***** 第7回
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「はぁ…はぁ…」
「ん、そ、蒼也…さまぁ……」
「くっ、いくぞっ」
「はい、中に…だしてぇ!」
いわれたとおりに中に出す。いつものような体の求め合い。今も彼女を抱いている。
けど…何か違う。いつもと違う。「何が?」と聞かれても分からないだろうけど、違和感は否めない。
「はぁ、はぁ、そ、蒼也さま…よかった…ですか?」
「ああ、悪くはなかったな……」
互いに息を整え、ベットで横になる。いつもの道具のような物は周りに転がってはいない。
「今日の蒼也さま……なにか違いましたね……」
彼女にも悟られていたようだ。それほどまでに変わってたのか、俺………
「どういう風に違った?」
「なんだか……いつもより優しかったです。バイブとか……使わない、
普通のエッチをしてくれましたし……初めてじゃないですか?」
「初めて……か。」
確かに。いままでたくさんの「彼女」達とこういう事をしてきたが、
普通なんてのは初めてかもしれない。でも、何故か……悪くはないとおもった。
俺の欠陥からして無いと思ってたんだがなぁ。
「でも私は……今回のほうがいいです…」

「そう……」
後始末をして、服を着る。
「あれ?どこか出かけるんですか?」
「ああ、なぁに……ちょっち喉が渇いたからな。飲み物買ってくるだけさ。」
「あ、じゃあじゃあ、私パンタオレンジ!」
「ふん、貴様が俺をパシらせるなぞ、一世紀早いわ!」
「うぅ…ごめんなさい……私が行ってきますぅ。」
ショボンとして、彼女も服を着始める。ああ、こいつは本当に買いに行っちまうな。
「いいってば、ジョーダンジョーダン。マイケルジョーダン。」
嗚呼!また化石級な駄洒落をいってしまった!いかんなぁ、オッサン化してるよ。
「俺が行く。パンタオレンジな。」
そう言いうと、彼女はまるで夜の猫の様に目をまるくし、驚いている。
「え、えぇえぇえ!?」
「なぁーにを叫んでおるんじゃい。夜中に……近所迷惑だぞ。」
「だって……飲み物を買ってきてくれるのも初めてだったから……」
そうか……なんだか初めてばかりだな、今日は。
「てめっ!俺が鬼畜みたいな言い方じゃないか!」
「じ、実際鬼畜ですっ!」
「ああ、いいよぅ、なら後でパンタ代払えよ!」
そんな子供のやり取りをして部屋をでていった…

「〜〜♪」
鼻歌交じりで自販機まで行く。時間は夜中の一時。この島にはコンビニなるものは存在しないため、
自販機しか買う手段は無い。
もう蝉が鳴く季節だが、夜は涼しくて気持ちいい。
吹き抜ける風が先ほどまでほてっていた体を冷やす。どうやら浮浪者も見当たらない。いい夜だ。
ガコン
言われたパンタオレンジと、お茶を買う。どうもこういうジュース系の飲み物は苦手だ。
甘すぎると思うんだけどなぁ。ひとまず買い終え、帰ろうと振り向くと………
「蒼也……」
「うあだぁ!?」
何の気配も無く忍び寄っていた彼女におどろいた。こうやってこられるのは本当に心臓に悪い。
「な、なんだよ……いきなり……」
「ううん、話が合ったから。」
「ふーん。……で?なに?」
いつものように冷たく。彼女に余計な感情を見せたくはない。
「…最近の蒼也、変。」
「変って……失礼だなぁ。夜中にストーカーしてる君の方が変だ。」
「む………最近の蒼也、いろんな事感じて、変わってきてる。
特に、いま家にいるあの女の子から大きな影響受けてる。」
「そう?普通だけど?」

「今日、彼女に対して優しかったし、いつもみたいに壊そうとしなかった。」
「……見てたの?」
「見なくても分かる。蒼也は私で、私は蒼也だもの。」
「やめてくれって……俺は俺、アイデンティティーを尊重してくれよ。」
「……でも本当に、蒼也は人間らしくなってきた。」
その彼女の言葉に反応する。もっともいわれたくない言葉だからだ。
「らしいっていうなよ……らしいって。俺はれっきとした人間だ。」
「人間の擬態。」
「顔も、体も、声も、心も、みんな人間ど同じだ!!何一つ変わらない!!」
「形が同じだけ。でも本質的には違う物。蒼也も、私も………この島に住んでる者は……
いえ、『物』は人間と似て非なる物。」
「違う!違う!!違う!!!俺は人間だ!作り物なんかじゃない!心がある……思い出がある、
感情もある!!」
「逃げられないの……私達は生まれた瞬間から縛り付けられている……残酷な運命……
私達は…所詮………人間のクローンなの………」
その一言は、なによりも聞きたくない、忘れてしまいたい言葉だった………


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