ」
「ごめんね、私のせいで」
ムッ・・・・なに親密な空気だしてるのかな?
仁くんってば頬なんて染めちゃってさ
私は無言で仁くんを見つめた
仁くんは私の視線に気づいて息を飲んだ
怒らないよ、でもわかってるよね?仁くん・・・・
「首・・・・だいじょうぶ?」
「だいじょうぶ・・・・ちょっと血が出ただけだから」
それでいいんだよ、仁くん
仁くんは私の心配だけしていればいいの
「ごめんね〜仁ちゃん〜」
奈々ちゃんは仁くんの脚にすりすりしながら猫なで声を上げた
私たちの親密な空気をなに壊しているのかな?
「奈々・・・・そろそろ、そこ退いた方がいいよ」
「嫌だよ〜♪」
「・・・・下の東児が復活してる」
すぐに下を向くと背中を踏まれて身動きが取れない東児さんが必死に頭を上げよとしていた
「ぐむ・・・・・あともう少しで・・・・・禁断の花園が」
「きゃあ〜!!!!!!」
立ち上がりドンドンと東児君の背中を踏んづける
「げふ!がふ!ひぎぃ!そこはやめて!」
ああ、可哀想にに東児さん
でも仁くんじゃないからいいか
「これでもか!」
今度がわき腹を蹴られて壁に激突した
「俺・・・・まだ見てなし・・・・・酷い・・・・この仕打ち」
「あんたなんかに見られるなんて・・・・・ごめんね、仁ちゃん・・・・私・・・・汚されちゃった」
ゴンととどめに椅子を投げられて東児さんはわざとらしくガクッとした
「だから、俺は見てない・・・・」

 

「大変でしたね・・・・仁さま」
高田さんのこんな顔初めて見た
「心配かけてすいません」
「女性お二人を護ったのですよ?むしろ誇るべきです」
ありがとう高田さん
でも、正直な話俺は恐怖した、あの瞳に・・・・
今まで何度も人と拳を交えた
もちろんスポーツでのフェアな戦いだ
けれどあの人の目は異常だった
東児がいなかったらどうなっていたことか
考えただけで背筋が凍った感覚がした
車に揺られながら俺はそう考えていた
そしてやって来てしまった
二度目の狂気が
ガラスの割れる音
見るとガラスに何本もの矢が突き刺さりヒビを作っていた
次にパンクしたのか大きくゴムが弾ける音がした
車が回転し横転する

「高田さん!!!」
俺は外に投げ出されて川の中に落ちた
「仁さん・・・・・」
すぐに狂気の正体が現れた
俺をやさしく抱き上げて満面の笑みを向ける悪魔
逃げようしたが体中が痛み軋む
骨折はだいじょうぶ
ヒビもだいじょうぶ
けれど今の俺に抵抗の術はなかった
「そう、それでいいの・・・・」
悪魔は笑むと俺を背中に乗せて歩き始めた
高田さん・・・・どうか無事で・・・・
俺は薄れ行く意識でそうつぶやいた


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