教授と助手とロリコンの微笑み 第1部 第2話
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うふ、うふ、うふふふふ…だめだ、考えただけで笑いがこみ上げてくる。

今が3時だから、あと2時間で樹さんが講義を終えてこの門から出てくるわ。

本当は5時に講義が終わって、6時待ち合わせの予定だったのだが
待ちきれなくて2時間も早くきてしまった…。

でもこうやって樹さんのことを考えながら待っていれば
時間なんてあっというまに過ぎちゃうわ。

それに待っているのもデートのうちだし。
んふふふ、今日はどうしようかしら。とりあえず今日公開の映画を見る予定だったわね。
樹さんが見たがっていたけど、どんな映画なのかしら。

チケットを見ると「Thief cat」と書いているわね…
Catってことは猫が主人公なのね。動物映画なのかしら。
でも樹さんが言うにはサスペンスホラーらしいし…
それにチケットには女性が鋸を振り回しながら女性を追いかける絵がのっているわね…。
猫に鋸?うーん、いまいちピンとこないけど、ホラーならキャーとか言って
手握ったり、抱きついたりと怖がるふりして暗闇に乗じて色々できるわね。

えへ、えへ、えへへへ…っといけないいけない、想像したら涎が。

その後はちょっと小奇麗な所で食事をして、夜の静かな公園で
愛を語り合い、そしてその後は近くのホテルであんなことやこんなことを………。
うふふふ、今夜は徹夜ねー……っといけないいけないつい興奮しすぎて鼻血が…。

しかも今回は秘策を用意しているのよね。
最近ゴムばかりだから前回のデートの時に樹さんの財布に入っていたゴムを
隙をみてこっそりと針で穴を開けているんだから。
まあゴムに穴が開いているかなんて、私が付けてあげている限り気づかないだろうし、
生も何回かしているからその時にもしかして…って思うわね。
しかも今日は危険日というこの2つの条件が揃えばできるかもしれない。
いいえ、できてみせるわ!!
そして万が一できちゃえばこれをきっかけにして学生結婚も夢では……
学生…結婚…結婚…結婚!!!!!!
キャー!キャー!!いいわっ!!夢が現実に!!……っといけないいけないつい
暴走しちゃってアソコが濡れてきちゃった。

大体樹さんも悪いのよ。いっつも私が結婚しようよとか
いつ両親に挨拶に来てくれるの?とか聞いているのに、曖昧な返事でかわされちゃうのよね。
だからこんな方法をとっちゃうんだから。
もしかして樹さんは、結婚ということに対してちょっと引いているのかもしれないわね。
まあそれならそれで既成事実を盾に迫れば、優しい樹さんだから責任をとって結婚を了承するわね。
ふふ、バッグには私の名前と判が押された婚姻届けも入っているから、
できちゃったらすぐ書いてもらって役所に持っていかなきゃ。
…………っと気が付けばもう4時だ。時間がたつのが早いな…。
ってなんで通行人のくせに私をジロジロ見んのよ。
見せもんじゃないからさっさと行きなさいよ!!ったく……ん?
一匹の「害虫」が私に近づいてくるわね。なに?彼氏なんかほっといてカラオケにでも行こうだぁ?
なんで私がアンタみたいな「害虫」とカラオケに行かなきゃいけないのよ。
「人間」の「男性」としかお付き合いはしませんので。…まあその人は樹さんしかいないのですが。
とはいえあまりはっきり言っても可哀想なので少しオブラードに包んで言ってあげましょう。

「害虫はとっとと自分の巣に帰って下さい。シッシッ」

うん、どうやら私の言葉を理解できたようね。それぐらいの知能はもっていて良かったわ。
帰り際なにか叫んでいたようだったけどなに言っていたのかさっぱり解らなかった。
全く…巣から出てこないでほしいです。

時計を見るとそろそろ5時になりそうだ。
ああ………早く…早く来て…樹さん…。

一方そのころ………

あの爆発事故で奇跡的にかすり傷で済んだ俺と弥生さんは、
埋まっていた教授を救出して改めて部屋を見渡してみた。
機械は壊れ、壁は崩れ、窓ガラスや薬品が入った瓶などは全部割れて、
すでに原型を留めないぐらい破壊されてしまったようだ。
しかしこのへやの現状よりも今は弥生さんが大変だ。
「少し状況を整理しましょう。」
「そうだな樹くん。」
「………………………」
一回深呼吸して
「まさしく部屋は全壊、機械も薬品類も木っ端微塵なのですが、みんなかすり傷ですんだのは
幸運でした。」
「うむ、まったくだ」
「………………………」
そこでさっきから黙っている弥生さんを見て
「ただ…弥生さんが………。」
「ん?弥生くんがどうかしたか?実験は成功し、ちっちゃくなって可愛くなったではないか。
うんうん」

ブチッ

ん?今なにか紐が切れたような音が…

「こんのロリコン教授が!!死ね!!」
「や、弥生さん!!落ち着いて!」

いきなり弥生さんが教授につかみかかったので、羽交い締めにして引き離した。
「樹!離せ!人をモルモットがわりにして!許さん!」
そう、教授が作った「若返り薬」は見事に成功し、それを
(騙されて)飲んだ弥生さんは(外見は)10歳児ぐらいになってしまったのだ。

「ち、ちょっと弥生さん、教授を殺したら元に戻れなくなるかもしれませんから
乱暴はやめましょう?」
「うっ………たしかに。」
ひとまず落ち着いたところでこれからどうするか話合った。

まずこの部屋はもう使えないので、元に戻す薬の製作は別の実験室でやり、
その実験室は教授の方で探すとのことだ。そして俺と弥生さんは今日の所はとりあえず帰ることにした。
門に向かう帰り道……
「しかしあの教授、服まで持っているとは…」
「呆れてものもいえないわ」
このままでは帰れないことを言うと、教授は別の部屋からぴったりのサイズの
トレーナーとスカートを持ってきたのだ。
「でもよく似合いますよ」
「似合っちゃダメだろ!…たく」
元気をだしてもらおうと思って言ってみたが、言葉はともかく少し表情が和やかになったようだ。よかった。
「で、これからどうしますか?」
「樹はこれからデートだろ?私は当座の寝床を探さないとな。」
「え?なんでですか?」俺がそういうと弥生さんは複雑な表情で
「樹も知っていると思うが、私の家は親が道場を開いているのは知っているな?」
「ええ、たしか親父さんが師範をしてるとか…」
そう、弥生さんの親父さんは総合格闘技の師範で、年末の格闘技イベントに出場していかつい外人を
蹴りでばったばったとマットに沈めてたっけ。
「闘うことしか頭にない親父の家に娘がちっちゃくなって帰ってみたらどうなるか…わかるだろ?
なに、電話で富士の樹海に籠もるとでも言っとけば怪しまないしな」
なにげに凄いこと言いってるがそれで納得する親も凄いな。
まぁたしかに家に帰れないのはわかったけど、でも寝床っていってもホテルじゃ
お金がいくら掛かるかわからないし、泊めてくれる友人がいるかどうかも……そうだ!
「弥生さん!いいこと思いつきました。当座でいいなら俺の家にきませんか?」
「は?」弥生さんは驚いているようだ
「俺の家だったら大学にも近いし、部屋も一つ空いているから遠慮することないですよ」
「待て待て、そう言ってくれるのは嬉しいが樹には彼女がいるだろ?無用の誤解を招くことになるだろ。」
弥生さんはそう言うがやはり心配だ
「でも…」
「そんなに心配するな。寝床くらいなんとでもなるさ。それよりも自分のことを考えな。
ほれ、門の所で身を捩っている子がそうではないのか?」
見ると門の所に晴香が頭をブンブン振って奇声をあげているのが見えた。
な、なにをしているんだ?
すると弥生さんが笑顔で
「早く行ってやれ。これ以上待たせるとあれ、通報されるぞ」
そう言う弥生さんを見ると笑顔ではあるけれど、なんか淋しそうに見えた
「でも……。」
「まったく…そんなんじゃハゲるぞ。大丈夫だって、寝床も大事だがまずは
元に戻ることが先決だからな。」
それはまあそうですけど…
「このあと実験棟1にいる後藤教授にことの次第を説明して相談するから、当座の寝床も大丈夫だ。
だから安心して行ってこい」
そうは言ってもなんか一抹の不安はあるけれど、俺なんかよりもしっかりしているから大丈夫だろう。
「わかりました。弥生さんが大丈夫と言うのでしたら大丈夫なのでしょう。」
「心配してくれてありがとう。大丈夫だから」
「でも約束して下さい。なにかあったら遠慮なく電話して下さい。飛んで行きますから」
「よく覚えておくわ」
そう言うと俺は門の所に向かって歩きだした。
その時後ろの弥生さんからぼそっとなにか独り言が聞こえたような気がしした。
「樹、あなたのその優しさは彼女だけに向けなさい。私に向けたら…期待しちゃうじゃない」

次回第3話「あんなヤツに遅れをとるとは…」


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