姉妹日記 『もう一つの姉妹の形』 第1話
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「前から、好きだったの・・・・私と付き合ってくれないかな?」
 誰も居ない学校の屋上、僕は下駄箱居にあった手紙
〈屋上で待っています〉
 短い文章を読んで屋上に向かうとそこには学校のプリンセスの南条秋乃さんが居た
 僕を確認すると慌てて姿勢を正し、僕が「どうしたの?」と聞くと・・・・・
 突然告白された・・・・
 中学の頃からの憧れの存在だった秋乃さんに告白され、僕は今にも天に昇りそうなほど嬉しかった
 だって、あの南条秋乃さん・・・・だよ?
 容姿はもちろん勉強もできてすごく気立てのいい子だ
 中学の頃はそうではなかったけど、今では学校のプリンセスにまで上り詰めている
 聞く話によると学校の50%を超える男子が彼女を狙っているって話だし
 でも、浮いた話が一つもなくいまだに男性経験は皆無らしい
 その結果、許婚がいるなどレ○だの色々噂されていたけど・・・・
「あの、秋乃さん・・・・」
「え、あ・・・・」
 声を掛けると秋乃さんは驚いて背筋を伸ばした
「もう、少し考えさせてくれないかな?」
「あ、そうだよね・・・・いきなりだもんね、でも・・・・本気だから私・・・・」
 僕が頷くと彼女は近くに置いてあったカバンを取ると足早にここから去ろうとした
「あ、送っていこうか?」
「あ、いいよ・・・・気にしないで」
 手を振ると無邪気に笑んで秋乃さんはその場を去っていった

 どんどん、心臓の鼓動が速まっていく
 僕は落ち着かない気持ちをなんろか静めようと屋根に登って月を見上げた
 南条秋乃・・・・最初逢ったのは、中学のとき・・・・
 メガネを掛けていて、皆から地味だって言われていたっけ
 友人も少なく、彼女曰く中学で一番自分を気に掛けてくれたのは僕だったとか
 高校に入って彼女のイメージは変わった
 急に女の子らしくなって、入学当初すごく話題になった
 変わったことにではないその美貌が・・・・だ
 いい意味での話題を呼び、今や学校のプリンセスとまで上り詰めた彼女からの告白・・・・
「お〜い、大事な話があるんだ・・・・下に来てくれ!」
 父さんの声が僕を現実に引き戻した
 僕は頭を何度か振ると下に降りていった
 
「夏美ちゃんと冬香ちゃんのことなんだが」
 窓から自分の部屋に戻り、下の階に降りるとそこには
 父さんと夏姉ちゃんと冬香が僕を待っていた
「二人のご両親が先日亡くなったのは知っているね?」
 僕が頷くと父さんは一瞬複雑そうな顔した・・・・
「簡潔に言うと、二人を預かることにしたんだ」
 え・・・・・
 後ろの二人を見てみると申し訳なさそうに頭を下げた
「・・・・・僕は良いと思うけど」
 不安が嬉しさに変わる、僕が笑んで見せると二人も笑んだ・・・・
 今日はなんだか色々なことがあったな・・・・
 
「あの、涼さん・・・・」
 朝の登校中か弱い声が僕を呼び止めた、この声は・・・・秋乃さん?
 振り返るとそこには秋乃さんが居た
 俯き加減で僕を上目使いに見つめ頬を染めた・・・・
「昨日の・・・・その・・・・・」
 意図しているのは解る、僕も彼女が・・・・返事をしようとした時だった
「涼ちゃん!」
 いつもの間延びした声ではない、必死な声の夏姉ちゃんが僕に駆け寄ってきた
「おじ様が・・・・おじ様が」
「どうしたの・・・・?」
「いいから、早く来て!」
 少し遅れてやって来た冬香が有無を言わさずに僕の手を掴んだ
「あ、涼さん・・・・」
「ご、ごめんね・・・・急用らしいんだ」
「あ、はい・・・・・」
 僕が謝ると彼女は少し残念そうな顔をしたけど、すぐに頷いてくれた
 
 その日、僕は不慮の事故で父さんを失った・・・・
 この二日で僕は天国と地獄・・・・
 人生の仰天がいっぺんにやって来た・・・・


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