死の館 第9回
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――由良
翔「ったくよー……もっとこう化けもんとかいないかね。」
由「ほんっとに冗談にならないんでやめてください。」
全く空気を読めない兄さんに頭痛がするが、それ以上の悩みごとがある。
………敦也さんと美保さんの事だ…。二人は向こうの同じ班。
この状況なだけに、今まで以上に親密になっていないかと心配になる。……だめだ、
やっぱり敦也さんを諦めきれない。また心のモヤモヤが湧き出してくる。
光「そんなこと言って……本当に化け物と戦えるんでしょうね?」
翔「はんっ!この山岳のために鍛えた筋肉、甘く見ないでくれよな。」
と、そこで行き止まりとなり、左右に二つのドアが現れた。どちらも似た様なドアだが………
光「どっちだろ……明は……」
翔「迷っててもしかたねぇしさ、テキトーに……右だ。」
そう言って何も考えなしに兄さんは一人で入ってしまうと………
ガチャン
私達が入るまえに、ドアが閉まり、開かなくなってしまった。全く……兄さんの悪ふざけも……
由「兄さん?遊んでないで開けてください。」
翔「ああ?いや……これ、あかねぇよ。鍵かかってる。」
その時…
「キャァアアアアアア!!!!」

――敦也
敦「……さて、どうするか、だな。」
俺達は迷っていた。さっきの叫び声と、前に進むかでだ。あれは確かに明の声だった。
だが、その声の聞こえたのは、進行方向とは違う物だった。
声の方に進むには……
奏「この中を進わけね……」
少し高いところにある、通風口らしきところを進しかなかった。一応塞いでいた網を
ペンチで切り落としたが……
奏「誰が行くかって話よね……」
美「私は絶対いや!…あっちゃんと一緒がいい。」
奏「……私だって…敦也君と一緒の方がいいわよ……」
なぜか変なことで言い争う二人。どっちでもいいじゃないか。でもまあ、ここを通るなら……
敦「美保。頼む。お前の体じゃないと通れなさそうだしな。」
美「え?……う、うそ。いやよ!…あっちゃんと離れるなんて……」
奏「いいから行きなさいよ。大切なあっちゃんの命令なんでしょ?」
勝ち誇った様に見下す奏。それだから周りに敵を作りやすいんだよ……
美「くっ……この…あんたなんて、殺されちゃえばいいのよ!あの殺人鬼にね!」
それは言い過ぎだと注意するまえに、もう通風口の向こうへと行ってしまった……


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