姉妹日記 第18話B
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 お兄ちゃんの記憶に障害がでた
 記憶の整理が曖昧になり、急に子供のように振舞ったり、
 急に十六歳の少し大人びたお兄ちゃんになったり
 そして、日に日にその症状は重くなっていく
 どんどん記憶がなくなるのではない、記憶力が・・・・
 酷い時には5分前のことを忘れてしまい、自分が何をしていたのかすら忘れてしまうこともある
 許せない、あの女・・・・あ、もう血祭りにしてやったから関係ないか・・・・
 あの夜、私は南条秋乃のお腹を刺した、血を流し意識のないあの女を、
 私はお兄ちゃんとあの女が暮らしていたマンションの近くに捨てた
 今は、どうなっているか解らない
 まぁ、死んでいるでしょう・・・・可愛そうに、一人寂しく死んでいくなんて
 想像するだけで身震いするほどの快楽を憶えた
 後悔はない、罪悪感は消え、歓喜が残った
「夏お姉ちゃん、どうして・・・・服を脱ぐの?」
 お兄ちゃんの声がした、それも聞きなれる言葉を発した
 私は恐る恐る病室を覗いてみた
「涼ちゃん、涼ちゃんはねお姉ちゃんだけを見ていれば良いの、お姉ちゃんだけを・・・・ね」
「え、でも・・・・」
「大丈夫よ、涼ちゃん・・・・」
 ゆっくりとお兄ちゃんの唇がお姉ちゃんの唇で塞がれた
 ・・・・・・・・・・なんだろう?
 この気持ち、南条秋乃とお兄ちゃんが交わっていた時と同じ気持ちを私は抱いていた
 憎い、誰が?
 お兄ちゃんと交わるお姉ちゃんが・・・・
 殺したい、南条秋乃のように?
 そうだ、邪魔者は排除するの・・・・

「涼くん・・・・」
 あれから、私は涼くんと一度も逢えずにいた
 そして、数日前から秋乃の姿も見えない
 もうあんな子どうでもいいか・・・・
 私の初恋相手の涼くんを横から掻っ攫った時点でもうあんな子、姉妹でもなんでもない
 あの時は、正直負けたと思ったけど・・・・
 でもでも!諦めるなんてできない、私は涼くんのこと大好きだから・・・・
 私は父のコネを使って特別に涼くんの病状をしることが出来た
 なんでも記憶障害らしい、それも特異な例らしく病院でも大騒ぎになったらしい
 私は父に頼み込んで涼くんの病室の面会謝絶を私に限り解いてもらった
 ようやく、ようやく逢える・・・・
 私ははやる気持ちを抑えきれずに足早に病室に向かった
「死ねぇぇ!!!!」
 病院の白で清潔感漂う雰囲気とはまるで正反対な声がして私は残り数メートルとなった
 病室まで急いだ

 ナイフがベットに突き刺さった
「ちょ、なにするのよ!冬香!!!」
 許さない、お兄ちゃんに触れる女は誰であろうと
 今までなかった、お姉ちゃんがお兄ちゃんとSEXしていてもなんとも感じなかった
 けど、南条秋乃という最大の敵を始末したことにより私の中の標的が南条秋乃から
 神坂夏美に変わっていた
 おそらくこの感情は永遠に止まらない、一人が消えたらまたもう一人・・・・
 何時まで経っても変わらない、そう・・・・お兄ちゃんが完全に私の物になるまでは
「お兄ちゃんにこれ以上触れるなぁぁぁ!!!!!」
 犯罪者特有の追い込まれる感覚はなかった
 この行為が世間一般でいう犯罪行為だとしても、私にとっては正当な行為だからだ
「ふ、冬香・・・・うぅ」
 幼児化したお兄ちゃんが部屋の片隅で震えている
 待っててね、お兄ちゃん・・・・すぐに助けてあげるから
「自分がなにをしてるか、わかってるの」
「わかってるよ、でもね・・・・止められないんだもん、私・・・・お兄ちゃんが欲しいんだもん!」
 今度は確実に刺し殺す、ナイフをちらつかせ私は視線でそう語りかけた
「あんた・・・・ほんと、使えない子ね」
「・・・・」
「少しは使えると思ったから、狂いそうな気持ちを堪えていたのだけど・・・・無理!もう限界!
 あんたうざいのよ!」
 お姉ちゃんもようやく本性を露にしたようだ
「なつ・・・・お姉ちゃん?」
 見た?これがお姉ちゃんの本性なのよ、醜く己のことしか考えていないのよ
「涼ちゃんが少し私とイチャイチャしただけで、彼女でもないのに嫉妬して!
 暴力振るって!バカね!そんなことしたって涼ちゃんが喜ぶ訳ないでしょ!!
 涼ちゃんはきっと思っていたわ!暴力を振るってくる冬香よりも!
私の胸にすがりついて甘えたいってね!!!
涼ちゃんの気持ちもわからないくせして!涼ちゃんの周りうろちょろしちゃってさ!
うざいのよ!!!あんたは!消えなさいよ!お願いだから消えてよ!
これ以上私と涼ちゃんとの間を邪魔すんじゃないわよ!ボケ――――!!!!」
威圧感に押されたじろぐ私の隙を突いてお姉ちゃんが飛び掛ってきた
「取ったわよ!冬香!!!」
 私の上に馬乗りになるとお姉ちゃんは私の両手を押さえつけた
「うぐ・・・・うぐ!」
 力が抜け持っていた果物ナイフが私の手から離れた

「く!」
 必死で腕に力を込めナイフを取ろうとしたけど、馬乗りになっているお姉ちゃんの力には勝てず
 押さえ込まれてしまった
「ふふ、最後までダメダメな子ね・・・・ふ・ゆ・か・ちゃん♪」
 ナイフを奪ったお姉ちゃんが思い切り腕を振り上げ銀色に輝くナイフの先を私のノド元に向けた
「死ねぇぇ!!!!」
 瞬間、今までの記憶が走馬灯のように浮かんだ
 フラッシュのように記憶が巡っていく
「あんたらなにやってるのよ!!!!」
 その声に私は一気に現実に引き戻された
 南条秋乃の声だ、ナイフが私のノド元直前で止まった、見上げるとすぐ近くに南条秋乃が立っていた
「涼くんが怯えているわ、可哀想に」
 南条秋乃は恋敵が何も出来ないでいる間にという感じでお兄ちゃんに近づき抱きしめた
 南条秋乃が優しく頭を撫でるとお兄ちゃんは安心したかのように鼻を鳴らしその胸に顔をうずめた
「さぁ、私と一緒に行きましょうね・・・・涼くん」
 不敵に笑むと南条秋乃はお兄ちゃんと抱えるようにしてその場を去っていった


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