永遠の願い 第2話
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1年ということは、後輩に当たるのかな。
とっても丁寧な内容だった。
あんなにいろいろ詰め込み詰め込んだのは、それだけ気持ちがあるからだ。
孝人は全然知らないけど、彼は結構女子の間では好感度が高い。
確かに、彼氏にしたい男子のランキングをつけたら、けして上位になる、っていうわけじゃない。
そういう広い支持を得るというより、大切な人のためになら一途に頑張ってくれそうな、
誠実そうなところを見ることのできた一部のこからの想いが、私も含めて熱烈なだけ。
実際付き合うと、こんなにシモネタ全開のジョークする人のどこが誠実なんだ、
って突っ込みたくなるけれど、それはあくまで彼のユーモアで、みんなが思う
その誠実そうなところは、正解なんだ。
朝だけはどうしてもだめなんだけど、時間という時間ちゃんと守ってくれるし、私のお願いは、
本当に無理のないことならちゃんと受け止めてくれる。
掃除当番はきちんとこなしてくれるし、結構校則にもうるさい。
それは単なる真面目君だけど、ノートとかきちんと取ってるし、眠くなる先生の授業でも
きちんと目を開けて聞いてる。
聞くと、「先生たちもみんながんばってるんだから、それに答えてやらないと失礼だ」っていって。
生真面目な彼は、成績こそすこぶるいいというわけではないけれど、先生方の評価はおおむね良好、
私も含めて優良な模範生だと言っていたのを聞いたことがあった。
それに。
困ってる人がいると自分がいくら大変でも、しっかり聞いてくれるんだ。
いいところ、挙げるだけできりが無い。
本当に素敵な男性なのが、桧木孝人。
彼のいいところを知ってしまったら、彼を好きにならずにはいられない。
小さい頃から、ずっと、ずっと。
孝人のお嫁さんになりたかった。
小さい頃はいつも孝人と遊んでた。
おままごとは、もちろん孝人が旦那様で、私が奥様。
孝人の両親も、私の両親も仲が良かったから、本当にむつまじい家庭をロールプレイしていたっけ。
そんな子どもの頃のお遊びの延長線上にある、本当の意味で孝人に愛される生活を夢見ていた。
孝人はエッチなことばっかり言ってからかうけど、そういうこと言われると、
たまに蜜が溢れそうになる。
恥ずかしいから、絶対ムキにならないように堪えているけれど、あんまりそういうこというと、
ほんとに湿って、滲んでくる。
あんまりからかわないでほしいけれど、それはそういう言葉が嫌なんじゃなくて、
そういう言葉で濁して欲しくないから。
夢の中で孝人に抱かれたことは1度や2度じゃない。
夢の中の孝人は私だけの孝人で、私だけを愛してくれてる。
誰かが入り込む余地がないくらい、熱く愛を交し合って。
濡れぼそった私の中でいっぱい暴れて、猛った液をためらいもなく放つの……まだちょっと早いよ、
って、いったけど、そうして欲しいって願ったのは、私で、早いって断ったのは、孝人なんだ。
彼はそういう人だから、私がリードしないとエッチもちゃんとできないかもしれない。
だって、私……
初オナニー、小学校4年生、対象、自転車のサドル、なんだ。
それからひそかに、孝人のえっちな本隠れて読んで、インターネットでそんなサイトばかり見て、
そのたびに、終わらないかもしれないくらいえんえんとオナニーしてた。
それから。孝人を受け入れてるのを夢見るようになったんだ。
そう、孝人より、絶対経験多いから。
だから、私ががんばらなくちゃ。

孝人、今日もちゃんとノート、取ってるね。
孝人、って呼ぶようになったのは、学校上がってからかな。
それまでは、たかくんって呼んでいたけれど、たかくんがそれだと照れくさいって、
名前を呼び捨ててくれっていってたんだ。
私はちょっと違和感あったけど、でも、呼び捨てするっていう意味の深さを知ってたから、
すぐに呼び方変えたんだ。
呼び捨てはとても失礼なこと。
それを認めてくれるっていう意味は、確かに私と孝人は十数年の幼なじみだからっていうことも
あるけれど、でもそれ以上に「お互い大人の入り口を踏んだ」っていう意味でもあるんだよ。
だから、孝人って呼んだら。
もう、嫁げる日も近いんだな、って実感したんだ。
孝人のお父さんもお母さんも、私がお嫁さんならきっと喜んでくれる。
私の両親も孝人をよく知ってて、孝人のご両親とも仲がいいから、親ぐるみできっと、
賛成してくれる。祝福してくれる。
だから。
「さかきゆきな」
っていう女からのラブレターは、どうか無視してほしい。
できるなら、彼を拉致してそんなところにいかせたりしちゃいけないんだ。
でも、無理。
孝人は絶対、無視なんかしない。もし無視させたら、私きっと嫌われる。
そう。孝人は、断るなら、ちゃんと会って、話を聞いて、それから話す人だから。
ね、お願いだから。
必ず断って。

だって……私の未来の旦那様なんだよ、孝人は。

そんなふうに物思いにふけりながら、書いたノートはかなりあてずっぽうだった。
あとで孝人にノート借りて、合ってるか確認しなくちゃいけなかった。
そうなったのもみんな、あのラブレターのせいなのに。
孝人は私じゃないと、だめなの。
ラブレターを出しても無駄。
だって。
私じゃないと、孝人がだめになっちゃうから……
私が尽くしていないと、孝人はもっと素敵な男性になれないから……
ね、だから。
「孝人、お昼食べよ〜」
「ああ、いいぜ」
お昼休みの孝人の真正面は、私の特等席。
彼の前の男子生徒に机を借りて孝人の机とくっつける。
もちろん、今日も孝人のお弁当は、私の手作り。
朝4時半に起きて準備して、作ったんだから。
「うはぁ、今日もまた豪勢だな」
「うん、いっぱい食べてほしいから」
「じゃあいただきます」
作りたいものがいっぱいあるっていって重箱にするなんてしない。
孝人の胃の大きさにあわせて、今日はこれ、明日はこれって献立を組んだほうが、孝人のため。
孝人、そんな気遣いをちゃんと考慮してくれるかな?
いつも、それが当たり前になってて、全然確認できない。
特においしい、とは言わないけれど、孝人は視線で私にサムズアップしている。
それを微笑ましい目で見つめ返すのがいつもの日課。
もちろん、タコさんウインナーは基本です。
「なあ」
「何?」
「ウインナー、いつも作ったら舐めてるだろ」
「え、え、そんなわけないよっ」
う……
ほんのさらっといったジョークなのに、すごくどきどきしてしまう。

「まるでフェラでもしてるみたいにさ、こう、ちゅばちゅばと」
「変な音たてないでよ〜いやらしい……」
それに平気でフェラなんて言わないでっ。
本当に恥ずかしいんだから。
「ふうん、別にいいんだけど」
と、タコさんウインナーを噛み千切って、少しずつ口に放り込んでいきます。
「良くないよ〜つやつやは火を通すときに使った油なんだからね」
「ふーん。まあそういうことにしておいてやろう」
「もーっ」
ここ最近、タコさんウインナー作ると、孝人ってこういうこと言うから。
だから、毎日毎日、どきどきして止まらない。
孝人にふさわしい人になろうって決めて、いろんな工夫を勉強にも運動にもして、
みんなが私を完全無欠の幼なじみ系通い妻って認めるくらいまで力をつけられた。
体力もついて、頭も冴えて、お料理もできて。
ちゃんと食べるものもチョイスしてきたおかげだと思う。スタイルもすごく良くなってた。
孝人にも認めてもらえた。
おかげで孝人が、私に愛してもらえてることが幸せだ、
ってみんながうらやむような人になることができた。
だから。
あとは孝人のハートをぎゅっと掴んで、私の胸の中に引き込むだけ。
だけど。
孝人のことを思うと、どうしても指が秘部をなぞるのを止められなくなってしまう。
いけない、絶対孝人はこんな私を嫌いになる。
そんな不安とのせめぎあいの中で、孝人にすまして接して、孝人といつまでも
中むつまじくいられるようにしないと。
その時間がとても貴重で、とてもうれしかったから。
少なくとも、今のままでいけば、何もなければ、孝人ととんとん拍子で結ばれたと思う。
でも。
孝人、空になったお弁当箱を閉じて、入れ物に入れて私に返した。
「今日もうまかった、ごちそうさま」
「いえいえ。明日もまたがんばるね」
「別に無理しなくてもいいんだぞ? 朝いつも早いんだろ」
「その分早寝なんだから。それに、好きでやっていることだし」
「そうはいってもな……」
「ね。明日も腕を振るうから」
なんとなく遠慮がちなことをいう孝人。
いつもなら、普通にありがとうっていってくれるのに。
どうしてこんなやりとりをしないといけないんだろう。
やっぱり、あの手紙のせい?
かわいい後輩、だと思う、きっと容姿は悪くない人だと感じて、かなりの期待、寄せてるんだ。
孝人、結構女の子に好かれてるのに、そういう自覚ないから、ましてや、ラブレターなんて、
貰ったことないから。
なんとなく浮かれ気分なのだと思う。
だから。
その人が気に入るかもしれないから。
私に覚悟を決めておけと、言っているんだ。
そんな中で、食べている自分のお弁当は、自分の味だからか、あまり味がしなかった。


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