姉妹日記 第17話A
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 細い指が私の首に食い込んでいく
 まずい・・・・意識が・・・薄れていく
 私は病室のドアの前に立つ夏美さんと居場所を代わるようにしてドアに背を向けた
 その瞬間ものすごい勢いでドアに押し付けられた
「死ね!死ね!死ね死ね死ね!死んじゃえーーーーーーっ!!!!!!」
 私をこれ幸いとドアの横のボタンを押した
 ドアが開き私は背もたれを失い、病室に倒れこんだ
 そしてようやく私は愛しい人と再会した
 涼さん・・・・・
 かすれる視界で私は静かに寝息を立てて胸を上下させる涼さんを見つめた
 胸と背中には痛々しく包帯が巻かれている
 私は酸素不足で痙攣を始めた腕をなんとか伸ばして涼さんに向けた
「う・・・・ぅ・・・・ぅ」
 小さくうめき声が出るか確認した
 涼さんと呼びかけたのに「ぅ」という声しか出来ず私は「ぅ・・・ぅ」
 と、苦しくうめき声を出し涼さんに少しでも近づこうと手を伸ばした
 助けて・・・・涼さん・・・・・涼さん・・・・
「ムダよ、涼ちゃんは・・・・あんたなんか助けない」
 止めとばかりにさら力を込めてきた
「あ・・・・ぅ」
 口の端から唾がたれ頬を伝っていく
「あんた殺して、私が涼ちゃんと・・・・もう邪魔させない、冬香にも!春乃にも!
 あんたにも!!!!!」
「りょ・・・・・さ・・・・・」
 声が出た・・・・
 けど、もう限界・・・・
 そのときだった
「あ・・・・・・・・ん」
 涼さんのまぶたがかすかに動いた
「あ・・・・・の・・・・さ・・・・・」
 静かに瞳が開かれ彼の瞳に私の姿が映し出された
「秋乃・・・・さん」
 そして彼は微笑んだ
「涼・・・・さん」

 やっと・・・・逢えた・・・・涼さん・・・・
「どうして・・・・涼ちゃん?」
 その光景に夏美さんは呆然として見つめ絶望の声を上げた
「嫌・・・・どうして、この女をそんな目で見るの!!!!」
 私の首から手が離れた
 私は酸素を求めながら激しく息を吸い
 むせたように咳き込んだ
 その間、夏美さんはベットに横たわる涼さんに馬乗りになり激しく揺すった
「どうして!どうしてなの!ずっと一緒だったじゃない!それなのになんでパッと出の
 あんな女に・・・・・心奪われるのよ!バカ!バカ!!!!!」
 叫びが木霊す病室にまた一つ影が生まれた
「どうしたの、お姉ちゃん?」
 冬香さんだ・・・・
「冬香・・・・夏姉ちゃん・・・・ごめん・・・・僕・・・・」
 痛みに顔を歪め、涼さんはそれを言った
「秋乃さんが・・・・好きなんだ」
 私を見つめ二人にとって一番残酷なその言葉を言った
「嫌・・・・嫌ぁぁぁぁ!!!!!!」
 顔を真っ青にして夏美さんはその場を走り去っていく
「嘘だよね・・・・お兄ちゃん、嘘だって言ってよ!!!!!!」
 今度は冬香さんが涼さんに駆け寄り問い詰める
「二人のことは好きだよ・・・・でも」
 家族の愛情・・・・・なんだ
 その瞳が語るものを悟った冬香さんもまた顔を青ざめ瞳を閉じた
「・・・・・う・・・・・く」
 静かな泣き声が一瞬聞こえ冬香さんはその場を去って入った


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