***** 第8回
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2200年………ついに世界人口は2000年の半分にまで減った。それに伴う各国の経済力の低下、
そして滅亡の危機………
その対策として、2205年、ついに全世界に『クローン製造法』が認可され、
人型クローンを作る事が可能となった。
経済力が下がったとはいえ、科学力の上昇は止どまることを知らなかった。
夢の猫型ロボットや、四次元空間は23世紀になってもムリであったが、
クローンの製造などどの国でもたやすかった。
今や全世界の九割が先進国……発展途上国など指で数えられるほどだった。
そのため、製造法が認可された次の日から、物凄い勢いで作られた。
無差別に住宅に徴収がかけられ、選ばれた家の人間は、皆遺伝子の提供……
つまり、『オリジナル』となることを義務つけられたのである。
この策は成功し、わずか半世紀で世界人口は2000年七割にまで戻ったのだ。
ただ、クローンに課せられた一つの義務は、オリジナルと同じ国に住んではいけないということ。
同じ顔がワラワラいては気持ち悪いからである。
そのせいで、もはや一つの国には大量の人種が混じっているのである。

例えば日本では、純粋な日本人は国人口の四割にしか及ばない。後は皆クローンの他国籍者だ。
そして世界が安定を取り戻し始めた2060年……とある国が、何世紀先の事も考え、
クローンの改良型を開発したのである。
改良型……これは普通の人間や、初期型クローンに比べ、
身体、及び精神年齢の成長速度が半分になるものだった。単純にいえば、倍長生きできるのだ。
その改良型もまた世界に広まり、大量に製造され、2070年にはついに2000年と同じにまで戻った。
が………改良とはメリットばかりではなく、デメリットも生み出した。
ごく稀に……五千体に一体程度の割合で、『欠陥品』が生まれたのだ。
欠陥品とは、人間としての何かが欠けた、そんなクローンである。
身体的には目が見えなかったり、耳が聞こえなかったり……精神的には自閉症や、
理性の失われた者などがいる。
ただ、これはほんの一部の例で、もっと酷い『欠陥』を持っているものもいる。
だが、いくら欠陥品とはいえ、クローン………製造法の認可と同時に最低限の人権も成立したため、
むやみやたらと処理できないのである。

が、ここは言葉というもの。『最低限』の人権……つまり、生きている事が最低限なのであり、
あとは何をしようが構わなかったのである。
そこで世界は、大海のど真ん中。周りを見渡しても見えるのは水平線ばかりという孤独な場所に、
巨大な人工島を作ったのだ。
そこは見るだけでは普通の街がある島だが、住人は皆欠陥品ばかり………
そう、欠陥品はこの島に『放棄』されたのだ。だれもがこのやり方に目をつぶった。
異端分子が社会に紛れる方が危ういからだ。
それ以降、改良型クローンは作られるとすぐに社会適応検査を受け、
それになにか一つでも引っ掛かった者は人工島……別名『廃棄島』へ。
合格者は社会へと出て、何不自由ない生活を過ごすのである。
そして欠陥品、または合格者でも人間社会で罪を犯した者は、皆廃棄島送りとなった。
だからこの島でまともに生きていける奴なんて少ない。大半が狂った浮浪者となり、
好き勝手やっているのだ。警察も無い、治安も守られない………
まさに世界のはき溜めといった場所なのだ。
そして俺は、欠陥品でもあり、社会の犯罪者。そのどちらにもあてはまるのだ…


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