スウィッチブレイド・ナイフ 第6話
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さっきはアレでも猫を被っていたほうなのか。浅羽さんの剣幕は恐ろしかった。
美人なだけに青筋を立てて怒鳴るその姿は鬼のよう。

「・・・・・・そういうあなたこそ・・・・どういうつもりなんですか・・・・・・大体・・・・・
あなた馨さんの何なんですか・・・・・」

「私はねぇ、馨の幼馴染なの!!!ずっと昔からそばにいるのよ。
だからねぇ、アンタみたいなネクラ女にいつまでも縛られてる馨が気の毒でたまらないの!!!」

「幼馴染なら・・・・・いいじゃないですか。
わたしには、馨さんしかいないんです。親も、友達も、親戚もいません・・・・でも、そんなわたしを、
馨さんは見捨てませんでした・・・
だから、もう、もう、・・・・・駄目なんです・・・・・馨さんじゃないと・・・・だから、だから、
馨さんをわたしから盗っていかないで!!!」

自分でも言っていることは意味不明。
でも、ここで退いたら負けだと思った。

「ホント汚い女・・・・・そんな可愛い顔して・・・・・最初の事故だってあんたがちゃんと気をつけてれば
大したことなかったんでしょ。
それなのに、ずるい言葉で馨の良心を利用して・・・・!!昨日の怪我だってわざと階段から
落ちたんでしょ。医者が言ってたわ。どう考えてもあの怪我の仕方は変、ってね!!!」

「そんなことどうでもいいんです・・・・
馨さんが、馨さんがそばにいてくれれば!!!
私は馨さんが好きなんです。愛しているんです。
だからただの幼馴染のあなたには関係ないでしょう!!」

「ならはっきり言ったらどうよ!!!今まで自分の想いを隠すために事故のことを
利用してたってね!!!」

「!!!!!!!!!!!!!!!」

――――――――――――――――真実を抉られた。

どうしてこの人はまるで心を読むようにピンポイントで核心を突けるのか疑問に思ったが、
それ以上に心のダメージが大きい。
浅羽さんの剣幕に押されないように、恐怖で凍りつく表情で睨み返すのが精一杯だった。

「何も言い返せないのね。まぁ当たり前か〜そんなこと馨に話したらもうお見舞いに
来なくなっちゃうかもしれないし、最悪二度とあなたの前に現れないでしょうね〜
アイツ見かけによらず繊細で、素直だし。あのときだって最後まで慰めてあげたのは私なの。
そうよ、馨のことで世話を焼いたり手を繋いだりキスしたりセックスして、
アイツを愛せるのは私だけなの!!!
だから・・・・・・・・・・・・・・・・・・もう二度と加害者被害者の関係以外で馨に関わらないでくれる!!!??」

この人・・・・・馨さんと、したことあるの?・・・・・
嘘よ、嘘、嘘・・・・・・

「帰って!!!帰ってよ、この薄汚い牝犬!!!性の匂いを漂わせて馨さんを誘惑して!!汚らわしい、
厭らしい、排泄物以下の病原菌!!早く消えてよ!!
貴女なんて死んじゃえばいいのよ!!馨さんが貴女なんかに手を出すはず無いじゃない!
上手く陥れたんでしょ、卑怯者!!!!」

負けたと解っても心は抵抗を続ける。
頭に浮かんだ罵詈雑言を口の回る限り垂れ流し、右腕で狂ったように枕を振り回す。

「ふん・・・襲い掛かってきたのは馨のほうよ。まるで動物みたいに息を荒くして、
私の体を力任せに組み敷いた後で狼みたいに全身舐りまわしてくれたわ。
途中で理性を取り戻して、照れながら『愛してるよ』って囁いて中に熱いのをくれたときは
ホント初めてなのに飛びそうになったわ〜オンナの悦びってヤツ?
―――――――――まぁ、安心してよ。アンタは未来永劫絶対味わうことはないでしょうから」

――――――――――――――――馨さんの照れた表情が脳をフラッシュバックする。

――――――――――――――――あの笑顔が、優しさが、ぬくもりが、指先が、吐息が・・・・

――――――――――――――――全部この女のために・・・・・・!!

目の前が真っ赤になって、頭の中を白が埋め尽くす。

 

―――――――――――――それより先は覚えていない――――――――――――

 

 

 

言い負かしてやった。
あの女、私の虚言で意図も簡単に壊れた。

私の願望を事実のように語ってやったら泥棒猫は憤怒と絶望の表情を交互に繰り返した。
絹のような穢れを知らない肌が真っ赤に染まったり死んだように青ざめるのはとても面白かった。
マンガみたい!!・・・・
今思い出すだけで噴出してしまいそう。
そして最終的には明暗順応しているわけでもないのに大きな瞳をこぼさんばかりに見開いて
瞳孔を広げたり閉じたりしていた。
徐々に暗くなっていく瞳を睨みつけていると、声も出さずに涙をぼろぼろ流して動かなくなっちゃった。

そのまま放置してきたけどまさか手首切ったりはしないわよね?
階段から飛び降りた前例があるから油断できないけど担当医が見張ってるからまぁ平気でしょ。
それに私は死んでもらったほうが嬉しいけど、馨がこれ以上傷ついたら嫌だからせいぜい
廃人程度で済ませて欲しいもんだわ。

あの女には意気揚々と語ったけど馨とはキスまでしかしたことがない。
それも彼が寝ているときにした、触れるようなキスだけ。

ずーーーっと、そばでアピールし続けているのに馨はいつまでたっても気づかない。
私の性格がいけないのかもしれないけど、来年には大学を卒業しなくてはならない。
だからそろそろ私たちの関係にも区切りをつける頃なのかも。

さぁて、今日は行きつけのブティックで目一杯買い物して帰りましょ♪

――――――――本格的に馨を陥とすにはイロイロ準備も必要だしね
あははは〜楽しみぃ〜


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