姉妹日記 第11話
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「は!」
 気を失い僕が暗闇に捕らわれている間にもう夕方になっていた
 重い身体を包み込む柔らかく暖かな感触に僕は首をずらした
「秋乃さん?」
 僕は秋乃さんに抱きつき昨晩の恐怖を忘れようとすがった
「あ〜ん、涼くんったら、だ・い・た・ん・・・・もしかして姉妹丼狙ってる?」
 おかしい、おかしいよ・・・・・
 僕の秋乃さんはこんな反応しない!
 僕は抱きついた相手が春乃さんだと気づき慌てて離れた・・・・
 すぐに春乃さんの後ろからすごい殺気を感じ僕はゆっくりと視線を春乃さんから上に向かわせた
 ど、ど、どうしよう・・・・・
 目を引きつらせ僕を見つめる秋乃さんに軽い恐怖を感じながら僕は後ろに引いた
「涼さん!」
 覇気に満ちた声を上げて僕と春乃さんの間に割って入り僕の腕を力いっぱい抱きしめた
「春乃・・・・涼さんに手出したら・・・・どうなるかわかってるんでしょうね!」
 普段の落ち着きをなくし春乃さんを牽制するかのように睨み付け僕は自分の物なのとばかりに抱きつく
「え〜いいじゃん、姉妹丼・・・・ね?」
 同意を求めないでください、秋乃さんが物凄い形相で睨んでいるのがあなたには見えないんですか?

 まったく、まったく、まったく、まったく!
 涼さんは私のなの・・・・妹だからといって許すわけにはいかない
 少しはしたないとは思ったけど私は身体を涼さんに絡ませるように抱きつき春乃を牽制した
 それなのに春乃ったら、姉妹丼なんて言って・・・・ぜんぜん引かない
 いくら私もとはいっても涼さんが私以外と・・・・考えられない!
 あれ?涼さんが少し怯えてる?
 ごめんね、嫉妬深くて・・・・
 でも、私ワガママなの・・・・涼さんのことになると・・・・
 この同棲のことだってそう、理由は・・・・当然涼さんのご姉妹のこと
 荒らされた部屋・・・・あんなことするのは二人以外ありえない
 もちろん自立のためというのは嘘じゃない・・・・
 でも私は涼さんが取られるのが嫌だった
 だから・・・・
「あの、なにシリアスなの?ここはラブコメ展開じゃないの?」
 顔を強張らせる私に春乃がやや遠慮がちにそう言う
 私がニコッと笑むと春乃は全身を震わせて身を下げた
「あの〜、涼くん・・・・あとは・・・・よろ」
「あ〜!!!!逃げるなよ〜〜〜!!!!」
 何を仲良さそうにしてるのかな?
 身を乗り出す涼さんを私はグッと引きこちらに寄せた
「あぐ・・・・その・・・・ごめん」
「やましいこと・・・・考えてた」
 そう言うと涼さんは思い切り首を横に振ってそれを否定する
「ほんとに?」
「ほんと、ほんと・・・・」
 なら・・・・いいか
「涼さん、荷物運ぶの手伝って・・・・」
 涼さんは頷き立ち上がると玄関に向かった
「あ、外のをお願いします」
 また頷くとドアを開き外に置いてあったダンボールを持ち上げた
 それと同時に涼さんの顔が強張りダンボールを地面に落とした
「こんにちは、今日から隣に引越ししました・・・・・神坂です」
 聞き覚えのある声に私が慌ててその場に向かうとそこには満面の笑みの
 涼さんのご姉妹の姿があった・・・・
「これから、よろしくね・・・・お兄ちゃん」

 ふふ、驚いてる驚いてる
 驚かせるだけじゃ足りない
 あの女には地獄の底よりも深い苦しみと絶望を味あわせてやる
 お兄ちゃんをたぶらかした罰、存分に味合わせてやるんだから!
 私とお姉ちゃんは挨拶もそこそこに呆然とする二人を素通りして部屋に入った
 そしてある一室に入る
 よしよし、お姉ちゃんとうなずきあって私は笑んだ
 モニターに映し出された隣の部屋・・・・
 お風呂場にお兄ちゃんの部屋・・・・それとあの女の部屋
 居間に台所・・・・ここに居て隣の部屋の全てが見える
 昨日の夜から録画してあったものを見た
 大丈夫、お兄ちゃんはあのあと気を失ったままだった
 でも、誰?あの女にそっくりな女が居た
 馴れ馴れしくお兄ちゃんの頭を膝に乗っけて
「この子も・・・・要注意ね・・・・冬香ちゃん」
 
 許さない、涼ちゃんは私のなのに・・・・
 それにしても、ふふ・・・・バカな子・・・・
 私は冬香を見て微笑した
 なにがバカかって?だって、涼ちゃんは二人のもの・・・・なんて言葉信じちゃってるのよ?
 バッカじゃないの!あんたなんかと涼ちゃんを共有なんてとんでもない
 涼ちゃんに近づく女はたとえ妹でも許さない
 でも、いまはまだ利用価値がある
 利用価値がなくなったら・・・・・ふふ
 どうしようかしら、これ以上周りをうろちょろされても困るのよね・・・・
 今はどうてもいいか・・・・・後で考えましょう・・・・・
 冬香もそうだけど・・・・あの女にも少し感謝しなくちゃね
 だってやっと踏ん切りがついた物
 姉弟の壁を越える踏ん切りが・・・・
 でもあなたの至福の時間もここまで・・・・・
 冬香も・・・・秋乃も・・・・・みんな私にとって踏み台でしかない
 あんたたちは私の踏み台になって初めて価値が出るの
 そう、届かない涼ちゃんの元へ私は二人を踏み台にして登るの
 見てなさい、気づいた時にもう届かないところで愛し合う私と涼ちゃんを・・・・
 指を咥えながらね・・・・ふふ
 あ、はははははは!!!!!!


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