だれもいない世界 第1回
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何してんだろ…
どうして此処にいるんだろ…
なんか記憶があやふやだから少し整理してみよう。
たしか今日は、久々のデートで近くにオープンした動物園に行ったんだっけ。
でも、色々動物がいたようだったけど健司さんばかり見ていたのでよく覚えていないや。
えへへ。

そのあと、お昼はベンチに座って私の手作りのお弁当を食べたんだっけ。あまり上手に
はできなかったけど「おいしいよ」って言って全部たべてくれたっけ。嬉しいなぁ〜。
また作ってあげるね。

……また?

え〜と、そのあとはショッピングしたり、映画を見たり、公園でお話をしたりしてたっけ
。とっても楽しかったね!今度はどこ行こうか?

……今度?

 

「バンッ!」

いつ終わるともしれない瞑想が、突然だれかが部屋に
飛び込んできたために終わりを迎えた。
……だれだろう?突然入ってきて…。

「ねえ…、冗談でしょ?一体なにしてんのよ?」
……だれに話てんだろ?

「早く目を覚まして家にかえるわよ?お姉ちゃんのいうことが
聞けないの?」
…………
「ねえ!ねえってば!なんで!どうして!
目ぇ覚ましてよ………………なんで……」
最後の方はもうほとんど啜り泣きで、なに言ってるかわからないな…。
するとキッと泣きはらした真っ赤な目で
こちらを睨み付けてきたかと思ったら
「なんで珠佳がここにいるのよ!!!」
――――え?
「なんで?なんで健司が死んで珠佳が生きてんのよ!どうしてよ…」
え?健司さんが死んだ?なに言ってるんだこの人は。
…あれ?ちょっとまって。そういえば…帰り道で
信号待ちしていた時に…車が歩道に乗り上げてきて…
こっちきたと思ったら健司さんが突然私を突き飛ばして…
それから…それから…。

「ちょっと!なんとか言ったらどうなのよ!」
「純望お姉ちゃん…私…なんで、どうして…」
そうだ思い出した。でもこれ以上考えることができない
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
部屋から飛び出した私はとにかく走った。
少しでも部屋から離れたかった。
雨が降っていてもいい
見知らぬ場所でもいい
とにかく遠くへ、遠くへ。

体がオーバーヒートして止まった時
気がついたらとある公園についていた。
よく覚えている…ここは…

健司さんに初めて会った場所だ。

そして私は泣いた。大泣きした。涙腺がこわれるぐらい泣いた。


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