BLOOD 本編 第6章
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 深い闇のその身を沈めて私は目を閉じた
 まるで海の中かのような感覚
 全てを包めれて私を溶かしていく
 怖い・・・・?そんな気持ちなんて知らない
 辛い・・・・?感じたことの負かった
 片目を失った少女が私の背後に立っている
 少女が呟く・・・・
『あなたは何も知らない・・・・』
 そう、知ろうとも思わないし知りたくもない
『何を?』
 ・・・・・私は知りたくないの!あっちに行って
『そう、そうやってまた殻に閉じこもるの?』
 私は私・・・・今のままでいい
『また逃げるの?・・・・逃げた先になにがあったの?』
 やめて!やめて・・・・・!!!!
「愛してるよ・・・・プレシア・・・・キミを・・・・・護れなくてごめん」
 いやぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!
「彼は私のモノよ・・・・プレシアなんかに渡さない」
 殺してやる・・・・ゼルに近づく女は許さない!
『何も知らないんじゃなかったの?』
 少女は不敵な微笑を浮かべて私に一歩一歩と近づいてくる
 黒く変色している瞳があった部分から黒い血が滴った
『また失うの?奪われていいの?メシアに・・・・』
 うるさい!うるさい!ゼルは私だけを見てくれる!私だけを愛してくる!
 そう言ったもの!そうだって・・・・・私に言ってくれたもの!
 私は剣を引き抜くと暗闇の中でそこだけ輝いてるかのようなところに居る少女に向かっていく
 消えてしまえ・・・・私の忌まわしい過去と共に!
 少女の胸に剣を突き立てる
 心臓部を射抜く確かな感覚がして私は安堵した
『ふふ・・・・・逃げられない、あなたは逃げられない』
 少女は痛みを感じてる風な素振りもなくまた口元を緩めた
『ゼルはあなたは愛してくれる・・・・でも、結ばれない・・・・』
 気づくと私の胸から大量の血が噴出していた
 痛いよ・・・・苦しいよ・・・・
 寂しいよ・・・・辛いよ・・・・
 悲しい・・・・よ・・・・・ゼル

「ゼル!」
 私は物凄い勢いで起き上がった
「おい、大丈夫か?」
 ゼルの微笑みに私の不安な気持ちが一瞬で消え去り
 無意識のうちに抱きついていた
「怖い夢でも・・・・・見てたのか?」
 私は何を答えるでもなくゼルの胸にすがり付いた
 少し落ち着いてきた
「驚いたぞ、メシア様に屋敷の周りを案内してたらお前とリルスさんが倒れててさ」
 そっか・・・夢か・・・・
「リルスさんは隣の部屋で寝てる・・・・なにかあったのか?
 私は先ほどまでの出来事が全て夢なんだと理解した
 ゼルのぬくもりがここに確かにある
 これは夢じゃない・・・・
 ゼルは私の物・・・・全部・・・全部・・・・
「私・・・・大嫌い・・・・」
 嘘・・・・ほんとは大好き・・・・愛してる
 ゼル・・・・私・・・・
・・・・・・・怖いよ

 今にも壊れそうなほどその小さな身を恐怖でいっぱいにして俺にすがりついていたプレシアも
 少し落ち着きまた眠りに付いた
 俺は長い髪を撫でると気持ちよさそうに寝息を少し立ててプレシアが寝返りをうった
 しばらくして俺はその部屋を出た・・・・
「兄様・・・またプレシアですか」
 顔を俯けたリストが俺を出迎えてくれた
 嬉しくもなんともない・・・・
「いい加減兄離れしてくれないか?」
「なんでですか・・・・・」
 そんな・・・・なんだ・・・・えっと
「兄妹だからな・・・・」
「嘘・・・・嘘つき!」
 リストが急に顔を上げてすごい勢いで迫ってくる
 俺はいつものようにそれを軽くかわしてリストの肩を掴んだ
「私・・・・知ってるんですよ・・・・」
 俺はリストの勝ち誇ったような顔で言われた言葉に愕然とした
 なんて言った・・・・知っている?なにを・・・・はったりだ
 でも、そんなこというってことは・・・・
 俺は冷汗を見つからないように拭うとリストの横をそのまま通ろうとした
「どこに行くんですか!?」
 すぐに俺の腕が掴まれてリストが俺の進行を止めた
「プレシアに飲み物を・・・・」
「プレシア!プレシア!プレシア!プレシア!プレシア!プレシア!プレシア!プレアア!
 プレシア!・・・・・うんざりです」
 すごく冷酷な声だった
 思わずゾッとしていまいそうな威圧感を放ちながらリストは俺の腕に込める力を強めた
 俺の腕にリストの爪が食い込み血がにじむ
「言ったでしょ・・・・知っているって、言ってもいいんですか?あなたの大好きなプレシアに・・・・」
 一瞬見せてしまった俺の動揺を見逃す訳もなくリストはおもちゃをもらった子供のようにはしゃぎだした
「ふふ!ふふふ・・・・・これで兄様は私のものです・・・・」
 いきなり口付けを食らい俺は後ろに仰け反った
 逃がすものかと背中に手を回してリストは俺をその場に倒した
「さぁ、愛し合いましょう・・・・兄様」
「おい、プレシアが・・・・」
「私の前であの女の名前を呼ぶな!」
 もう逃げられそうのなかった
「ふふ、兄様・・・・兄様には私がいるじゃないですか・・・・ずっと傍にいますよ」


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