しゅらばとる その1
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爽やかな朝、どこまでも続く青空、愛らしいスズメの声。
あぁ、世界はこんなにも明るいのに…

「…………………」

「…………………」

なして俺の周囲だけどんよりオーラたちこめてますかゴッド。

しゅらばとる(タイトル適当全体コメディ、時々イタイ系)

事の発端は、今朝の目覚めである。
俺こと不動 辰真(ふどう たつま)は、筋金入りの寝ぼすけであり、自力で朝起きるのは不可能な男です。
なので毎朝無意味な奮闘を続ける目覚し時計をスパンキング、二度寝直行がマイライフ。
起床時間をやや過ぎると、廊下からパタパタというスリッパの音が聞こえ、軽く扉がノックされる。
「辰真、もう朝だよ。起きなさい」
若干低い声が聞こえると、続けて扉がガチャリと音を立てる。
扉を開けた人物は、布団に包まり二度寝を慣行している俺を見て大抵溜息、時折苦笑を浮かべるらしい。
「ほら、起きるんだ辰真、遅刻してしまうだろ?」
と言って優しく布団を剥ぎ取り、眠る俺の頬を優しく撫でる。
撫でるその手は、若干ゴツゴツしているが、女性らしい柔らかな肌と、ミントの香り。
やや低い女性の声が、眠る意識に心地よい。
「むぅ…あと10分と少々…頼む椿姉ぇ…」
「む、そんな風におねだりされたら、お姉ちゃんはつい許してしまうじゃないか…って駄目だ、
甘やかすな私」
何やら葛藤しているのは俺の姉、不動 椿。
ショートヘアーに長身巨乳。顔立ちは絵に描いたようなプリンス系。男装がとっても似合う麗人風。
「ほら、あまりお姉ちゃんを困らせないでくれ…早く起きてくれないと、襲ってしまうじゃないか…」
と言ってモゾモゾと布団に侵入してくるマイシスター。
見た目は宝塚王子様系だが、中身はブラコンダメ姉である。

「ふふふ、眠り姫ならぬ眠り王子は、キスで目覚めさせるのが通例だったね…」
どこの通例でしょうか姉さん。
じゅるりと涎を舌で舐めとりつつ、俺の唇をロックオンする姉。
いい加減身の危険を感じるので起きる俺、ヘタレです。

「椿姉、起きたから離れ――むぐっ!?」
「ん…んん…っ」
はい、唇奪われました〜。
って言うか椿姉っ、ちょ、舌、舌は駄目だってっ、そんな啜りながら舐め上げんといて〜っ!

「死になさい雌犬めっ!!」
ヒュンッ!!
「―――っとと、危ないじゃないか、辰真に当たったらどう責任とって死んでくれるんだい、楓?」
俺の口内を蹂躙していた椿姉を離れさせたのは、風切り音を立てて振るわれた薙刀。
しかも刃は真剣ですよいやマジで。
「たっちゃんが傷ついたら、それこそ精魂、来世までかけて妻として尽くしますからご心配なく椿さん」
「あはは、朝から笑えない冗談を言うね楓、笑えな過ぎて思わず殺したくなったよ」
薙刀の一撃を人間離れした瞬発力で避けた椿姉の視線の先、物騒で痛い会話をする俺のもう一人の
姉の姿がそこにあった。
あの、姉さん方、喧嘩するなら広い所でお願いしますよ。もう部屋の物買い換えるの面倒なんで。
そう思いながら口に出さずに部屋から脱出。不動 辰真、ヘタレです。


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