姉妹日記 第3話
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「冬香・・・・今日も学校休むのか?」
 ドアをノックしながら何度目になるかわからないほど言った言葉を繰り返す
 あれ?ドアが開いた・・・・
 部屋に入った瞬間ほんとに冬香か?思えるほど別人になっていた
 やつれていて・・・・
「出てけ!あんたなんか大嫌いよ!」
 罵りの声に僕は引きそうになったけど・・・・冬香のことを思えばこそだ
「学校まで一緒に行こう」
 僕と二人は違う学校に通っている
 遠いというわけではないし・・・・走ればなんとかなるはず
「来るな!バカ!」
 差し伸べた手が払われた・・・・痛い
 手の甲が赤くなってしまった
「あ、ごめんなさい・・・・私」
 急に顔色を変えて冬香は俺に擦り寄った
「嫌いにならないでね?・・・・ね?お兄ちゃん・・・・・」
 心配げに僕の手の甲をさする
 おかしい・・・・どうしちゃったの?
 こんなの僕が知っている冬香じゃない

「夏姉ちゃん・・・・?」
 今度は夏姉ちゃんの部屋に入る・・・・
 夏姉ちゃんの部屋には比較的楽に入れる・・・・でも
「遊びに来てくれたの?涼ちゃん・・・・じゃあね、夏美ね〜、おままごとがいい♪」
 そう言って夏姉ちゃんは後ろから茶碗を取り出した
「どうぞ・・・・あなた・・・・」
 ゆっくりとした動作で夏姉ちゃんが僕の前に茶碗を置いた
 茶碗にはよく小さい子がやるような泥団子が入ってる
「美味しいですか?あなた・・・・・ふふ」
 呆然とする僕を見て夏姉ちゃんが微笑んだ
 本気でやってるの?僕・・・・わからないよ
 いつも優しくて僕を包み込むような包容力を持っていた夏姉ちゃん
 口うるさいけど世話好きですごく活発だった冬香
 どこで・・・・歯車がずれてしまったのかな?
 僕・・・・・僕・・・・・

 どうしたらいいか分からないよ・・・・誰でもいいから助けてよ!
「涼さ〜ん!秋乃です〜!」
 外からの声が神様が僕に使わしてくれた天使のように思えた
 僕は階段を駆け下りて玄関を開く
「秋乃さん・・・・・」
「わ・・・・少し痩せちゃった?」
 一週間ぶりの恋人の顔に僕は今にも泣きそうな顔をしてしまったかもしれない
 優しく笑んで秋乃さんは僕を抱きしめてくた
「今は・・・・このまま・・・・・ね?」
 甘い香りと柔らかさに包まれて僕は自分の力が抜けていくのを止められずに彼女に身を預けた
「誰・・・・その女・・・・・お兄ちゃん」
「・・・・・・・・ただのお友達よね〜涼ちゃん」
 声のするほうを見るとそこには夏姉ちゃんと冬香がすさまじい形相で秋乃を睨んでいた
「初めまして、涼さんのご兄弟ですか?私涼くんとお付き合いさせ・・・・」
 秋乃さんの目が驚きで見開かれた
 瞬間冬香が僕を押しのけて秋乃さんに飛び掛った
「あんたが・・・・・あんたがお兄ちゃんをたぶらかしたのね!」
「あ・・・・・く!」 
 秋乃さんの上に馬乗りになって胸元を思い切り掴み上下に振る
 秋乃さんの小さな身体が地面に何度もぶつかりその度に小さなうめき声がした
「やめろ!」
 すぐに止めようとした僕の背後に夏姉ちゃんが回り両脇を押さえた
「離してよ!秋乃さんが!」
「二人はね・・・・プロレスごっこしてるだけよ〜・・・・・心配ないわよ」
 笑顔の奥になにか黒いものが見えた気がした
「だ・か・ら・・・・涼ちゃんは向こうで夏美とオママゴトしましょうね♪」」
 どこにそんな力があるのか
 この一週間ろくになにも食べていない細腕で僕の身体を引きずる夏姉ちゃん
「殺してやる!」
 僕がもたもたしているうちに小さな声も聞こえなくなってきた
 秋乃・・・・さん?
「消えちまえ!」
 やめて・・・・冬香!
「お兄ちゃんを惑わす泥棒猫!」


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