死の館 第5回
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――敦也
「ね?あっちゃん、私の隣りに居れば安全だから……みんな…みんな危ないんだから!」
軽く美保が錯乱し始めていた。あんな目にあったからだろうか。あからさまに周りと接する事を避けて居る。
「ははは……や、やだなあ、美保ちゃん。俺達が危害加えるわけないだろ?」
翔太が慌てて仲裁に入る。確かに、今の美保の言ってる事はめちゃくちゃだ。
と、その時、ひゅっと風を切る音。
「え?」
ガシャーーン!!!
振り替えると、中央にシャンデリアが落ちてきた。誰もいなかったため下敷きにはならなかったが、
そこには………
「き、キャーーー!!イヤァーー!!」
一斉に飛び交う複数の叫び声。恐怖、驚愕、悲しみ……そこにはすべてが混じっていた。
そう、そのシャンデリアには………
「はは、あは……う、嘘だろ?」
フラフラと近付く翔太。目線はただ一つ……シャンデリアに巻き付く様になっていた死体だった。
それはもう直視出来る様な物ではなかった。頭は潰され、血は体中にべとべとと張り付き、
強烈な死臭を放っていた。俺も込み上げる吐き気を抑え、何とか近付き、確認する………

――奏
「これは……先生、だな。顔は潰されてわからないけど……服と言い、体格と言い、間違いないだろ。」
「……ドッキリなんだろ?なあ、敦也?」
そんなわけない。離れて見ても本物の死体だとわかる。こんな匂いを、偽造できっこない。
でもまずい。この状況で疑われるのは……私だ。
「奏ちゃん!?」
真っ先に美保ちゃんに呼ばれた。いや、名前を叫ばれた。ああ、違う。私じゃ……ないのに。
「奏ちゃん、先生と一緒にいたんでしょ?これ、どういう事なの!?」
「そんな……私じゃ…ないよ………私は……」
「奏ちゃんが……やったんじゃないの!?」
「違う!私だって、途中から先生とはぐれて……それで……」
いくら弁解しても周りの疑いの目ははれない。
「おい、よせよ美保。言い過ぎだ。」
「そ、そーだって……たはは……」
こういうとき、男子はフォローしてくれる。
「あっちゃん!いくら奏ちゃんだからって庇わないで!」
「そうよ……一番疑いがあるのよ?」
女子は醜さが露にされる。えりっちまでも私を疑う。酷い、酷い!
「私じゃない!!……あなたたちの中にだっているんじゃないの!?」

――絵里
正直、私も完全にカナちゃんが殺ったと思った。だって、他にできる人なんていない。
でも、もしカナちゃんが犯人なら、理由が全く見当たらない。
少なくとも、カナちゃんが先生に殺意を抱いていたということは見えなかった。
人の心は友達でもわからないけど…
「いやよ…もう、いや、イヤァ!!」
突然、明ちゃんが狂った様に叫び、一人で走りだして勝手にドアの向こうへ入ってしまった。
「あ、明!!」
呆然として立ち尽くす七人。この複雑な洋館に加え、館内を彷徨っているかもしれない殺人鬼のことを
考えると、疲れるのも当然か。
「取りあえず……こうしててもなにもかわんねぇし、明ちゃん探すついでに、
此所から出る方法も考えようぜ。」
翔太君が案を出す。普段はおちゃらけているけど、こういう時には頼りになるのかもしれない。
「そうだな……明を探す班と、脱出法を探す班。二つに分けるけど、いいか?」
それに続いた敦也君の提案に、他の人達もうなずき、賛成する。ただ、私と美保ちゃんは少し渋った。
それもそのはず、殺人鬼が仲間にいるかもしれないのに………


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