生きてここに… プロローグ 第7章
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プールから上がってすぐに私を抱えたまま裏口からこっそり屋敷に戻る
「あそこに入って・・・・」
私が洋服の倉庫を指差すと仁ちゃんは辺りを見回して
人が居ないのを確認すると足早にその部屋に入った
「ふぅ・・・・・」
ああ、離れてくよ仁ちゃんのぬくもりが
でもしかたないか
「あ・・・・・ごめん」
急いで視線を反らす仁ちゃん
そうか私の裸見られちゃったんだ
直接ではないけど見えてるよね?
下は・・・・まだ恥ずかしいな・・・・見えてないだろうけど
でも仁ちゃんが望んでくれればいいよ
いつでも
「着替え・・・・ないかな?」
ちらちらとこちらを見て仁ちゃんが私に聞いてくる
「暖めてあげようか?」
「・・・・・・・・」
あれ・・・・・いつもは「ふざけるな」とか「冗談はよせ」なのに
顔を真っ赤にして俯いちゃった
もしかして・・・・
意識してるよね?これは・・・・
よかった少しも女の子として見て貰えてなかったらどうしようって思ってたけど
これは脈ありってとっていいよね?
事故だったけど、神様からの贈りものかな?
でも、0%の可能性じゃなくなったよね?
勝機が向いてきたのを私は感じていた
この勝負なにがなんでも勝つよ
詩織さん、私負けないよ
だってね私・・・・もう仁ちゃんなしじゃダメみたいなの

 

「・・・・・ありがとう、奈々さん」
新しいスーツを肩にかけると仁ちゃんはそう言って肩にかけたスーツを手に取った
ふ〜ん、奈々さんか
私はスーツを奪い取るとそっぽを向いた
「あ・・・・奈々さん」
「私は奈々さんではございませんよ」
もう、仁ちゃんってば・・・・
仁ちゃんは背を向けるしか出来ないので私が渡さないとどうすることもできない
どうする?どうするのかな?
観念しちゃいなさい!

 

「奈々・・・・その・・・・・」
奈々って言ってくれた
もう仁ちゃんってば素直なんだから
これで少しだけだけど距離、縮まったよね?
私はなにも言わずに仁ちゃんの肩にスーツを乗っけた
仁ちゃんは安心の声を出して着替え始めてた
私がいるにもかかわらずに着替えをする
もしかしてあまりそういうの意識しない?
そうだよね、ボクシングの試合なんて・・・・
仁ちゃんってすごい身体してるな
背中の筋肉なんてすごいよ
脚の筋肉の付き方もマンガの中の人みたい
それで全体的に細い
抱きついていたときの感触が鮮明に浮かぶ
仁ちゃんの胸に顔をうずめたときのあの感触
仁ちゃんの手に抱きしめられるあの感触
さっきまで私のモノだったんだ
そんなことを考えているうちに仁ちゃんは着替えを終えていた
「じゃあ、俺・・・・・外に出てるから」
「ちょっと・・・・待って!」
振り向きかけて仁ちゃんはやめた
だから私は後ろから抱きついた
仁ちゃんはいつのことかとばかりにため息をついた
でも、違うよ・・・・
少し振り向く仁ちゃんに私は唇を近づけた
「え・・・・・」
驚きの声を私は自分の唇で止めた
ゆっくりと離れていくと仁ちゃんは頬を染めた
「どうして・・・・」
「・・・・・・・・」
何も言わない
何も言えない
だって好きですって言ったらフラレちゃうでしょ?
だからね

「なんででしょうね?」
いつもどおりに茶化してみせるの
そうすれば仁ちゃんは不思議に思うでしょ?
私の気持ちは知ってるだろうけど
なんで告白しないの?って
仁ちゃんを困らせるのは正直嫌だけど
意識してくれるでしょ?
私を見るたびにどうして告白もせずにキスしたのかって
思い出すでしょ?私とのキスを
「・・・・・」
当然の戸惑いの表情
ごめんね、仁ちゃん
「俺、その・・・・・!」
ドアを開きバタンと閉じる
ごめんね・・・・
私は心でそうつぶやくとガタンと音をたててその場にひざをついた
唇をなぞっていく
ぬくもりがまだ残っている気がした
結局私からだったね・・・・
後悔はないよ?だって私の初めては全部仁ちゃんで予約済みだから
最初だけじゃないよ?仁ちゃんは最初で最後なんだから
でもね、恋愛経験ゼロの私じゃこれが限界
顔に熱が集まっていく
自然と涙がこみ上げ流れる
嬉しいの・・・・・嬉しいよ
ぬくもりが嬉しかった
触れ合いが幸せだった
最高の誕生日だよ
仁ちゃん・・・・


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