鏡 True 第1回
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病院
あれからすぐに救急車を呼び、今は治療が始まった。今は待つしかないので、外へ出て真由に伝えるため電話をする。
「もしもし?」
「ああ、真由か?あのな、落ち着いて聞いてくれ…」
真奈が事故にあったことを簡潔に伝え、すぐに病院に来るように言った。
「…はい、わかりました。すぐに行きます。」
ピッ
電話を切り、溜め息をつく。真由の返事には覇気が無かった。無理も無い。唯一の家族が事故にあったのだ。
もし真奈が最悪の事態になれば、真由は壊れてしまうかもしれない。そんな彼女を、俺は支えられる自信が無い。
手術が始まって一時間後、真由が病院に着いた。
「あ、涼さん。……姉さんの方は?」
「ん……」
思ってた以上に真由は落ち着いていた。
「あの、涼さん?」
「あ、ああ、今はまだ手術してる。見つけてすぐに救急車呼んだから、大丈夫だと思うけど……」
「え?涼さんが呼んだんですか?」
「まぁ、な…。俺が最初に見つけたんだしな。」
「そ、そう…ですか」
やたらと真由の目が泳いでいる。
「大丈夫か?」
「えへへ…今になって驚いてきちゃいました……」
トサッ
座って涼の胸に頭を乗せる。
「……お、おい。」
「ごめんなさい。落ち着くまでこうさしてください。」
やっぱりショックが大きかったのか。少し涙目で寄り掛かる真由を見て、自分の心も痛くなった。
                   更に一時間後…
集中治療室のドアが開き、小太りの中年の男が出てきた。
「おい!真奈はどうなった!?」
そう叫びながら詰め寄ると、男…名札に「杉田」と書かれていた…がいやらしい目付きで睨みながら言った。
「君は…救急車に一緒に乗っていたね。森崎真奈さんとはどんな関係だい?」
(そんなのどうでもいいだろ!)という心の叫びを飲み込む。
「保護者代理…みたいなものだ」
「私は真奈の妹の森崎真由です。」
「ほぅ…双子ねぇ。」
舐めるように真由を見る。頂点まで来た怒りを堪えて、真由と杉田の間に立って再び聞く。
「…それで?真奈の容体は?」
「僕が手術したわけじゃないんだけどね……とりあえず、一命は取り留めたよ。」

それを聞いた途端、全身の力が抜け、うなだれるようにイスに座る。
「それと君、保護者代理であり、第一発見者なら、警察の方も色々と聞きたいことがあるそうだよ。」
「………わかった」
呟くように返事をすると、杉田はフンとはなを鳴らして去っていった。
「良かったな、なんとか助かったみたいで。」
「くっ……ええ、そうですね。」
感情の無い返事に違和感を抱き、見てみたが、俯いていて顔が見えなかった……。
体が小刻みに震えていたのは、何だったんだろうか?



それから警察に行き、色々と聞かされたり、真奈の持ち物の確認などさせられたが、
ほとんど頭に入ってこなかった。事故が起こったショックと、真奈が助かった事で安心したからだ。
ただ今回の事は事故か自殺ということで調べると聞いた時は、少し不思議に思った。
真奈が自殺する理由が思い付かなかったし、事故にしては不自然だっからだ。
そんなモヤモヤを残したまま、帰路へ着いた。


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