鏡 Revenge 第2回
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結局病室の周りを探し回ってみたが、真由も真奈も見つからなかった。
アパートにも帰ってないようだったので、また明日探そうと部屋に戻った。
「………ん?」
部屋に入った途端、何か違和感を感じた。
どんなと聞かれても答えようのない違和感だが。
「疲れてるだけか……」
シャワーを浴びようと風呂場に向かう。



ザアアアァァァァ
「ふう」
雨に冷えた体を温め、一息つくと
ガタン!
「ん?なんの音だ?」
物音がしたので部屋を見てみると……小物が少し落ちていた。
「なんだよ…驚かせやがって。」
あんな事の後だったため、神経が敏感になっているのかもしれない。とにかく落ち着かないと…
落ちていた物を拾い上げ、風呂場に戻ろうと振り返った時……
見ていた。いや、見られていた。
わずかに開いていた寝室のドアの隙間から…二つの目が。
「あ、あぁ…あ」
余りに突然の事で体が恐怖に竦んで動けず、声も出なかった。
その顔は、微笑んでいた。とても不自然な笑い顔だった。
「真…奈か…?」
ようやく頭がまともに回り、その人物を確認する。
「うん…そうだよ、涼くん。」
そう答えると真奈はゆっくりと部屋から出て来るが…
「!!!」
真奈は病依を着たままだった。
雨に濡れて、全身がグシャグシャだったが…何より驚いたのが、薄い青の病依が所々赤に染みていたのだ。
「おい!真奈!大丈夫か?どこか怪我でもしたのか?」
急いで真奈に駆け寄り、体をそっと抱き締めると、真奈は逆に俺の体を力強く抱き締めた。
少し胸が苦しかったが、優しく頭を撫で、落ち着かせる。
「大丈夫…大丈夫…怪我なんてしてないよ。」
そう言って顔を上げる。
が、目が、真奈の目は曇ったガラスような目をしていた。どこかで見たことのある……これは………
「遅かったね。涼くん。」
「遅かったねって……それよりお前、どうやって入ったんだ?」
鍵は自分で持っている。開けた後閉めたはずだ。
「えへへへへぇ。これ。」
ジャラとキーホルダーの付いた鍵をみせる。

「合鍵だよ。」
「お、おい!いつの間にそんなの!」
「なんで?なにかマズイことでもある?私達恋人同士なんだから、持ってても不思議じゃないでしょ…?
それとも涼くん…私以外の女を部屋に入れてるの?
だから勝手に入られたら……困るの?」
言う度に抱き締める力が強くなる。だが顔はまだ微笑んでいた。
あばらが痛い。
「ま、待った!!そうじゃない!わかったから、持っててもいい!」
そう叫ぶと、フッと力を抜き、頭をグリグリと胸に押し当てた。
「にゅふふ〜。そうだよねー。涼くんに限ってそんな事、あるはずないよねー。
もし浮気なんてしたら、『お仕置』だよ?」
そう言う真奈の目が怖かったので、目を逸らし、無言で頷いた。
多分、あんな事があったから気が荒れているんだろう。しかも双子の妹…真由にされたんだ。
少し休めば落ち着くだろう。
「ほら…今日はもう休めよ…疲れただろ?」
「なぁに?私邪魔なのかな?早く出てって欲しいのかな?まさか…」
「別に他の女を呼ぶわけじゃない!お前が疲れてると思って言ってるんだ。」
真奈が言う前に遮る
一緒に寝るか?
そう言おうと思ったが、正直今の真奈とは寝れる気がしない。
怖かった。
「うん…そうだよね。涼くん、私のこと好きだから心配してくれてるんだよね。…わかった。じゃあまた明日ね?」
そう言って再び微笑むと、ゆっくりと玄関へ歩いて行った。
靴を履いて出ようとした時、急に振り向き。
「裏切ったら『お仕置』だよ?」
と言い残した。
「なんだよ…お仕置って。」
ろくに食事もとらないまま俺は眠りに落ちた……


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