しゅらばとる その6
[bottom]

貴葉と歩いていると、ふと視線を感じて立ち止まる。
俺の住んでいる家と貴葉の家は学校を挟んで対極の位置にあるため、こちら側へはあまり来ない。
貴葉とはいつも商店街で遊んでいるし、精々買い物か…あとは先生に会いに行くくらいだ。
因みに先生と言っても、別に教師じゃない、俺の師匠である。
「どうした、辰」
立ち止まった俺に素人目には判別不可能な怪訝な表情を浮かべる貴葉。
「ん、あぁ…」
それに対して曖昧に返事しながら、視線を感じた方を探るように見ていると…
道路の角で、こちらを呆然として見つめている小柄な影に気がついた。
華奢で幼い体躯に、ふわふわした柔らかそうな髪。
ボーイッシュな感じのする少女…ではなく、女の子っぽい少年が立っていた。
その少年には、あまりにも見覚えがありすぎた。
「ありゃ、雪兎じゃないか。お〜い、雪兎〜っ」
軽く手を振って声をかけると、雪兎が少し危うい足取りでこちらへと来る。
どうかしたのだろうか、何やら元気がないが…風邪か?
「お兄ちゃん…」
「おっす雪兎、学校の帰りか?」
「うん、お兄ちゃんも…?」
「応よ、これからこいつ…あぁ、俺の友達なんだけど、こいつの家で泊り込みで遊ぶ予定でな」
はて、何故だろう、貴葉を親指で指差しながら泊り込みと言った瞬間、雪兎の愛らしい顔が歪んだぞ。
「お兄ちゃん、その人お兄ちゃんの何なの…?」
「は? いや、友達だけど…」
「本当に? 本当の本当に友達なのっ?」
はて、雪兎は何故こんなにも必死と言うか、焦っているのだろうか?
「だから、友達だっての。どうしたんだよ雪兎、なんか変だぞ?」
とりあえず頭を撫でてやると、途端に表情がふにゃ…と溶ける。
ん、相変わらず撫で心地のいい頭だ。

「…辰、知り合いなのか」
今まで口を噤んでいた貴葉が、何やら不機嫌な声で…と言うかぶっちゃけお怒り気味で口を開いた。
な、なんだろう…俺逆鱗に触れるような事したか?
「あ、あぁ、俺の先生、つっても師匠なんだけど、その人の子供でさ、可愛い弟みたいなもん?」
「ほぅ、それにしちゃ随分な懐きようだな…」
貴葉の鋭い視線の先には、俺の身体に顔を埋めてグリグリと擦り寄っている雪兎の姿。
と言うか、
「ちょ、雪兎そこは駄目っ、そんな所でグリグリしちゃアカンってマジでっ!」
俺の体格と雪兎の身長の加減で、雪兎の顔が丁度俺の下腹部あたりにくるのだ。
そんな場所でグリグリされたら、色々と危ういではないかっ!
ちょっとの加減で男の重要部位がグリグリされちゃいますYO!

「ふ、仲の良いことで…」
怒りとかの負の感情が混じった言葉と共に、鼻で笑われました。
はて、俺は何か不味いことをしてしまったのだろうか…?
「ふにゃ〜、お兄ちゃ〜ん…」
とりあえず、雪兎を引き剥がそう。俺ショタちゃうし。


[top] [Back][list]

しゅらばとる その6 inserted by FC2 system