姉妹日記 第14話
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 ハサミを振り上げて、秋乃が私に突き立ててくる
 直前でそれをよけた
 ハサミがベットに食い込み、秋乃はそれをひきずり裂いていく
 そして、涼くんの縄を解く
「もう、ダメ・・・・私・・・・三日も、私以外の人が涼と・・・・しての・・・・見せられたのよ」
 どういうこと?
 いまいち状況はわからなかったけど、今はどうでもよかった
「も、誰にも渡さない・・・・涼は・・・・私の・・・・なんだから!」
 涼くんの胸に頬ずりしたあと秋乃はまた私にハサミを向けた
「私、いま・・・・なにするか解らないよ?妹でも・・・・殺しちゃうかも・・・・」
 瞳孔が完全に開いている秋乃がハサミを無軌道に振り回した
 でも、引けない・・・・ここで引いたら私は一番に欲しいものを永遠に失うことになるから
 もう、待つのも我慢も嫌!
「私は・・・・涼くんのことをずっと!」
「私は知らなかった・・・・春乃にとってはつらいことかもしれないけど、仕方のないことなの」
 一瞬顔を伏せ思い切り上げると秋乃は笑んだ
「恋愛ってね、失恋する人もいれば実る人も居るの・・・・私は後者・・・・春乃は前者なの」
 顔を歪める秋乃、生まれてからずっと一緒だったけど・・・・こんな顔を見るの初めてだった
「私と涼は心も身体も深く繋がってるの・・・人の取っちゃいけないんだよ?常識だよね」
「それは、でも・・・・私は涼くんと結婚の約束を・・・・」
「それ以上、涼くんを惑わすようなこと言うな!」
 な、怖い・・・・でも・・・・でも・・・・でも!
 私は・・・・好きなんだもの!諦めるなんて出来ない
「ダメだよ・・・・私ね、三日も地獄を見たんだよ?もう病気みたいなモノだよ・・・・
 これ以上刺激しないでよ」

 その言葉が脅しではないというのは、十二分に解る
 私は近くにあったカッターを素早く掴むと秋乃に向けた
「なに?ダメな子の春乃が私に歯向かうの?」
 やっぱり、ずっと前からそんな風に思っていたんだ!
「可愛そうな春乃ちゃん、勉強もできなくて・・・・落ち着きなくてがさつで、
 モテるようなこと言っても嘘なのも知ってたよ」
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・
「そんなことどうでも良かったの、私は春乃ちゃんを認めていた、行動力があって
 いつも明るくて・・・・・」
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・
「でもね、私の大事な者を取ろうとするのは許せないの!」
 少し後ろに下がり反動をつけ私に突きつけた
 私は怒りと憎悪の念を腕に込め震えを抑えて応戦する
「や、やめ・・・・ろ!」
 刹那、涼くんがよろめきながらも素早く私たちの間に割って入った
 そして腕から感じる生々しい感触・・・・
「りょ・・・・涼・・・・どうして・・・・」
「キミに・・・・そんなことさせたくなくて」
 秋乃の頬に自分の手を重ね涼くんは笑んだ
「愛してるよ・・・・秋乃さ・・・・ん」
 秋乃の頬を紅に染め背中にカッターを、お腹にハサミを刺された涼くんがその場に倒れた
「嫌・・・・嫌ぁぁぁぁ!!!!!」
 混乱しているくせに秋乃は必死で止血をしている
 私はただただ、唖然としその場を見つめているだけだった

「大丈夫かな、二人だけにして・・・・」
 食料を買いだめするため私をお姉ちゃんは近くにスーパーに買い物に行っていた
 その帰り道私は不安な心を少しでも消そうとお姉ちゃんにそう呼びかけた
「二人ともちゃんと縛ってあるし、大丈夫よ・・・・・」
 でも・・・・・
「あんなことして・・・・私たち」
「これはね、涼ちゃんの目を覚ます為には仕方のないことなの、それとも涼ちゃんがあのまま
 あのメス豚に汚されてもいいの?」
 私はハッとして首を思い切り横に振った
 他の女と付き合うと言われたとき
 家を出て行くと言われたとき
 もう、あんな想いをするのは嫌・・・・
「そうよ、それでいいの・・・・ふふ」
 お姉ちゃんが振り返って笑むと同時に私たちの横をサイレンを鳴らした救急車が
 私たちのマンションの方からやって来て抜けていった
 その時の寒気とあの感覚を私は今でも忘れない
 帰るとマンションに人だかりが出来ていた
 野次馬がこう言った
「男の人が事故かなんかで刺されたって・・・・・」
「女の子二人が必死で呼びかけていたわね・・・・・大丈夫かしら、あの男の子」
 その瞬間私たちの楽園は崩壊した・・・・・


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