広き檻の中で 第20回
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信じられなかった。
信じたくなかった。
純也と……奈緒が?
アハハハハハ?
何かの冗談でしょ?
書庫でお嬢を探していたら純也が入ってきた。
最初は驚かしてやろうと本棚の間に隠れていた
そしたら………
あの女が入ってきた。
そして何のためらいもなく純也と……
何?
何かの冗談なの!?
昨日の事ってなに?
私は………私は純也が好きなのに………
祐希なんて馬鹿男の名前あげてれば頑張って私の事を奪ってくれると思ったのに………
何で奈緒?
何で何で何で何で何で何で何で何で?
私の親は同じ使用人同士で結婚して私を生んだ………
だから私と純也も愛し合い、結婚するのに………
どうしてお嬢の召使の奈緒となの?
二人の淫行を、ただ黙って見る事しかできなかった。
純也の呻き声が聞こえる。
あの雌小間使が言葉巧みに純也を騙してる…………
騙してる?
そうよ、騙されてる。あいつは純真だから、人の言う事をハイハイ聞いてしまう。
今回もきっとソウダ。
絶対ソウダ!!!
だから………だから私が開放してあげる………
唇を血が出るほど噛み締め、ポケットのナイフを強く握りながら私は誓った…………

「じ……ん…や」
夜。
薄暗い廊下の奥から僕の名前を呼ぶ声がしました。
目を凝らして先を見てみると……
「あ、あぁっと……何?花穂?」
花穂とわかったので、淡泊な対応に努めました。
「……奈緒さんが呼んでたわよ。外の倉庫でまってるって………」
花穂の口から奈緒さんの名前が出て少し驚きました。
ですが冷静に
「うん、わかった。」
とだけ言い残してその場を立ち去りました。終始花穂が万円の笑みでしたが
……何か言い事でもあったのでしょうか?




夜になると外はとても寒いです。セーターを着て少し離れた倉庫までいきました。
倉庫というよりも木造の小屋です。
ここには冬に暖炉にくべる蒔きが保存してあります。この付近の木はよく燃えるため、かなり暖かいです。
僕が着いた時はまだ奈緒さんは来てませんでした。




十分……
まだ来ません。




二十分……
まだ来ません。なんか変な匂いがしてきました。



三十分……
寒さに耐えられなくなったので、外に出ようとしました
ガチャ
するとそこには……
「か、花穂…?」
花穂が道を遮る様に立っていました。
「…奈緒さん、こない…」
ドスッ

いい終える前に
ズブブブブ
お腹に冷たくて硬い物が入り込んで来ました………これは…
「が…か、花……穂?」
花穂がいつも持ち歩いているナイフでした。
「い、痛い…よ、花穂?」
ドサ
状況が理解出来ず、立っていられず倒れました。
「ふふふ…酷いわね、純也ったら……奈緒さんをずっと待たせて……」
「…え?」
待っていたのは僕です。意味が…
「奈緒ならいるわよ…ここにね。」
そう言ってロッカーを開けると……
「!!!!!」
中から奈緒さんが出てきました。
……胸や喉を滅多刺にされて………
「あっははハハハ!!!!これで自由よ!!!純也!!!」
意識が朦朧としてきました。
花穂はポケットからマッチを取り出し、地面に落とした途端いっきに燃え広がりました。
ガソリンが撒いてあったんでしょう………
燃え上がる火の中、熱さを感じるより先に気を失ったのが幸いでした………


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