「あー…今日は転校生がいる。っとまあ、みんな早く見せろって顔だな。まあいい。入ってこい!」
鬼山の怒声と共にドアが開く。そこから入って来たのは一人の女生徒。まだ制服が届いてないのか、
見慣れない服を着ている。
長いが纏まりのある髪。黒く、切れ長の瞳。背は小さい方か。……面倒な評価は止めよう。
総括『おおおおーーーー!!!!』
と、まあクラスの男どもが声を上げる程かわいいってこった。
「ふん、三次元の何がいい!?」
一人例外有り。俺はというと……何故か、彼女の顔を見た途端、視線が外せなかった。
かわいいからとか一目惚れではなく、なんだか…不思議だった。
以前に会ったことがあるような。そんな懐かしい感覚。明らかに初対面なのに。
「…!」
目が合う。なんでだろう。向こうも目をはなさない。それは二秒か三秒か。
いや、もっと短かったかもしれないが、その感覚が脳裏に焼き付いた。
「ああ…いかんいかん。」
目を伏せ、頭を振る。なんだか脳内スパーク状態だ。
「それでは自己紹介を……」
「はい。…初めまして。遠藤沙羅です。」
遠藤…遠藤………どっかで聞いたことがあるような。思い出せそうで思い出せない。
『相談できるんですか?』『そうだん(なん)です!』とかいう駄洒落をぶっこいた金融会社名が
思い出せないぐらい気持ち悪い。
そんなことで悩んでいると……
「ん、じゃあ亮夜。隣り空いてるから座らしてやれ。」
「え……」
そう先生が言うやいなや……
「せ、先生!」
美夜が立ち上がる。さすが委員長。クラスのために働くねぇ。
「転校生なら私の隣りがいいかと……えぇっと…い、委員長として…えぇ…いろいろと教えたいんで…。」
「いえ、私あそこの席がいいでーっす!」
かなり元気よく転校生……沙羅さんが叫ぶ。ざわめく教室。美夜は……仰天していた。
そんな騒然としたなかを、悠々と沙羅さんは歩いて来る。
「初めまして…えっと、亮夜くん?」
「ああ、はあ…初めまして……」
いきなり握手。すっごい照れる。どうやら気さくな人らしい。このタイプは
親父(初対面の人にパッチンガムやるのは気さくと言うのか?)でなれているのでやりやすい。
「教科書とか、あるか?なけりゃみせちゃるよ。」
「うん。助かりますよー。」
そう言うと即座に席をつける………いや、ってか。
「椅子まで近付けなくってもいいだろ!?」
「はっは〜。照れるな照れるなぁ。」
ここまで気さくな奴とは!ってかそういうことされると……嗚呼!ほら。周りの男どもの視線がぁ!
嫉妬と羨望のまなざしがぁ!
そんな厳しい状況の中、授業は淡々と進んでいった……
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「昼飯だあ!」
やっと解放され、自由な時間を手にしたと思ったのだが………
「ナニヲナサッテイルンデスカ?」
俺が言いたいことを美夜が先に言ってくれた。うん、まあ、妥当な質問かな。
「いいじゃないっすか。ここまできたら、お昼も一緒にたべましょ?」
机をくっつけたまま、弁当を広げる。ついでに俺も。
「それ、誰が作ったの?」
「ん?ああ、妹が…つってもこいつじゃなくてもう一人の、な。」
そこんとこ間違えると大変だ。
「ふーん……妹ねぇ。…今度、会わせてよ。」
「はい。」
そう言って興奮している美夜を指差す。
「違う。こっちじゃなくてお弁当作った方よ。」
うわぁ……こっち扱いで美夜サン激怒ですよ………