姉妹日記 第4話
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 小さな息が漏れる
 意識が消えかかってきたみたい・・・・なにがあったの?
 痛みもなくなってきた・・・・
「冬香!」
 誰かが倒れる音がした・・・・私はゆっくりと瞳を開くと音のした方へ視線を向けた
「離して!お兄ちゃん!私が!私が!!!!」
 もがき爪を立てる少女を涼さんが必死で押さえている
「やめてくれ!冬香!どうしちゃったんだよ!」
 急に肩を物凄い力で握られた・・・・痛む首を必死で動かすとそれは視界にすぐに入った
 大人っぽい落ち着いた感じの女の人が私の上に乗っている
 目を細めた女の人は一瞬だけど微笑んだ
 息・・・・苦しい・・・・・う・・・・・
 再び視界が霞んでいくのを感じながら私は必死で涼さんの方へ手を伸ばした
「秋乃さん!」
 私の名が叫ばれると首を絞める力がいっそう強くなった
「やめてくれ!」
 泣き叫ぶ声が私の鼓膜を通り抜けるかのように聞こえたあとに急に首に込められた力がなくなった
 温もり・・・誰だろう?
 雨でも降ってるのかな?少し冷たいよ・・・・
「秋乃さん・・・・ごめんなさい・・・・・ごめんなさい」
 白の色に包まれながら私の意識もその中に消えていった

 ・・・・ここは?
「秋乃さん!」
 視界が開くと泣き腫らした目をこすっている涼さんが浮かんだ
「ここは?」
「病院だよ・・・・」
 そっか・・・・助けてくれたのね?ありがとう・・・・
「ごめんね・・・・僕のせいで・・・・僕のせいで」
 そんなことない・・・・そう言ってあげたいのに・・・・
 私・・・・

 あれから数時間で私の意識は完全に回復した
 謝り続ける涼さんをなだめてようやく事を把握することができた
 どうやら私は涼さんのご姉妹に乱暴されたらしい
 聞いてみると涼さんのご姉妹はどう考えても精神の病気だとわかった
「ここって南条医院だよね?」
「そ、そうだけど・・・・?」
 見覚えあるはずだよ・・・・だってここは
「私のお父様が経営している病院だよ・・・・」
「え・・・・そうだったの?」
 なんか・・・・可愛いな
 驚く顔も魅了的だな・・・・いけないけいない
「たぶんね・・・・それは精神の病気だよ」
「心の病?」
「そう・・・・だからね、お父様に相談してみます・・・・」
 それを聞いて涼さんは嬉しさを表したあとすぐに悲しげに俯いた
「ごめんね・・・・僕のせいで」
「ふふ・・・・気にしない、気にしない」
 私は少し痛む手を涼さんの頬に重ねてゆっくりと下に這わした
「これでも院長の娘ですよ?そこらへんの女の子よりも理解はあると思うよ」
「でも!」
「私たち・・・・恋人ですよね」
 涼さんは私を見て少し微笑んだ
「キミが僕を許してくれるのなら」
 なんだ・・・・そんな心配してたの?
 バカだな・・・・・もう
 ああ、愛おしい・・・・この人が・・・・とても
「私の気持ちは変わらないよ・・・・涼さん」
 そう・・・・永遠に

「精神科医さんに相談してみます・・・」
「ありがとう・・・・悪いね・・・・・気を使ってもらって」
 私は首を振って気にしないでと合図を送ってにっこりと笑んだ
「将来・・・・私の義姉妹にもなるんだから」
「そ、それは・・・・・うぅ」
 ムッ・・・・なにかな、その反応は・・・・
 涼さんは結婚を遠まわしに連想させると引いてしまうタイプみたい
 男の人ってみんなそうなのかな?
 私にとって彼以外の価値観なんてどうでもいいか
「ああ、なんか胸が痛いよ〜」
「え!?え!!!」
 いかにも演技ですよって感じで私はよろめいてベットに頭を付けた
「痛いよ・・・・・」
「ご、ごめんなさい・・・・あの時背中を強く打ったから・・・・・だから!」
 おどおどしながら涼さんが私の背中をさすってくれた
「私のこと・・・・好き?」
「え・・・・・う、うん」
「愛してる?」
「勿論だよ・・・・・」
 少し不思議そうな顔をした涼さんの顔が布団と私との間にある指の隙間から見えた
 優しいな涼さんは・・・・
「治らないよ・・・・」
「うぅ、どうしよう・・・・・」
「だって・・・・胸が痛いのは・・・・あなたのことでいっぱいだからだよ」
 げふ!大声を上げたあと涼さんが顔を真っ赤にしてベットに上半身を横たえた
「いつか結婚してくれますね?」
「はひ・・・・秋乃さん」
「あ、そうだ・・・・退院したらデートしませんか?」
「はひ・・・・秋乃さん」
 なんかバカップルみたいですね・・・・私たち
 幸せ・・・・


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