第7話 『幸せになるために(後編)』
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「そろそろ約束の時間かな…」
「お師匠様?」
「友美、今日の魔術の講義はここまで。私は少し出かけてくるよ」
「あの…どちらへ?」
「そうだね…友美と同じ位の女の子が危険な目に遭いそうなんだ、私はその子を守りに行くよ」
「そうですか…」
「そんな顔をしないでほしい、行き辛くなるよ」
「あのっ、お師匠様」
「なんだい?」
「お師匠様の運気が良くありません。きっと何か悪い事が起こります」
「………」
「………」
「友美にも感じられたか…」
「あの…あくまで私の占いですから…」
「いや、友美はもう一人前の占星術師だよ」
「そう…ですか」
「そうだ…友美、これを渡しておこう」
「これは…?」
「魔力が込められた石…『魔石』と言うんでけどね、それを使って作られたイヤリングだよ」
「これって、お師匠様の…」
「いいんだよ、それは卒業証書の代わりなんだ。そんな物しか私には用意できないけどね…」
「いえ、とても嬉しいです」
「さあ私はもう行かなくては。待ち合わせの相手が不機嫌になる」
「あの…どうかお気をつけて…」
「友美、あまり感情的になりすぎるのは…」
「やめてもらおうか師匠ヅラするのは」
「友美…?」
「言ったはずです、今の私達はただの師弟ではなく…」
「………」
「私の…もう一人のお母さんです」
「…そうだったね」
「だから…心配するのはいけない事でしょうか?」
「いや…そんな事は無いよ」
「本当にお気をつけて…帰って来てください」
「そういえば私は、君に名前すら教えていなかったね…
マリー・クロード・ジェンティーレ。どうか覚えておいてほしい」
「…はい」
「それじゃあ、行ってくるよ」
「帰りを…待ってます」
「そうか…なら大丈夫だよ、満月の夜は吸血鬼の力は最も強まる」
「それでも…」
「私が…私が死んだりするものか」
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