月夜の華 第2回
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「ネトゲ?なにそれ――――?」
「ああ、ネットに対応したゲームだよ、そこで知り合ったんだ」
 放課後、優華しつこく月夜との関係を聞いてきた
 最初は軽く流すつもりでいたけど、最後には根負けし結局話してしまった
「はぁ〜ん、ほぉ〜、ふぅ〜ん、現実では女の子に指一本触れられないからネットに逃げたんだ」
 おいおい、お前も普通にチャットとかしてるじゃないか、顔も知らない―――
 もうリアルで逢っちゃったけどね、そんな相手になぜに嫉妬する
 それに俺だってお年頃だ、お前とあ〜んなことやこ〜んなことなんかをして充実した
 恋人ライフを送りたいよ
 けど、身体が拒絶する、怖いと逃げる、行くなと抑える
 俺が女性恐怖症になったのは数年前だ、理由は解らない
 数年前にと時期はわかっているのになぜ理由が解かは――――その時期の記憶が曖昧なのだ
 あれは優華の誕生日だった
 その日、俺は彼女にプレゼントを渡そうと優華の家に向かう途中だった
 急に意識がなくなり、目覚めたとき俺は女性恐怖症になっていた
 そのとき何があったのか俺にはわからない、けどあの時から俺の中の本能のようなものが訴えてくる
 女に近づくな・・・・と
 まぁ、そんなことはいいとして・・・・
「お前、穂華・・・・だろ?」
「あら、気づいていましたの?」
 時同じくして優華は二重人格となってしまった
 本人は知らない、知っているのは穂華本人と俺だけだ
「なぜにキミが?」
「心配しておりましたのよ?和地が小汚いメスブタに騙されているのではないかと」
「何度も言うようだけど、俺の恋人は優華でキミじゃない・・・・お分かり?」
 優華もそうだけど、彼女――――穂華もなぜか俺に好意的なんだよな
 それも度が過ぎるほどに
 正直な話、恋人としては間違いなく役不足な俺を好きでいてくれるのはすさまじく嬉しい
 の、だが・・・・俺が好きなのは優華であって穂華ではない

「あら、身体は同じなのですよ?それに性格だって優華よりは・・・・」
「そういうこと言うから、ダメなの」
 そう言うと優華は不満げに俯いてしまった
「あの〜?」
 泣いているのでは?逃げようとする身体を必死で引っ張り近づいて顔を覗く
「和地♪」
 不意をついた穂華が俺の頬に口付けた
 寒気と共に温もりが伝わった、身体は・・・・大丈夫、拒絶反応は示していない
「うぅ〜ん、そろそろ戻らないと優華が気づきそうなので私は戻りますね?
 あとのフォローはお願いします」
 ぺこりと頭を下げると目を閉じ一瞬よろめいた
「――――――あれ?私?」
「ああ〜、なんだまた夢遊病じゃないか?」
「え、またなの?うぅ〜、自分では意識ないからわからないよ」
 普通気づくだろうに、突然意識がなくなるんだぜ?
 それでも優華は気づかない、神様・・・・優華を天然に生んでくれてありがとう
「・・・・」
 あれ?どうした?俺の顔をジッと見て
「口紅・・・・」
 寒気がした、その視線が俺の頬一点に集中している
 さっき穂華が付けたキスマークだ、急すぎて拭くのをすっかり忘れていた
 それに、穂華の奴・・・・完全に狙ってやがる
「ああ〜、それはお前さんが付けたものですよ〜」
 完全に目が泳いでしまっているのが解る
 嘘ではない、嘘ではないのだが・・・・つうか俺の立場が微妙すぎる
 当然のこと動揺する俺に優華は疑いのまなざしを向けている
「浮気したら・・・・あんた殺して私も死ぬからね・・・・」
 していません、神に誓って・・・・
 完全に目が据わっている彼女に俺は心で念じた
 あれは浮気ではない、しかも不可抗力だ
「あはは〜、冗談がうまいな優華は」
 ガシ!俺に腕を優華の手が掴んだそれも物凄い力で――――
 身体が拒絶反応を示す、身体中から汗が流れ、内に秘めるものが逃げろと訴えてくる
「冗談だと・・・・思う?」
 優華の奴、最初こそ俺に自分より好きな人が出来るまでと言っておきながら
 俺が告白を受けた瞬間からその独占欲が爆発した
 元々俺は触れられるのがダメなだけで女性自体が嫌いではない
 声高らかというのもなんだが、女の人が大好きだ
 なので話したりするのは大丈夫、けど・・・・
 最近は俺が優華以外の女の人と会話するだけで不機嫌になり、あとでネチネチ言ってくる
 それに触れられないんだから浮気なんて出来ようもない
 まぁ、最近は度が過ぎる優華のスキンシップのおかげでだいぶマシになったな
 腕を掴まれた瞬間は拒絶を示した身体も今は落ち着いている
「いい、覚えておいて、私を捨てたら――――どうなるか」
 はい、ベタ惚れしております――――優華さま
 食い込む指を一本一本見つめ俺は心に念じた

「ただいま」
「お帰り〜♪」
 帰るなり黄色い声が俺を出迎えた
 パタパタと音を立てて今から一人の女性が出てきた
 ウェーブの掛かった髪がはらはらと舞い女性の喜びを表現した
「なんですか?この新婚家庭のようなお出迎えは」
「あら、違うの?あ・な・た♪」
 可愛らしく小首をかしげる女性
 この人は茜さん、俺の義母だ
 父の再婚相手とかそういうのではない
 正確に言えば叔母さんさんだ
 俺の両親が墓標に入ってしまったので今は茜さんが俺の面倒を見てくれている
 歳も7つしか違わないので母というよりも姉に近いかもしれない
「なにか良いことでもあったの」
「それがね〜」
 パンパカパ〜ン♪
 と、音を立て両手を広げた茜さん、身体をずらし後ろの景色を見せた
「ども、今日から同居することになった月夜です、よろしくです」
 終わった、俺の人生終わった
「なんか照れるな〜、てへり♪」
 頭の中で嫉妬に狂う優華がナイフを持って俺を追いかけてくる姿を想像し俺はそう思った


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