生きてここに… プロローグ 第6章
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「今日って・・・・誰の誕生日だっけ」
不思議そうに私を見ている仁ちゃん
あ・・・・そうだった
今日は私の誕生日だった
「えっと・・・・・あ、そうだ!二年前のお礼だよお礼!」
適当にごまかすこともできずに私は一番妥当なことを言った
「二年前?・・・・・そんなの・・・・・いいのに」
そう言ってまた中身を見つめ微笑んでいる
よかった本当に喜んでくれているみたい
その顔を見るために頑張ったかいがあったよ
仁ちゃんの目・・・・・キラキラしている
普段は落ち着いていて大人っぽいのにね
好きなことになると子供のような顔をする
「おお!すっげーカッコいい!」
仁ちゃんはようやく袋から中身を出して早速とばかりに手に着ける
そしてファイティングポーズを決めた
ああ、カッコいい
でも・・・・その衣装じゃ・・・・
この言葉は心に留めておこう
仁ちゃんに恥なんてかかせられないよ
・・・・・でも、なんかいいなこういうの
周りが見たら・・・・恋人に見えるかな?
「奈々さん?」
ボーっとしている私に仁ちゃんがそう声を掛ける
奈々さん・・・・か
最初は苗字にさん付けだったので
それは嫌と言うと仁ちゃんは私を奈々さんって呼ぶようになった
ここは新密度・・・・アップしてもいいよね?
「仁ちゃん、私ね・・・・もう一つ欲しいものがあるんだ」
「ちょ・・・・俺ほかになにも・・・・」
そんなことじゃないよ・・・・簡単なことだよ
「これからは奈々って呼んで?」
仁ちゃんは少し頬を赤く染めた
抵抗があるのかな女の子を呼び捨てにするの
でも、あの人の事は詩織って呼んでるし
やめよう、やめよう今はあの人の事を考えないようにしよう
「それはちょっと・・・・」
「拒否権はありません」
そうだよ、もっと積極的に
仁ちゃんがこんな些細なことで私を嫌ったりする訳ないし
ここは強気だよ・・・・うん

 

「な・・・・・」
頑張って仁ちゃん!
もう少し・・・・もう少しだよ
「な・・・・さん」
ああ、もう・・・・仁ちゃんってば
いつのならこの頬を赤く染めた仁ちゃんを見るだけで満足して
「もういいよ」って言っていただろう
「はい、もう一回♪」
耳まで真っ赤にした仁ちゃんは空を見上げて思い切り深呼吸した
「な・・・・・な!」
ああ、嬉しい、嬉しい、嬉しい!
「じ〜ん・・・・・ちゃ〜ん!」
思いっきり抱きつく
ああ、仁ちゃんはやさしいな・・・・もう
でも・・・・あれ?
仁ちゃんが倒れていくよ・・・・私たちっていま
「どわ!」
「きゃ!」
そうだった後ろはプールだった
私ってばなんて事を
頭からのダイブだったので二人ともびしょ濡れになってしまった
「ごめんね・・・・・仁ちゃん」
仁ちゃんは肩をすかして「まあ、いいよ・・・」と言ってくれた
仁ちゃんの顔・・・・近いな
少し近づけばキスできちゃうよ
本当に綺麗な顔
水も滴るいい男だね仁ちゃんは
ああ、はやくその唇で私のファーストキス奪って欲しいな
それとも奪っちゃっていいですか?
顔が熱くなるよ
思わず下を向いてしまった
あれ・・・・・?
あぁーーーーー!
「仁ちゃん!」
思わず仁ちゃんに抱きついてしまった
仁ちゃんは何がなんだかわからずにあたふたして後ろの窓の方を振り返った
誰も見ていないのを確認すると仁ちゃんは、はぁ・・・・と息を漏らした
「きゅ・・・・急にどうしたの」

 

「あのね・・・・・このドレス生地・・・・うすいでしょ?」
それを聞くと仁ちゃんは顔を真っ赤にして下を見ようとしてやめた
いちよう胸の部分にはパットを入れていたけど
飛びこんだ勢いでずれてしまったみたい
仁ちゃんが壁になって窓の向こうの人には見られてないけど仁ちゃんが動いちゃったら
仁ちゃん以外に見せるなんてできない!
だから仁ちゃん・・・・私を護って・・・・
「見られるなんて嫌だから・・・・ね?」
「ああ・・・・わかってるよ」
仁ちゃんは私を抱きしめるとそのままゆっくりとプールの端まで運んでくれた
難関はここだ
どうしよう・・・・
不安そうな私をよそに仁ちゃんは少ししゃがむと私を抱きかかえた
お姫様抱っこだ・・・・
「片手が使えないからしっかり捕まっていてよ」
私はうなずくと力強く抱き付く
そのときに少しだけ仁ちゃんに胸が見えてしまったみたい
瞬間に仁ちゃんは真っ赤になった
でもすぐに頭を振って目を細めてむずかしそうな顔した
この反応って・・・・少しは私のこと意識してくれてる?
だったら嬉しいな
そんな私をよそに仁ちゃんはプールサイドに手を置いて深呼吸する
反動をつけて飛んで仁ちゃんはプールサイドにお尻を乗っけた
少し痛かったけど災い転じて福となすかな?
仁ちゃんのぬくもりを私はいま世界で一番感じることが出来る
ああ、幸せ!
この時間が永遠ならいいのにな・・・・


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