スクエア☆アタック 第3回
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優那、友紀、千晴の三人は学校へ行く準備のために一旦それぞれの家に戻っていった。
三人が呼びに来るまでの数分間は数少ない大智が一人になれる時間だった。
テレビの情報番組を見ながらコーヒーを飲む……
この一時は大智にとって落ち着ける時間だった。

ふう……今日も今日とて慌ただしい朝だったな。
それにしても三人ともあの時と比べれば仲良くしてるようだな。
……あの時……あの時か……

「みんなみんな、大智に近づく女は殺してやる――!!」

優那が狂気に取り付かれた時のことを思い出して寒気が走った。

もう大丈夫。あの時のようなことは起きないはずだ。三人が仲良くしてる限りは……

「大智お兄ちゃん!学校行こ!」
「大智!学校行くわよ!早く早く!!」

玄関から友紀と千晴が呼んでいたが、時計を見るといつもの出発より随分早かった。

あれ?今日はいつもより早いな。どうしたんだろ。

学校へ行く準備をし、玄関に出てみると、制服姿の二人が笑顔で立っていた。

「さ、大智お兄ちゃん。行きましょ」
「大智、お弁当持った?忘れ物ない?さっさと行くわよ!」
二人に両手をがっちりとホールドされ、歩きはじめたが何か忘れてるような……。あ!

「ち、ちょっと二人とも!優那お姉ちゃん忘れてるよ!置いてくの?」

二人は大智を引きずりながら

「ああ、優那お姉ちゃんならほっといていいから」
「そうそう。ちょっとお仕置きしないと。そんなことより早く行くわよ!」

二人にズルズルと引きずられながら、大智は一抹の不安を感じた。

大智が通う学校までは電車で通学しているが、場所がかなり郊外にあるため、
殆どの学生が電車通学を余儀なくされていた。もちろん大智らもその例に漏れず、
電車に乗るためにホームで電車が来るのを待っていた。
いつもより早くホームに着いたが、電車待ちの学生で混雑している中、
大智は何か胸騒ぎがした。

心配だな……優那お姉ちゃん。暴走してなきゃいいけど……

しかしそれは無理な話だった。

ホームに溢れている学生を掻き分けて、誰かがこちらに走ってきた。

「うわ〜〜〜ん、大智!大智〜!!」

あ!……やっぱり。

目からは大粒の涙を流しながら、優那は大智の元に真っ直ぐ駆け寄り、抱きしめた。

「大智!大智!!酷いよ置いていくなんて!!お姉ちゃん怒ってるんだからね!!
怒って……うわ〜ん!!」
「優那お姉ちゃんごめん。置いてくつもりはなかったんだけど……」

すると今まで泣いていた優那がピタリと泣き止み

「……まさかあんたたちが!!」

優那に睨まれた友紀と千晴だったが、全く悪びれた様子もなく

「大智お兄ちゃんの手、と〜っても暖かかったわ。」
「全く、大智ったら手握らないと通学1つ出来ないんだから。」

二人とも!これ以上挑発しないで!!

「友紀!千晴!そんなにひどい事するなら、優那がやっつけてやる!!」

ボクシングのファイティングポーズっぽいポーズを取る優那。だが友紀、千晴にしてみれば、
そもそもの始まりは優那の我儘だっただけに堪ったものではない。

「はあ?何言ってんのよ!ケンカはご法度よ!!」

一、本気の喧嘩は理由の如何を問わず、両成敗とする。
  これ一切の例外を認めない禁忌とする。

「そうよそうよ!!大体優那お姉ちゃんがケンカ出来るわけないでしょ!!
デカ尻!ウシ乳!アソコがゆるゆるのあ〜ぱ〜お姉ちゃんのくせに!!あっかんべー」

友紀!!いくらなんでも言いすぎだよ!!優那お姉ちゃん怒っちゃうよ!!

友紀のあまりの暴言にさすがの優那も眉を吊り上げ、頬を膨らませた。

「お姉ちゃんを……ばかにするな――――!!!!」

遂に優那は怒り、取りあえず目の前にいた千晴に向かって腕をブンブン振り回して
ポカポカ叩きだした。しかし全然痛くない上に……かわいい。

「ち、ちょっとお姉ちゃん!落ち着いて!……あだ!!」
「優那お姉ちゃん!元はといえば優那お姉ちゃんの我儘が原因なんだから!!」

嗜めようとした友紀だったが、今の優那に理屈は通じなかった

「優那ゆるゆるじゃないもん!キツキツだもん!大体アソコに毛の一本も生えてない
パイパン娘に言われたくないもん!!」

「な!!!!!!!!!!!!!」

その瞬間沈黙がホームを支配し、誰も彼も言葉を発することが出来なかった。
ただ、暫くしたら徐々に周りからヒソヒソ話が聞こえてきた。

(パイパンだって……)
(パイパンだったのか……)
(学校一の才女と謳われていたのに……パイパンとは……)

今まで隠してきた秘密がよりによって公衆の面前で優那の口から暴露され、
今度は友紀が我慢の限界を超えた。

「優那お姉ちゃん!!!殺す!今ここで殺してやる!!!」

友紀は顔や耳を真っ赤にして腕をブンブン振り回して優那をポカポカ叩いた。
やっぱり痛くない上に……かわいい。

「ふーーんだ!チビでつるつるでひんぬーのくせに生意気なのよ!!」
「あー!言ったわね!占いバカの赤点女が!!」

二人がお互いをポカポカ叩いているのを大智と千晴は溜息まじりに見ていたが、
反対側のホームにいたこの二人も面白可笑しく眺めていた。

「先輩、何ですか?あのコントは」
「え?ああ、知らないのか?我が校名物の三人娘を」

後輩は頷いた。
すると先輩は一枚の紙を後輩に差し出した。

「あの三人にはそれぞれにファンクラブがあるぐらい有名だぞ。
しかもトラブルの種も尽きないときたもんだ。この紙に三人娘の基本データが載ってるから
これを見て、トラブルに巻き込まれないようにしろよ」

後輩はイマイチよく分からない顔をしながら、その紙を見た

     「尼知友紀」
   身長「149、5」

所属クラス「1−2」
   属性「従妹」「幼馴染」
所属クラブ「科学部」
装備スキル「口撃」(論理的かつ辛辣に相手を言い負かす)
     「天才」(大学教授も真っ青)
     「眼鏡」(萌えポイント)
     「行動力」(即断即決)

パワーバランス「魏」

     「三条千晴」
   身長「155,3」

所属クラス「2−3」
   属性「クラスメイト」「幼馴染」
所属クラブ「弓道部」
装備スキル「弓攻撃」(ハート以外は百発百中)
     「独占欲」(大智のみ)
     「家事全般」(特に料理)

パワーバランス「呉」

     「氏本優那」
   身長「163,3」

所属クラス「3−1」
   属性「お姉ちゃん」「幼馴染」
所属クラブ「帰宅部」
装備スキル「お姉ちゃんこんぴゅ〜た」(大智のみ)
     「お姉ちゃんれ〜だ〜」(半径2キロにいる大智をキャッチ)
     「お姉ちゃんあたっく」(フライングボディアタック)
     「お姉ちゃんふぁいなるうぇぽん」(大智に夜這いし、妊娠して結婚を迫る)

パワーバランス「蜀」

後輩はこの三人娘のデータが書いてある紙を見て、幾つか疑問があった。

「先輩、このパワーバランスの魏呉蜀って何ですか?」
「ん?それは三人娘のパワーバランスを三国志を例にして表しているんだ。
例えばこの三人の中では友紀ちゃんが「魏」で、他の二人よりも強いってことさ。
まあ高い知性と行動力は他の二人を圧倒しているからな。」
「ふーん、じゃあこの「呉」は?」
「千晴ちゃんの「呉」は実力は有るのだが、チャンスに弱いってことと、
他の二人に比べて存在感がちょっと薄いってことで「呉」と。」
「じゃあ最後の「蜀」は?」

それを聞いた瞬間、先輩は困った顔をして

「う〜ん、優那ちゃんの「蜀」ね……。まあ他の二人より明らかに頭が弱いってことで……。
本当は「匈奴」や「南蛮」ってのもあったんだけど、さすがにそれじゃアレなんで
余った「蜀」になったわけ。ちなみに優那ちゃんのあだ名は劉禅だとさ」

後輩はよく三人の人となりは知らないが、この紙を見て何となくは分かった。

「さ、電車も来たし行くぞ」


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