死の館 第3回
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――敦也
「ハァ、ハァ、ハァ」
皆急に走ったため、息が切れている。なんとか走り抜き、ドアを閉め、犬を追い払う事ができた。
「か、奏!なんであんなのがいるんだよ?」
「知らないわよ。私だって聞きたいぐらいだわ。」
さすが自称アイドルを誇るぐらいだ。もう息も整え、平然と返事をしている。
「あ、あっちゃん!大丈夫?怪我なかった?」
「おまえな…俺の事より自分の事心配しろよ。お前こそ、怪我してないか?」
「うん…ありがと。」
そう言うとホワッと笑う。
「しかし許せんな。あんな凶暴な犬を放し飼いにしておく上、迎えも無いとは……
ここの主と話をつけてくる。」
「私も行きます。私がいないと話にならないでしょうから……とりあえず、
適当にこちらに行ってみましょう。」
言うやいなや、先生と奏は十数枚あるドアのうちの一つを開け、さっさと行ってしまった。
「あっちゃん……どうする?」
「散歩でもしながら適当に時間つぶすさ……一緒に行くか?」
「うん!」
それを聞き、俺は美保と一番入口から遠いドアを開け、入っていった。それは……地獄の幕開けだ……

――光
「ひ、光ちゃん……やめようよ……勝手に入ったら怒られちゃうよ?」
「なぁーに心配してんのよ。大丈夫だって。」
私は明と洋館を探索し始めた。あの様子だと先生達が戻ってくるのは遅くなりそうだ。それに……
「こういう広い家……私の冒険家としての魂が燃えるわよ!!」
「だからまずいってば〜。」
まったく、相変わらず弱気ね、明は。私達は双子だってのに、こうまで違うのかしらね。
「なによ、あんただって図書室があるかも、っていったら喜んだじゃない。同罪よ。」
「そんなぁ〜」
「それに、あんなめにあったんだから、これぐらいは許されるわよ。」
おどけながらもしっかりとついてくる。見掛けによらず、本に関しては貪欲だ。本が嫌いな私とは、
本当に正反対だ。
やっぱ本なんか読むよりスポーツよねー。
「それにしても…本当に広いわね…」
廊下だけでも、相当な長さだ。電気は着いているが、小さな豆電球が等間隔で点いているだけなので、
全体的に薄暗く、廊下の先もよく見えない。
……正直に言えば、不気味なのだ。
「ほら、この部屋なんか面白いドア……あれ?」
振り返ると、いつの間にか明が居なかった。さっきまではいたはずなのに………

――???
あなたがついにやってきた。私が招待した洋館へ。でも、正確にはこの洋館に
すんでいいのはあなただけ……
他の人は皆消すだけ。私とあなたは一生をここで過ごす……最初の犬に、誰も食い殺されなかったのは
残念……でも安心して。
邪魔者を消す方法なんて、いくらでもあるから……私にまかせてくれれば、きっと……いえ、
絶対うまくやってみせる。
「ん?おお、――か。こんな所でどうした?」
馬場隆……あなたの通う学校の先生…邪魔な人…
私は誤魔化すため、道に迷ったと言う。あたりに人はいない。殺るなら今。
「そうか、じゃあ俺と一緒にホールに戻ろう。この洋館に住んでる人が見当たらん。」
そう言うと、なんの疑いもせず、背中を向ける。……馬鹿な人。背中に隠していた
ネイルハンマーを取り出し、振りかざす。…もちん、釘抜きの方を向けて………振り下ろす!
ガッ!
「ぐあ!?」
一撃で膝を突く。まだまだ足りない。消えてもらわないと。
ガッ!ガッ!
「やめ…――!な、にを……す……」
私の名前が呼ばれるが、構わない。私の名前を呼んでいいのはあなただけだから。
他の奴等は……虫酸が走る。
ガッ!ドカッ!グバッ!
打撃音が水気を含む音に変わる。
「ふふふ…アハハハハハはははははは………」
グバッ!ドッ!グシュッ!
もう完全に死んでいる。それてもまだ振り続ける。あなたのためにしていると思うと、
快感で体が熱くなり、止まらなくなる。
「まっててね……私の大事な大事な……なによりも大事な弟………――ちゃん…ふははは……
あっはは………」
気付けばもう、叩くところが無くなっちゃった……残念………


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