BLOOD 本編 第8章
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 やめろ―――――――――!
 何も見えない暗闇の中でゼルの声が聞こえた
 自分を見失うな・・・・
 その声にハッとし自らの手が血に染まっているのに初めて気づいた
 ゼル――――――――――
 辺りを見渡し、ゼルの姿を探す・・・・
 ゼルの声も完全に途絶え、姿も無く
 ただ虚無と暗闇・・・・それだけだった
『逃げられないよ・・・・プレシア』
 その声に私は思わずゾッとし声の方へ視線を向けた
 先に見えたのはお姫様のような綺麗なドレスを真っ赤に染めたワタシが立っていた
 左目を失い黒く変色させ、そこからの血が全身に滴り身体を紅にしていく
 頭が・・・・痛い
 頭を抱えうずくまった時だった
 断続しなにかが頭に入ってくる
 痛みも忘れ、私は目を見開きワタシを見た
 悲しげな瞳・・・・乱れた髪・・・・その手の剣
 私は知っている、ワタシを知っている
『シェルを・・・・殺すのよ・・・・プレシア』
 プレシア――――――――!!!!!
 再び聞こえたゼルの声と共に暗闇に光が差した

 

 温もりを感じた、優しさを感じた
 でもそれはすぐにでも壊れてしまいそうなほど・・・・弱々しかった
 逃げられない楔が私と何かを繋ぎ、縛り付けている
 私は悟った、逃げられないのだと・・・・

「あ、兄様・・・・なぜ邪魔をするのですか!!!」
 完全に瞳孔の開いた白い瞳が俺に向けられた
 俺は怒りを露にしリストを睨みつけた
「う・・・・く」
 ようやく自らの腹に突き刺さり血に染まる剣に気づきリストはその場に崩れた
「プレシア・・・・」
 頬に浮かぶ黒の紋様を見て俺の胸の中に罪悪感がこみ上げてきた
「ごめん・・・・ごめんな・・・・プレシア」

「それで?飲んでくれるの?」
 引き締まった身体、鋭い眼光で彼女・・・・リルスが俺を見つめた
 薄暗い城の一角で俺は彼女にある条件を突きつけられていた
 それは・・・・メシア様との婚約だ
「身分違いじゃないのか?」
「貴方も王族・・・・誰も文句をいうわけないでしょ?」
 当然か・・・・
「もし、断ったら・・・・姫様とあの・・・・プレシアに」
 プレシア・・・・その言葉だけ彼女は苦々しそうに言った
 そうか・・・・気づいてしまったのか・・・・
 俺の罪と・・・・彼女たちの因果に
 当然かだって彼女は・・・・・
「解った・・・・それで・・・・いいよ」
 俺はこのときもっと考えるべきだったのかもしれない・・・・
 俺の軽はずみな行動が・・・・何を意味するのかを

「それで?飲んでくれるの?」
 引き締まった身体、鋭い眼光で彼女・・・・リルスが俺を見つめた
 薄暗い城の一角で俺は彼女にある条件を突きつけられていた
 それは・・・・メシア様との婚約だ
「身分違いじゃないのか?」
「貴方も王族・・・・誰も文句をいうわけないでしょ?」
 当然か・・・・
「もし、断ったら・・・・姫様とあの・・・・プレシアに」
 プレシア・・・・その言葉だけ彼女は苦々しそうに言った
 そうか・・・・気づいてしまったのか・・・・
 俺の罪と・・・・彼女たちの因果に
 当然かだって彼女は・・・・・
「解った・・・・それで・・・・いいよ」
 俺はこのときもっと考えるべきだったのかもしれない・・・・
 俺の軽はずみな行動が・・・・何を意味するのかを
 
「嘘だ・・・・」
 目を覚ますとゼルの姿はなかった
 そして・・・・同じく最近目覚めたばかりのリストに事を聞いて私は愕然とした
 ゼルが婚約し、ゼートラルに行ってしまった
 短いその言葉に私は地獄の底に叩きつけられた
「一時休戦ね・・・・プレシア」
 悔しそうにそう言うとリストは苦笑した
 
 まさか・・・・ゼルが結婚する・・・・私以外の女とだなんて
 嘘だ、ずっと一緒に居ると言ってたじゃない
 愛していると、言ってくれたじゃない・・・・
 ――――――そうか
 ゼルは騙されてしまったんだ、もしくは政略結婚で無理やりに・・・・
 可愛そうなゼル、私は助けてあげなくちゃ・・・・
 ゼルの残した剣を握り私は刀身をあらわにした
 銀色に輝く剣が反射し頬に線を入れる
 彼のためなら・・・・私は修羅になる・・・・
 待っていてください、ゼル・・・・・

 炎に焼かれる町を見つめ、私はリストの言葉を思い返した
『ゼートラルが反乱を目論んでいるという証拠を持ってくるの、でっちあげてもいいわ』
 ガイロスト・・・・ゼルの率いた部隊を引き連れ私はあの女・・・・
 メシアの討伐へと繰り出した
 襲い掛かる矢と槍をすり抜け敵を八つ裂きにする
「殺してやる、ゼルと私の愛を邪魔するものは・・・・みんな!!!」
 自然と笑みが浮かび、私は炎と血だけのこの空間で笑い声を上げた
 その瞳に浮かぶ涙に気づかずに
 
 殺してやる、消してやる・・・・・今度こそよ・・・・シェル


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