Which Do You Love? 第9話
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まだ雨は降り続いていた。どうもこの特有の匂いは苦手だ。
冷えた体に更に寒さが染み渡る。
………と、前方にタカビを発見。あれが『彼』か。
「よ!タカビ。」
「あ、…ま、また会いましたね。」
いつもと違い、お淑やかなタカビ。なんか不自然で新鮮だ。
腕を組んでいた隣りの『彼』が顔をしかめる。こんな時に俺に会うのに困惑しているんだろう。
しかたない。ここは相手に合わせてやるか。この茶番に。
「これがさっき言ってた彼かい?はじめまして。園崎のクラスメートの高嶋です。」
「ええ……はじめまして…」
「そうです。こちら、お付き合いさしていただいている聖さんです。お会いするのは初めてでしたわね。」
成り立っていないようで成り立つ会話。当事者のみが気付かない状況。
ねじれた愛情。幸い周りに人がいなくてよかった。
「じゃ、邪魔者はさっさと帰りますか。またな。」
「…さようなら。」
「また明日。」
二人と手を振って別れる。二人が見えなくなるまで見送った後、
雨音にかき消されそうなほど小さくつぶやく。

「認められるといいね……」

そして再び歩き出した。






アパート前
アパートに着いた時はもう六時を回っていた。ここまで遅くなるのは初めてだった。
傘を閉じ、階段を上っていく。
部屋のドアの前。人影があった。体育座りでうずくまっていた。
「!!……ま……麻子……」
「えへへ……来ちゃった……」




取りあえず部屋へ上がらせた。傘もささずに来たのだろう。全身ずぶ濡れだった。

タオルを渡したが、全く拭こうとしない。パジャマのままの服装だった。
その濡れた布地が肌にくっついている。
「っ!………」
よく見ると下着……ブラを着けていないようだった。
胸元まで外れたボタンから見える肌や頬の色が、ほんのりと赤くなっていた。
それに加え腰まで伸びている長い髪が纏わりつき、かなり色っぽかった。
自分の腰が熱を持ち、疼き始める。
まずい……
このままじゃあ……
「ふふ……どうしたの?」
ぼうっと見ていると、上目遣いで覗いてきた。
「!!。あ…いや。なんでもない。体、冷えただろ。風呂沸かしてくるから、ちょっとまってろ。」
慌てて立ち上がり、風呂場に行こうとすると……
「どこにも行かないで!!」
グイ!
急に腕を引っ張られた。
そのままの勢いでベットに押し倒される。
起き上がる前に両肩をがっちりと押さえ付けられ、身動きがとれなくなった。
「うふふふ…そんなの待ってたら風邪引いちゃうわよ………。
今まであなたのことずっと待ってたのに…まだ待たせるつもり?」
ぎりぎりと肩を掴む力が強くなる。
「だったら……体拭けよ…」
なんとか言い訳を試みる。
女特有の甘い香りが鼻をくすぐる。それとともに理性の壁が音を立てて崩壊する。

麻子はそっと耳元へ口を寄せ、こうつぶやいた。
「じゃあ……聖が暖めてよ……私だけを…」
それが引き金だった。


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