恋をしたのは私が先。
あれは一年前の入学式の日。
ぎゅうぎゅう詰めの電車の中で、私の前にいたのがあの人。
周りに押されて密着してしまい、彼は顔を赤らめて「すいません」と呟いた。
でもその時は、学校はともかくまさか学年もクラスも同じだとなんて思わなかった。
その上、席まで隣同士で一緒だったなんて。
そう、あれは運命の出会いだった。そうとしか思えない。
だから、私は一年かけて彼…吉備光との距離を縮めてきた。
かわいらしい顔立。小さめだけど引き締まった体。抜群の運動神経。学年トップの頭脳。
そして、誰にでも優しい性格。
絵に書いたような美少年。理想の彼氏。それが彼。…それが私のミツ君
でも、私は油断してしまった。彼の傍にいることに安心して、事をゆっくり運びすぎた。
私は彼に歩み寄る。彼の目の前にいる女を見据えながら。
姑息な泥棒猫! 薄汚い雌犬!! 身の程知らずの雌狐!!!!
雌豚は惚けた顔して突っ立っている。突然すぎて、状況が把握できていないのかしら。
この程度の女では、ミツ君にはふさわしくない。
そう、ふさわしいのは
「ミツ君…私、あなたのことが好き」
…この私。私だけ。