一掴みの優しさを君に 第1回
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「あんのヴァカ親どもが!」
事の発端は先週の親父の一言だった。
「あー、そうだ、言うの忘れてた。来週から俺ら、USAに住むから。
ふふん、ハイクオリティだなUSAって言い方。」
「もちろん私も晋也についていくからね。亮夜達も私たちがいなくても大丈夫でしょ。」
三日前に思い出すとは、なんともウチの親らしい。そして今日の朝、「アデュー!」と置き手紙を残して
旅立っていた。取り残されたのは俺、笹原亮夜と………
「ふぁ……朝からうるさいよー。お兄ちゃん。」
今起きてきた双子の妹、笹原美夜。双子とはいえ男と女なので、あまり似てはいない。
「なんちゅー親なんだヨ!朝飯にコーンフレーク置いて旅立ちだぜ?」
「今に始まったことじゃないと思うなぁ。」
それを言われると終わる。あの二人の伝説は伊達じゃない。学生の身で俺たちを産み、
PTAを押し切り結婚。今でも夏校の伝説と化している。
「大丈夫だよ、お兄ちゃん。私が作ってあげるから。」
「だが断る!全力で断る!全身全霊で……」
「それ以上言うと、ご飯たべれなくなるよ?」
そして差し出されるは伝家の宝刀。ってか本当のナイフ。

今年の誕生日に、母さんからもらったプレゼントだ。ちなみに俺は……親父から、
『淫乱教師〜いけない補習授業〜』をもらった。
曰く、「お前もその時が来たのだよ。」と。ちなみに小説なので、実用性は低い。悪しからず。
「ま、まあ落ち着こうよ。とりあえずそれをしまえって……」
時計を見る。……5、4、3、2、1…
「兄ちゃん!おはよう!」
「キタァーーーー!冬奈!飯を作ってくれよ!」
「うん、そう言うと思って、お家から作って持ってきたんだ。」
「グッジョ!」
ブを言わないのがマイブーム。ビシッと親指を立てる。
「いいもん……今度お兄ちゃんのジュースに下剤まぜちゃうもん……どうせ私の料理なんか……」
「ほらほら、お前もいじけてねーで冬奈の飯食おうぜ。」
烏丸冬奈。もう一人の俺の『妹』。名字が違うのは、異母兄弟だから……らしい。
詳しくは知らされていない。というか、親父に聞いたら「エヘッ」と答え、母さんに聞いたら
ひと睨みされ、次の日にパソコンのエロデータ(親父の含む)が消されていたのだ。
それ以来、その真相にちかづくのは止めている。知る権利はあるのにな。クスン。


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