姉妹日記 第8話
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 翌日、僕は放課後に秋乃さんから呼び出された
「どうしたの?」
 風で揺らめく髪を抑えながら秋乃さんは、僕に告白したときと同じように一大決心の顔した
「あのね、ご姉妹って・・・・いつも涼さんにベタベタなのかな?」
 へ?なに・・・・あまりに簡単な質問に僕はアホみたいに口を開いてぽかんとしてしまった
 ようやく平静さを取り戻して彼女の質問のことを考えてみる
 ベタベタ・・・・かな?最近は・・・・
 夏姉ちゃんは朝ちゃんと起きるようになった・・・・
 問題なのは朝起きてすぐに目に入るのは夏姉ちゃんの顔
 つまり朝起きて僕の布団にもぐりこんで寝顔をみているらしい・・・・
 冬香は・・・・前に風呂に入ってるとき乱入してきたな・・・・
 背中流してあげる・・・・なんて
 それと毎日交互に学校の校門の前で僕を待っている夏姉ちゃんと冬香
 あれ?ダメじゃん・・・・まえより悪化してるじゃん!
 今頃になって僕はそんな風に思えた
 あ、はは・・・・僕って鈍すぎ
「そうかもね・・・・二人とも年頃なんだし、僕にくっ付いてばかりだと彼氏も・・・・」
「ほんとにそう想ってるんですね!」
 ずんずんと僕に迫って白熱する秋乃さん
「あのね、私の親戚の経営するマンションで一人暮らししてる気ない?」
 パンフレットのようなものを取り出して僕に見せてくれる秋乃さん
 結構広いな・・・・それに窓の向こうの景色も申し分ない
 でも・・・・
「無理だよ・・・・一人暮らしなんて・・・・お金とか掛かるし」
 彼女はそれを聞いてニパっと笑んで僕の手と自分の手を重ねた
「お姉さん方も・・・・そろそろ、兄離れ弟離れした方がいいと思うんです、
 お二人のことを想っているなら・・・・今がそのときなんです」
 そうだ、いくら二人が僕とずっと一緒に居たいと思っていても僕たちは兄弟なんだ
 いつかそれぞれ伴侶をみつけて離れ離れにならなきゃならない
 僕も、秋乃さんと出逢ったんだ・・・・この先この先なんて言ってられない
 絶対的な信頼を僕に寄せてくれる秋乃さんの為
 そして僕と夏姉ちゃんと冬香のため
 将来のことも考えて決心しなくちゃならない
 でも・・・・
「僕もそうしたいよ、でも・・・・お金」
 一人暮らしなんてできるほど僕に蓄えはない
 それに・・・・バイトしようにもこの学校はバイト禁止なのでできない
「お金の心配なら無用ですよ・・・・私が」
「それはできないよ」
 親しき仲にも礼儀あり
 僕の信念だ、そ僕は小さい頃からずっと破らずにいた誓いだ

「お金の心配ならいりませんですよ!」
 彼女は少し口調を変にしながら僕に必死で訴えかけた
「でもね、それは出来ないよ・・・・」
「なら、私も・・・・なら良いんですね?」
 へ?私も・・・・それって
「同棲ってこと?」
 彼女は顔を真っ赤にし、うつむき、僕の手に指を這わせてもじもじしだした
 でもそれって・・・・僕ヒモじゃん!
「両親の許可はとってあります」
 そこまで進めていたのか・・・・僕を想ってしてくれてるにしてはあまりに必死だ
 なんか理由があるのかな?
 いけない、いけない・・・・前に友達が言ってた
 長続きのコツは信じる事だって
 相手を信じていれば自然と相手も自分を信じてくれる
 僕は変に納得させられた言葉を思い返した
 そうだよ、彼女は僕の恋人信じてあげなきゃ疑ったりなんてしちゃダメだ
「でも、それじゃあ・・・・」
「なら、将来会社に就職したら二人ですこしずつ返しましょ?」
 あれ?それって結婚も前提ですよね、秋乃さん?
「私の将来の旦那さまなんですから・・・・と、いうことは私の両親はあなたの両親も同じですよ」
 そ、そうなのかな?なんか矛盾しているような気がする
 以前の僕なら結婚を意識させられるとたじろいでいただろうけど今はそんなことはなかった
 日に日に僕の彼女への気持ちは大きくなっている
「涼さんは少し人に甘えてもいいと思いますよ?好意は受けていつか返せばいいんですよ」
 いい機会なのかもしれない
 僕も二人から離れて見てみたい
 自分がどこまでできるのかを
「わかったよ、秋乃さんがそこまで言うのなら」
「やった〜♪」
 飛び跳ねて喜ぶ秋乃さん
 僕は無邪気に跳ねる彼女に魅せられていた

「すっげ〜」
 再びポカンとしてしまった
 あの後彼女と一緒に下見でマンションまで来てみた
 まずその大きさに驚かされてしまった
「はやく、はやく〜」
 喜び今にもスキップしそうな勢いの秋乃さんが僕の手を引く
「秋乃、その子が噂の彼氏?」
 後ろから掛けられた声に僕は先ほどとは別の意味で驚いた
 一緒だ・・・・秋乃さんの声の生き写しだった
 振り返るとそこには秋乃さんがもう一人いた
 でも、少し違う
 秋乃さんの髪は肩くらいまででストレート
 でも、その子は腰まで長く少しウェーブが掛かっている
「あれ〜驚いてる?もしかして言ってないの?秋乃?」
「あ、いっけない・・・・まだだった」
 状況の理解できない僕に秋乃さんが慌てて頭を下げた
「この子は私の双子の妹の春乃です♪」
 双子?双子?えぇぇーーーーー!
「うっそ〜ん」
 驚く僕を見て春乃さんはくすくすと笑んだ
「そっか、そっか・・・・とうとう告白したのよね〜、中三のときからいきなり女の子らしく
なったと思ったけど・・・・これはそうでもしたくなるわね」
 どうやら秋乃さんから僕のことは聞いてるらしい
 当たり前か・・・・でも、初耳だよ・・・・
 そうでもないか、まだ中学の頃兄弟がいるって言ってたもんな
 遅いよ、今頃思い出すなんて・・・・僕の記憶って案外単純にできてるのかも
「春乃ちゃんそれは・・・・その言わない約束でしょ?」
「あ、いけない・・・・・でもいいじゃん、こんな素敵な彼氏GETできたんだから」
 品定めするかのように僕の全身に視線を這わせて春乃さんはにっこりと笑んだ
「して、どうだったの私の姉の・・・・お・あ・じ・は?」
 ぶ・・・・・・
「春乃!」
「きゃ〜怒らないで〜ただのひがみよ〜羨ましいの〜素敵な彼氏が居て〜」


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