死の館 第6回
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――翔太
翔「これでいいな。」
なかなか納得のいく分け方になった。明ちゃんの行ったドアを進むのが、俺、由良、光。
まだ誰もも入っていないドアへ、脱出法を探すのが、敦也、美保ちゃん、奏、絵里ちゃん。
敦「じゃあ、気をつけてな。」
敦也に励まされる。そんなこと初めてで、変に寒気がした。照れ隠しに頭をかき、返事をする。
翔「はは、こっちは大丈夫だって…お前らこそ、気をつけろよな。」
最高の笑顔を見せてやろうと、顔をあげた……が。
由「兄さん……もうみんないっちゃいましたよ?」
敦也班は誰ひとりみてやいなかった。ちくしょう……
光「ほら、早く行くわよ!翔太。明が危険な目にあってるかもしれないでしょ!?」
グイグイと馬鹿力で引っ張られる。相変わらず強引な奴め!
翔「だぁ!もう、大丈夫だっつの。明ちゃんはお前の妹なんだ。殺人鬼の一人や二人ばったばったと……」
由「兄さん、今はそんな冗談言ってられないと思いますよ……本当に。」
確かにそうだが、これでも自分では畏怖しているんだ。……誤魔化すためにおちゃらける。
これが俺の処世術なんだからな………

――敦也
明を翔太達に任せ、脱出法を探す。とはいえ、四方を山に囲まれ、正門には狂犬。
その上洋館内には殺人鬼が彷徨ってるときた。
それを考えるだけで憂鬱になるのだが、何より今は……
美「奏ちゃん……絶対にあっちゃんに近付かないでよね!」
奏「まだ言ってるの?だから私じゃないって!」
美「嘘よ!信じられないわよ!二人きりになったら、その人を殺すつもりなんでしょ!?……ね?
あっちゃん。だから私といれば安全だからね?」
仲間内での疑心暗鬼。さっきの死体は、間違いなく人の手によるものだった。
一緒にいた奏が疑われるのは無理もないが。
特に警戒心が強いのが美保だ。この洋館にきてからなにかおかしい。
美「大丈夫だよ、あっちゃん。私が一緒なら。他の人…特に女の子と一緒にいちゃだめだよ?
殺されちゃうから……」
奏「そのあっちゃんが殺人鬼だったらどうするのよ?」
美「そんなわけないでしょ!!?勝手に罪を着せないで!あっちゃんだなんてきやすく呼ばないでよ!
この人殺し!」
そう美保がヒステリック気味に叫ぶ隣り、『本当に俺が殺人鬼だったら?』という黒い思案が浮かぶ。
本能から沸いた醜い塊が、理性を突き破りそうになるが、なんとか飲み込む。
イケナイ……保たないと………理性を………

――絵里
最悪な雰囲気のまま、時々カナちゃんと美保ちゃんの言い争いかあるまま進んでいった。
途中、敦也君の顔色がひどく悪い気がしたけど、しばらくしたら普通と変わらなかった。
見間違えだったかな?
ガチャさらにドアを開けると………
敦「真っ暗だな……電気が切れてるみたいだ。」
電球はあるが、スイッチを変えてもつかなかった。このままでは何も見えない。
絵「はい、敦也君。」
そう言って懐中電灯を渡す。山岳部の備品だが。渡すとき、美保ちゃんにすごいきつく睨まれたが、
怖くて目を合わせられなかった。……なるべく敦也君に近付かない方がいいかも。
そして光を付けた途端……
グルルルルルル……ウーッウーッ!
どこかで聞いた覚えのある唸り声。一瞬にして背筋が凍る。これは……あの……
奏「あ、あ……嘘でしょ?…なんで……なんでここにも犬がいるのよ!!?」
カナちゃんが真っ先に叫びだす。その金切り声と光によって、狂犬も私達の方に気付く。
まずい、襲われたら私、逃げられない……
敦「まじかよ……」
敦也君は至って冷静に犬を照らしていた。こっちへと迫っているのに!!


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