「妹?」
「そうそう…あーっと…生き別れで……昨日、そう、昨日!!いやぁ、この島に来たわけですよ。」
「いや、っていうか……妹なんているわけないじゃん、私達……」
どーしてそーやってリアリティな方へと持ってくかなぁ。
「んー…じゃあ、姉妹機?」
「そりゃあんたのストーカー女でしょ?」
「いやぁー!やめてぇ!あれは俺の人生の汚点なのぉ!!」
「うわ!キモいから止めてよ!くっつくなぁ!」
げへへ……こうなったら俺は止まらないぜ……
「うりうり!」
もみっ
「きゃぁん!?む、胸をもむ……なぁ…」
「ほっほぉ、普段は強気なのにこういう事されるとそんなかわいい声で泣くのかい?
……さては精神的処女だな?」
「そ、んな…かわいいなんて…んぁ…」
そこしか聞こえてねぇのかよ!
「さぁって、こっちも濡れてきたかなぁ?」
そういって紅のズボンのベルトに手を掛けると……
「そ、う、や、さ、ん?」
ブンッ!ガッ!
いやぁ……弁当箱の角って痛い………
「うわ、な、殴った?」
海ちゃんが驚きの声を上げたのが最後に聞いた声だった………
「う、うーん……」
目を覚ます。意識が覚醒する。
「ここは……?」
真っ暗で何も見えない。は!?まさか後ろから殴られて気絶している間に拉致監禁された?
「きゃー!助けてぇ!操が、操がぁ!………あ。」
ただたんに夜で周りが真っ暗なだけだった。当然学校の電気も落ちていたのだ。
っていうか、こんなに暗くなるまで放置ってひどくない?
もはや死後と化し、化石にまでなりそうなほど古い、語尾の音程を上げた疑問型で考えてみる。
「夜の学校……めざすはあの娘のリコーダー!」
とはいえ、誰もリコーダーなんて持ってるわけがなく、とても虚しくなってきたので
とぼとぼかえる。くすん。
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夜の帰り道。こんなに遅くなって帰るのはとても久しぶりかもしれない。
時計を見ると十一時……いや、気絶しすぎっしょ?
五十メートル間隔で設置してある薄暗い街灯の下を歩く。やばいなぁ……やばいやばい。
さっきから後ろに居るよ。自他ともに認めるストーカーの彼女じゃなくて……
この時間帯によく現れる浮浪者が……まったく、金目の物なんて無いっての。
「女かな?……男は勘弁して欲しいなぁ。」
襲い返す意味が無くなる。女でもおばさんも止めてほしいけどな。
どっちにしろ襲われるのは確定のようだ。背中にビシビシと殺気が当たる。
「1…2の…3!」
タイミングをみて走り出す。いきなりの行動に慌てたらしく、すぐに追うように向こうも走り出す。
はは……滑稽だな。
そのまま距離を開けず詰められずのスピードで走る。と、ちょうどいい裏路地を発見。
そこに入り込む。それと同時に180°振り向く。……来たっ!
見切り発車で、勘を頼りに拳を振り出す。タイミングは……
バキッ
ジャストだ。見事、浮浪者の顎に直撃。一発で気絶する。
「さーて……なんだよ…男かい。」
しかもおっさんだ。ああ、興ざめだな。しかしナイフを持っていたとはなぁ。
作戦勝ちってやつかな。
そのナイフを没収し、再度帰り道に戻ろうとすると………
「蒼也、危なかった。」
また…彼女かよ………
「なに?何か用?帰りたいんだけど。」
振り替えると、真っ暗な裏路地に、まるで猫のような瞳だけが、うっすらと見えていた。
相変わらず不気味だ。
「この浮浪者どうするの?……殺しとく?」
「いや、そんなにまでしなくていいよ……てか、殺すのはやりすぎだって。」
「でもあなたを傷つけようとした。殺されてとうぜん。だから……」
「殺すな。」
「わかった…あなたが言うなら…」
やれやれ、ただでさえこの浮浪者が男だっていうだけでやる気ダウンなのに、
その上彼女まで現れるとは……今日は厄日かな?
「じゃあ俺は帰……」
「また家に、女を飼ってる。」
なんの脈絡もなく、話題をふられる。
「は?」
「今日学校に弁当を届に来た女……あれ、新しい女………」
監視してたのか。やだねぇ、いつも周りにいるなんて。ストーカーなんて甘いもんじゃない。
「殺したい……あの女………あなたに馴々しくして…」
「止めてくれよ。彼女はもしかしたら初めての大物かもしれない。
忠誠心といい、行動力といい、文句なしだ。」
「わかった。あなたがやめろって言うなら止める。」
「……俺が死ねって言ったら死ぬの?」
「それはやだ。あなたに会えなくなる。」
「はは……中途半端だよ、それ。」
「あなたが一番…あなたが私の世界だから…」