しゅらばとる その5
[bottom]

授業は滞りなく終了。
お昼は相変わらず姉二人のあ〜ん合戦が始まり、二人をお姉様と仰ぐ人たちからの
殺意の視線に晒されて過ごしました。
不動 辰真、今日も胃が痛いです。

「辰、帰るぞ」
「うぃ、ちと待ってくれ」
既に帰り支度を終えている貴葉に急かされ、帰り支度を整える。
と言っても教科書類はロッカーと机に放置プレイなので荷物は今朝持ってきた鞄のみ。
因みに貴葉は俺の事を辰と呼ぶ。こう呼ぶのは友人では貴葉だけだ。
「飯どうする、ピザか?」
「う〜ん、偶にはラーメンなんてどうだろうか?」
貴葉も俺も料理なんてできないので、夕飯は外食か出前になってしまう。
「悪くないが、まぁその時決めりゃいいだろ。行くぞ」
くいっと顎で教室の出入り口を示され、帰るのを諭される。
「へいへい、お供しますよ」
軽口を言いながら、俺達は貴葉の家へと歩みを進めた。

 

「雪兎くんバイバ〜イっ」
「うん、バイバ〜イっ」
お友達に手を振って別れる。仲の良い女の子、だけどあんまり好きじゃない。
だっていつもボクのこと女の子みたいとか可愛いとか言ってくるから。
女の子に可愛いとか言われても、ボク嬉しくないもん。
うん、やっぱり可愛いって言ってもらうならお兄ちゃんだ。
お兄ちゃんに頭をなでなでしてもらいながら、今日も可愛いぞって言ってもらえたら、何よりも嬉しいもん。
自分が華奢で女の子みたいだってことは自覚してる。
パパもママも可愛い可愛いって言って女の子の服ばっかり着せてくるもん。
前は嫌だったけど、今は嫌じゃない。
だって、お兄ちゃんが可愛いって言ってくれるもん、えへへ。
「はぁ、お兄ちゃんに会いたいなぁ…」
ぽつりと呟く。声に出ちゃうくらい会いたい。
会っておしゃべりしてなでなでしてもらって、いっぱい可愛がってもらうの。
最近はあんまりお兄ちゃんが遊びに来てくれないから寂しいよ…。
って、あれ…?
あそこを歩いてるのって…お兄ちゃんっ?
あぁ、間違いない、お兄ちゃんだ、大好きなお兄ちゃんだっ!
嬉しいな、嬉しいな、お兄ちゃんの家こっちじゃないから普段会えないのに。
どうしてここに居るんだろ、もしかしてボクと遊びに来てくれたのかなっ?
わ〜い、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃ――――

ねぇ、お兄ちゃん…その隣の人…誰なの…?


[top] [Back][list][Next: しゅらばとる その6]

しゅらばとる その5 inserted by FC2 system