弱き人々 第1回
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もし世界が自分中心なら

あの人と一緒に居られる
でも世界は自分の中でしか中心でいられない
自分の気持ちを貴方は、どう伝える?

午前9時23分46秒


激しく眠い・・・・

だが俺は大学に行く仕度をせねばいかん

鉛のように重い身体を起こして、洗面所に向かう
鏡で自分の顔を見る

「ひでぇ顔・・・・」
正直自分の今の顔を世界のニュースで流したら
優雅に朝をむかえるマダムからテレビ局に苦情殺到だね
しかも国際規模、テロだなそりゃ

顔に冷たい水を浴びせて眠気を顔から無理矢理引き剥がす
ほーら、すっきりきりりん☆

でもないね

俺の名前は村瀬完一(むらせ かんいち)

神龍大学(しんりゅうだいがく)の三年生
まぁ都内の23区に有る大学で、有名私立大だ

高校三年を勉学とスポーツとゲームに費やした俺
そんな俺は只両親の言い付けに従い今の大学に行った。
大学に入って特にすることも無く、生徒が多いだけに出席に関しても甘く
論文やレポートも楽な物、テストさえクリアすれば留年とは無縁

そんな人生

只・・・女とのいざこざさえ無ければ、だ。
何だかんだで仕度を済ませて大学に行くためバイクに跨る
さぁて今日も一日ファイト一発!

 

 

 

私の名前は霧島佳織(きりしま かおり)
村瀬先輩とは学部、サークルが同じ
それだけ

先輩との出会いはサークルの新入生歓迎パーティーだった
壁にもたれてボーッと酒を飲んでいただけ

それだけ
でも他の先輩と雰囲気が違った
落ち着いていて、何となく暖かい空気がそこにある感じがした

お、先輩の事考えていたら丁度居た

「せんぱーい!」
私は成る可く速く走る
振り向いた先輩はいつものように、おぅ、と言うだけだ

「今日は、サークル、出ますか?」
少し息が荒くて喋るのが辛い
「まぁ出れたらね、俺は忙しいのだ」
先輩は淡々とキャンパスに向かって歩いていく

「忙しいとは?」
私の予感では又下らない事だろう
「お嬢さん、そりゃあれだよ、ゲーセンだね」

先輩はエセのナイスガイスマイルを見せる
白い歯は光っては無い
「・・・・サークルより優先ですか?」
呆れますが馴れました
「違うね!俺には行かねばならぬ戦場が有るだけさ!」

「それがゲーセンですか?」
「そうだよ、今や小さいガキや大人はゲーセン行くのが流行だ」
そんな時代は永遠に来ませんね・・・

「とにかく今から来て下さい!高木先輩も来てますから!」
もう実力行使でも連れて行く
「っちょ!ちょ待て!ってか痛い痛い!襟掴むな!」

「逃げる前に実力行使です!」
「ユー!俺には二本の足が有るから使わせてくれYO!」

こんなあんなでサークル棟にまっしぐらな私達
先輩の世話するのは本当に幸せです♪

サークル、それは甘く切ない響き(か、どうかは知らない)

俺と佳織の二人はサークル棟に向かう
因みに所属してるのはテニスのサークル

テニス経験は無いけどね♪
あぁ世界はこんなにも美しい

「何ぶつくさ言ってるのですか?もう着きます」
「そうかい、なら後は入る勇気を出すだけだね」
俺には勇気は無い、何故ならドアの向こうは綺麗な花園だからさ

「高木先輩は怒ってませんから安心して下さい」
「ならば行くのが漢だね!」
俺は青いペンキの剥げたスチール扉を開ける

「高木よ!俺は帰って来たぁ!」
入るなり自分でも言う必要が有るか疑う言葉

しかし反応は無い
見えるのはパイプ椅子に腰掛けた女性
「ほぉ・・・君か?村瀬君」
その冷たい視線ならクール宅急便も冷凍車いらずだね
ここで怯めば俺は即死だ

「実は母が危篤でな、出たかったのだがね」
「言い訳無用、あんたやる気ある?」
その冷たい言葉で何人のM属性の男を逝かせるかは計測不能だね

「違うんだ高木!俺は只世界平和の為にね」
「茶、買ってこい」
その冷たいツンツンさ、ツンデレ喫茶で働くべきだね
ツンだけだけどね!

しかし何で高木は何時も俺がサークル出ないと機嫌悪いのかね
気にしてもしょうが無いね
みそ汁にワカメが無いことに悩むと一緒だ

いやぁ気にするか、俺はな
とにかく俺は茶を買いに行くべく出撃した、にんにん


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