優柔 ENDING 最終話A
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束縛されるのは、もううんざりです。
「今どこにいるの?」とか「私だけを見てて」とか
「なんであの子と楽しそうに喋るのよ」とか、
そんな台詞は二度と聞きたくありません。えっ、何の話かって?前の彼女の話ですよ。
可愛かったし尽くしてくれたりして、幸せでした。
手作りのお弁当の味は今でも思い出せるくらい美味しかったです。
冬になったらマフラーを編んでくれたし、風邪をひいた時もわざわざ看病しにきてくれましたし。
初めて付き合った子がこんなに良い子で本当に幸せでした。
できれば別れたくなかったですよ・・・でもね、いくら可愛くても
自分の母親と喋るだけで嫉妬するような子は駄目なんですよ。
いくら尽くしてくれても、悪い虫が付かないようにって携帯のメモリを
全部消去しちゃうような子は無理なんですよ。
黒くて長い髪に縛られる苦しみってやつですか、それに耐えられなくなった僕は別れを告げました。

二人っきりだとなんか危険な感じがしたので、駅前のカフェで言いました。
予想してた通り、彼女は信じられないみたいな態度をしました。
他に好きな子ができたのかとか、意味が分からないとか、普段は温厚な彼女も
その時ばかりは声を荒げて、怒りで目が見開いていました。でも僕はひるまずにもう別れようと何度も伝えました。
そのうち彼女はしくしくと泣き始めました。
「いや、だよ・・・私には・・・うっ・・・ゆう君しか・・・うぐっ・・・い、いない・・・の、に・・・
ひぐっ・・・そん、なの・・・だめだ・・・よ・・・ううっ・・・」
両の目からは涙が止めどなく流れています。そんな様子を察してか、周りの客が僕達を見てきました。
(何、別れ話?)
(あれだ、浮気だろ)
(あーあ、彼女泣いちゃってるよ)
(あの男・・・最低)
そんな視線でした。僕も男ですから流石に女性の涙には弱いです。一瞬、決心が揺らぎそうになりました。
でも僕は心を鬼にしました。
「じゃあ、もう帰るから。学校で会っても話しかけてこないでね」
彼女の反論を聞く前に、早足にその場から立ち去りました。
それ以来、あそこのカフェには行けません。・・・あの店のカプチーノとシナモンロール、好きだったのにな・・・

バスタブの中で、僕は激しい自己嫌悪に陥りました。
(あんな言い方なかったかも・・・いくら別れたからって女の子を置き去りにして帰るなんて、
なんて酷いことをしたんだろう・・・彼女、傷ついただろうな・・・)
自分から別れ話をしておいて自分の行動を悔いる・・・ヘタレですね。
でもこれで良かったと思います。相手を傷つけない別れなんて、有り得ないんですから。
この別れがお互いの為になった、そう思える日がいつかきっと来る。
そう言い聞かせて、自責の念を押さえ込みました。


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