広き檻の中で 第33回
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……あ、また落ち葉……掃除中か……ってことは、殺されたって事ね。
はぁ………かったり。
「さあー。掃除じじゃ掃除じじゃ。」
まるでレレ〇のおじさんのように素早く掃いていく。最早落ち葉掃きなどプロを超えたね。
「んなもんにプロもアマもまるのかい?」
自分に突っ込み。……o.k。いつものテンションだぜい。
「そろそろお茶の時間ですよぉー。」
里緒さんからおよびがかかる。うわーい。お茶だお茶だ。
集めた落ち葉を吹き飛ばすように突っ走る。まあ、次の掃除は志穂の番だ。きにしなーい気にしない。
屋敷にはいり、台所の前を突っ走ると……台所に志穂がいた。うはっ。無防備。ちゃーんす。
ツツツと足音を消し、志穂の後ろまで回り込む。まるでエロ親父のように指先をコチョコチョ。
………行くべ!!!
「ターーーッチ!!!!」
ぐわしと後ろから胸を掴む。うーん。相変わらずの貧乳だ。ビバ!貧乳!!
「ひ、ひぁ!!」
うむうむ。良き鳴き声かな。
「いやー。な、なにするんですかぁ?」
……なんかしゃべり方変だぞ。よくみると、志穂は涙目になっていた……あれ?
いつもならバチコーンと一発。
「あんたなにやってんのよ!!!!」
バチコーン!!!
突然後ろから、横殴りにはったおされる。…そうそう、こんな感じに……
ゴミ箱に突っ込みながら、納得する。あれ?でも今殴ったの志穂じゃないよな………
じゃあ、一体誰が………
ゴミ箱か這い出し、殴った人物を確認する。
「あんた拾い食いでもしたんじゃないの!?いきなり後ろから胸揉むなんて!」

 

………鬼のような形相で立って居たのは……里緒さんだった。……ん?
「い、いきなりでびっくりしましたよぉ。」
そんな風におっとり喋っているなは志穂だった。……んん?
「あっはっはっ。そういうシチュもまた、萌えり。上達しなすったな。お二人さん。」
そうちゃかすと、二人は鳩が豆鉄砲食らったような顔(見たことないが)をして、互いに顔を見合わせる。
………そんなに変なこと言ったか?まぁ、変なことだが、いつものテンションの俺なら普通だが………
「あんた、ほんとに……」
「いやっはは。この晋也。なんど死のうとも、永久に変わりやせんぞ。」
と、また二人は不思議そうな顔をして、こっちをみつめる。………恥ずかしいずぇー。
「あのぉー」
里緒さん口調の志穂が聞いてくる。……あー。やっぱいいなぁ、オイ。
「ふむ、お兄さんがなんでも質問に答えてあげようか?」
膝に手を当て、目線を志穂に合わせる。その志穂の口から発せられた言葉。それは…
「晋也って…誰?」




………んあ。脳がフリーズしちまった。再起動再起動っと。
「誰って………俺。」
当たり前のことを答えるってのも変だ。そこへ里緒さんが口を挟む。
「なに寝ぼけてんのよ………あんたの名前は純也でしょ?」



………んあ?おいおい。またフリーズかい?俺の脳みそ、型が古いんでねぇ?
「純也…」
その名前をつぶやいてみる……どっかで聞いたような………
「あ、俺じゃん。」
思わず口に出る。正確には『もう一人の』俺だ。つまりここは………純也がいた世界?

 

「え?あー……んーっと……お前、志穂…だろ?」
貧乳娘にきいてみる。
「志穂ちゃん……って、誰ですかぁ?」
いや、どう見てもお前は志穂だっつーの。もう一人の巨乳っ子を指差して、尋ねてみる。
「……里緒さん?」
「誰よ、里緒って。こっちが奈緒。私が花穂よ。」
………………花穂?奈緒?あぁ、純也世界ではそういう名前なんだ………。
その場にしゃがみ込み、ウンウン唸りながらひとまず整理する。
つまり、貧乳な志穂ボディの里緒さん口調が、『奈緒』。
巨乳の里緒さんボディの志穂口調が、『花穂』。
………で、俺は『純也』。
俺には純也がどうやって生きて、どうやって死んだのかの記憶はない。だからこの世界に関しては無知だ。
…んー。なんつーか。
「新鮮でいいなぁ!!オイ!!」
びっくりというより、純也君が恨めしいヨ!!
「ところで……純也?」
花穂からオモーイ空気の言葉が発せられる。うあ、すっげぇ邪気だ。
「志穂と、里緒で……だれよ?……どこの女よ!!!あんたにそんな知り合いいない筈よ!!」
ガッとつかみ掛かってくる。あん。このあたりは本当に志穂と変わりないノネ。
「うふふ…純也くーん…正直に答えましょうねぇ。そんな子じゃないはずですよねぇ。」
包丁を持ってジリジリ迫る奈緒。……じゅ、純也ってどんな奴だったんだ????


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