姉妹日記 『もう一つの姉妹の形』 第7話
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 まただ、もう・・・・涼さんの浮気者・・・・
 涼さんがクラスの女の子と楽しげに雑談している場に私はつかつかと歩み
 彼の背中を軽く押した
「涼・・・・・」
 あは、『さん』付けなしで呼んじゃったよ・・・・照れりこ
 でもいいよね?だって私たち・・・・恋人なんだものね・・・・ふふ
 振り返ると涼さんの顔が強張った・・・・
「あ・・・・きの・・・さん?」
 酷いな、もう・・・・まるで化け物を見るみたいに・・・・ちょっとショックだよ
「なに、話しているの?」
 腕を取り胸に抱き寄せると、涼さんの顔が赤く染まる
 ふふ、照れちゃって・・・・可愛いんだよな・・・・もう
 食べちゃいたいな・・・・・
「あれ、二人って付き合ってるの?」
 そのやり取りを見て、クラスメイトの子がそう聞いてきた
 あ、やっぱり?恋人に見える?嬉しいな〜♪
 より強く腕を抱きしめると、涼さんは身じろぎして少し後ろに下がった
 離すものかと瞳と行動で示すと涼さんは諦めたのか抵抗をやめた
「やっぱり付き合ってるんだ・・・・・」
 私たちのイチャイチャぶりを見てクラスメイトの女子がため息混じりにそうつぶやいた
 当てられちゃった?それほどお似合いかな?私たち・・・・照れりこ
「残念、私〜、神坂のこと狙ってたのに〜」
 猫なで声と共に彼女の指が涼さんの胸を這って行く
「ねぇ、そんな誰とでも寝るなんて女なんかより・・・・私なんて・・・・どうかな?」
 この女、男の人に媚びることに慣れている、どういえば男の人の心が動くかよく知っている
「・・・・っ」
 気づいたときには私は怒りに身を任せ涼さんにベタベタ触れる汚らわしい手を思い切り叩いていた

 

「痛〜っい!酷い〜」
 それを逆手にとって彼女は私がいかに酷いかということ大げさなリアクションでアピールした
「・・・・・私の涼さんに・・・・気安く触れないで・・・・・」
「あ、なにか言った?」
「涼さんと同じ空気吸うな・・・・同じ地面に立つな・・・・同じ世界に生きるな・・・・」
「なに電波なこと言ってるの?元々、あんたのこと気に食わなかったのよね・・・・
 中学のときはメガネのおさげ、うじうじイジメられっ子だったのにさ」
 彼女は少し間を置いて肩をすかすと大きな声でこう言った
「高校に入って、可愛くなって態度まで大きくなっちゃった?
 可愛いからって調子に乗ってるんじゃないわよ!」
 クラス中の視線が私たちに注がれ、廊下の野次馬が窓から顔を出し面白がっている
「いいじゃん、そんな可愛い顔してるんだから・・・・
 たくさんのボーイフレンドの中の一人でしょ?だったら一人くらいいいじゃん、神坂を私に頂戴よ」
 ・・・・怒りを通り越すと人間は頭が真っ白になるらしい
 今の私がそうだ、さっきまで怒り一色だった頭の中が今はクリーンになり
 さっきより怒りは増しているのに状況がはっきりと解る
 私が一歩踏み出し言葉を発しようとした時だった
 乾いた肌の音がして私はさっきまで感じていた涼さんのぬくもりが離れたのに気づいた
「叩いてごめん・・・・でも、いい加減な噂を鵜呑みにして・・・
 人を中傷するキミがどうしても許せなかったんだ」
 いつも大人しい、涼さんがこんな行動を取るなんて・・・・
 私はもちろんギャラリー全員が呆気に取られている
「涼・・・・さん」
「・・・・神坂」
 愛だよね?愛の力?きゃは♪嬉しぃ〜♪
「・・・・・」
 私はそっと涼さんに近づき肩をポンと叩いた
 振り返った顔に間髪入れずに顔を近づけ、私は涼さんと口付けた
「・・・・んむ」
 驚きで見開かれた目が私一点を見つめる・・・・
 やっとだよ、やっと私のファーストキスを捧げることができたよ・・・・
「んぱ!!」
 肩に手を置かれ、私は無理やりに引き離された

 

「秋乃・・・・さん・・・・」
 私は涼さんの頬にチュッとキスして青ざめた表情の負け犬を見下ろした
「どう、私たちがどれだけ愛し合ってるか・・・・解った?」
 ふふ、なにも答えられないでしょ?
「涼さん、屋上でご飯食べに行きましょ?」
 なにも答えることの出来ない負け犬なんてほっておいて私は彼の手を取り、
 ギャラリーをかき分けて廊下に出た

「秋乃さん・・・・誤解を招くこと・・・・しないで欲しいのだけど」
 周囲を見回して人がいないのを確認すると涼さんは小さくつぶやいた
「誤解って?」
「キスしたり愛し合ってるとか・・・・そういうの」
 もう、照れちゃって・・・・可愛いな
「涼さんが女性に慣れていないのは知ってますけど、私にまで壁作ることないじゃないですか」
「壁?」
「はい♪私たち恋人なんですから・・・・ね?」
 涼さんは悲しげに俯きこう言った
「キミとは付き合えないよ・・・・」
 え、いま・・・・なんて言ったの?
「ごめん、夏姉ちゃんと冬香が待ってるから・・・・行くね」
 唖然とする私の手を振りほどき彼は足早に駆けて行った
 遠くなっていく背中を見つめ私は微笑んだ
 ようやく状況が理解できたよ・・・・ダメだよ涼さん
 涼さんが照れ屋さんなのはわかるけど、これは度が過ぎると思うよ
 ここは恋人の私がなんとかしないとね・・・・
 だってほら・・・・結婚したら毎日一緒なんだよ?
 今のうちに慣らしておかないと照れ屋の涼さんがストレスで死んじゃうよ
 ここは私が一肌脱いであげなきゃね

 

 怖い、秋乃さんのあの目が・・・・
 クラスメイトの女子と会話するだけで彼女は物凄い形相でその光景を睨むように見つめる
 以前は大人しく清楚で・・・・大人しい子だったのに・・・・
 正直な話・・・・好きだった女の子がそんなになってしまって
 僕はどうしていいのかわからなくなっている
 でも、学校も休みだし・・・少しの間・・・・安息が続く・・・・はず
 春休み・・・・夏姉ちゃんと冬香は親戚の家に行っていて今は僕一人・・・・
 二人と関係を結んでしまいそれに加え秋乃さんの豹変ぶりなどで心が休まることのなかったけど
 一人の時間を持てるようになって少し気が楽になったように思える
 秋乃さんの件はともかく、夏姉ちゃんと冬香の件は・・・・あまり楽観視できないな
 秋乃さんはそのうち諦めてくれるだろう・・・・でも二人は・・・・・
 コンビニの袋をブラブラと揺らしながら僕は誰も居ない家の前まで・・・・
 あれ?明かりが付いてる・・・・もしかして
 僕は家の中に急いで入り廊下とリビングを繋ぐドアを開いた
「お帰り!ふた・・・・り・・・・とも?」
 見えた人影は一つ・・・台所でよく見知った、けれどこの場では見慣れていない少女が立っていた
「あ、涼さん・・・・」
 満面の笑みが僕を出迎えた・・・・
 その少女は・・・・秋乃さんだった・・・・・
「どうして・・・・・鍵は!?」
「ダメですよ〜、鍵の隠し場所はちゃんとしていないと・・・・
 ストーカーでも勝手に入ってきたらどうするんですか?ただでさえ涼さんはモテルのに・・・・」
 テーブルの上に乗っている門の近く置いてある植木の下に隠してある予備の鍵を見て
 僕はゾッとした
「待っててくださいね・・・・もうすぐご飯出来ますから・・・・」
 僕は・・・・・

A 『なにも出来ずにただ立ち尽くした』
B 『彼女を拒絶した・・・・』
C 『??????』

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