恋と盲目 第4回A
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 カチャンッ
……鍵をかけた。
うん、戸締りはしっかりとしなくちゃ。
 ……ふっ……ふええええぇぇぇぇんん……
何かを忘れているような気がする……
忘れていると言うよりは……見えた瞬間に忘れていると言うか……
……脳が理解するのを拒絶している?
駄目ね、自分でも何を考えているのかわからなくなってきた。
とにかく休みましょう、頭痛薬はどこだったかしら……
「緑、誰か来たんじゃないのかい?」
「さあ……たぶん近所の子供のイタズラだと思うわ」
残念だけど私にはこれ以上は言えない。
「悪いんだけど記者の方が来るまで仮眠をとってても良いかしら」
「体調……やっぱり悪いのかい?」
「頭が少し……ああ、そんな顔をしなくても大丈夫よ。少し眠れば治るわ」
市販の頭痛薬を水と一緒流し込む。
また悪夢を見る心配はあるけど、眠らない訳にもいかない。
さっきのチャイム、やはり気になるけど……まあ、多分大丈夫でしょう。
畳の香りと布団の感触に包まれると、私は今までの思考を手放そうとする。
それからそう長い時間はかからず、ゆっくりと……ゆっくりと……
……私は意識を手放した……

 

その後、結局某誌の記者は現れなかった。
何故かその記者の所属する編集部からの連絡もなかった。
私自身、そんな事があったのさえ数日の内に忘れ去るのであった……

余談だが、あの日失意の内に町を彷徨い歩く一人の女性記者の姿が……誰にも目撃されなかったそうだ。


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