姉妹日記 『もう一つの姉妹の形』 第2話
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「大丈夫ですか?少し痩せたようですけど」
 一週間ぶりの学校・・・・まず最初に僕を迎えてくれたのは秋乃さんの心配の声だった
 僕が元気なく頷くと、冷たい手が僕の額と重なった
「熱はないようですね・・・・よかった」
 心底安心したかのように肩を降ろして秋乃さんは満面に笑んだ
 やつれた僕の心もその笑顔だけで少し癒された気がした
「だ、大丈夫だよ・・・・」
 とても大丈夫というような声ではない・・・・
 それでも彼女は少し安心したのか穏やかに笑んだ
「涼ちゃん♪」
 いい雰囲気の僕と秋乃さんの間に割ってはいるかのような夏姉ちゃんの声
 振り返ると夏姉ちゃんがニコニコしながら僕たちに近づいてきた
「・・・・・」
 一瞬歩みを止め夏姉ちゃんは秋乃さんを見て一瞬顔を伏せてすぐに上げた
「涼ちゃ〜ん♪」
 そのまま僕の腕に抱きつくと踵を返して秋乃さんに背を向けようとする
「ちょ、夏姉ちゃん・・・・どうしたの?」
 見ると夏姉ちゃんは僕と同じ学校の制服を着ていた
 夏姉ちゃんと冬香は女子高で僕とは違う高校のはずなんだけど・・・・
「今日から、同じ学校に行くことになったの・・・・よろしくね〜♪」
 おどけて言うとめい一杯の力を込めて僕をその場から放そうとする
「あの、涼さん?」
 不思議そうに僕たちのやり取りを見ていた秋乃さんがようやく口を開いた
「あ、この人は・・・・・」
「涼ちゃんの婚約者の夏美です」
 僕の言葉を止めるかのように夏姉ちゃんの声が割って入る
「今は同じ屋根のした一緒に暮らしてるのよ?」 
 秋乃さんはもちろんだけど僕も唖然としてしまった
「だから、これ以上涼ちゃんに近づかないでくださる?」
 唖然で力の入っていない僕を引きずるようにして夏姉ちゃんと僕は秋乃さんから離れていった

「どうして、あんな誤解を招くようなこと言ったの?」
 ようやく平静を戻した僕がそう声を掛けると夏姉ちゃんは神妙な面持ちでこう言った
「あの子ね、有名なのよ・・・・誰とでも寝る女だって」
 え・・・・・
「知らないの?私たち今日入学したのに、すぐに噂が耳に入って来たのよ?」
 まさか、そんな訳ないよ・・・・
「あんな売女なんて忘れて、お姉ちゃんと一緒に居ましょ〜」

「あの、涼さん・・・・」
「あ、ああ・・・・・・」
 冷淡な返事をして僕が席の腰掛けると、秋乃さんがやって来て悲しげな顔した
「婚約者って・・・・その・・・・・」
 口をもごもごさせながらそう問うと秋乃さんは俯いてしまった
「秋乃さん、なんか変な噂の話・・・・聞いてる?」
 言葉を切り僕は続きを問われないようにした
 だって、想い人がそんな・・・・
 だから僕は遠まわしにそう聞いくことで僕は不安を解消しようとした
「もしかして、誰とでも寝る・・・・っていうの・・・・ですか?」
 罰が悪そうな彼女に僕が頷くと秋乃さんはこれでもかと両手をバタつかせた
「ち、違います!私そんなんじゃないんです!男性経験だってないし、
 それに・・・・初恋だって涼さんなんですから!!!!!!」
「・・・・・・あ、秋乃・・・・さん?」
 突然のカミングアウトに僕はもちろんのことクラスメイト全員が「あ」の口にし静寂が包み込んだ
「あ・・・・うぅぅぅぅ」
 自分の発言の意味することにようやく気づいたらしく秋乃さんは顔を真っ赤にして
 縮みこんでしまった
 穴があったら入りたいと言いたげに僕を見つめ少しはにかんだ
「あの噂・・・・は」
「・・・・・・」
「まだ、イジメられてる?」
 秋乃さんは縮こまりながら首を横に振った
「イジメほどでは・・・ただ、変な噂を立てられるだけです」
「そっか、変なこと聞いてごめんね」
 そう言うと秋乃さんは構いませんと両手を振って僕を許してくれた
「そうだ、今度デートしない?」
「え、デート・・・・・ですか?」
 頬を赤くしたまま秋乃さんは可愛く小首をかしげた
「うん・・・・・」
 すると、秋乃さんは嬉しそうに頷き僕の手を握った
「ありがとうございます!」

「あ、涼さ〜ん」
 デートの日・・・・
 僕は初めて見た私服の秋乃さんに僕は思わず見惚れてしまった
「どう?似合うかな〜?この日のために新調したんだけど?」
 心なしか明るい秋乃さんに僕は微笑むんで頷くと秋乃さんは嬉しそうにその場で跳ねた
「よし、これで好感度アップ!」
 普段とは違う秋乃さんの元気っぷりに少々度惑いを感じたけど、
 新たな秋乃さんの一面に僕も嬉しくなってきた
「じゃあ、行こうか!」
 差し伸べられた手を握り僕たちは人がにぎわう繁華街にくり出した

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