死の館 第8回
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洋館の日記(抜粋)

1992年 一月二十日
きょう、おうちにあたらしいおともだちがきた。あなたがおねえちゃんよとお母さんにいわれた。
だからあつくんは私のおとうと。

1992年 二月八日
あつくんは私をおねえちゃんとよんでなかよくしてくれる。だから私もおままごとをしてあそんだ。
あつくんとふうふのやくをやって、とてもうれしかった。

1995年 三月…(汚れて見えない)
今日はあつくんとかくれんぼで遊んだ。あつくんがおにだったけど、お家が広すぎてまいごになって、
ないてしまった。でも、私を見つけたらわらってよろこんでくれた。やっぱりあつくんには
私がいないとだめだ。

1997年 四月六日
今日は、お父さんが死んだ。とても悲しくって、何度も泣いたけど、あつくんが
『僕がいっしょにいてあげる』となぐさめてくれた。もうあつくんははなさない。死ぬまでいっしょなんだ。

2000年 七月九日
今日は起きたらあつくんが居なかった。お母さんに聞いたら、朝早くに出ていったらしい。
もう戻らないともいった。なんで?私のあつくんなのに。ずっと一緒だって言ってくれたのに……
私のあつくん、あつくんあつくん……(破れて見えない)

2000年 八月
今日もお母さんはあつくんの居場所を教えてくれなかった。きっとあつくんも寂しがっているはずだ。
お姉ちゃんがいないとだめなんだから。待っててね、あつくん。今迎えにいってあげるから。

2000年 九月
結局、お母さんは何も答えてくれなかった。あつくんの居場所を言ってくれるだけでいいのに。
こんな所すぐに出て行くのに。明日はロープを外してあげよう。

2006年 一月二十日
今日であつくんと会って14年。やっと居場所を見つけた。洋館を出て麓に下り、いろんな学校を
巡ってやっと出会えた。でも、あつくんは私に気付かなかった。とても悲しかった。
ううん、わかってる。きっと周りの奴等に洗脳されてるんだ、あつくんは。だからみんな
お母さんみたいに黙らせちゃえば、お姉ちゃんのこと思い出してくれる。
だから今でも使ってるあの洋館へ連れてって、あつくん以外殺しちゃえば思い出してくれるはずだ。
うん、きっとそう。
待っててね、あつくん。お姉ちゃんとのまた楽しい生活を取り戻せるのはもうすぐだから。
まずは洋館の使用人を殺そう。二人っきりの。今度こそ邪魔者の居ない生活を……
(以降、赤い染みの様な物で見えない。)


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