BLOOD 本編 第4章
[bottom]

「はぁ〜」
 おかしい・・・・彼・・・・ゼルと出会ってから私はおかしい
 ゼルのことばかり考えている
 もう数日経っているのに・・・・頬にはまだ熱を感じる
「どうしましたか?メシアさま?」
 リルスが心配そうな顔で私にそう問う
 なにも答えない私にリルスは肩をすかすと窓を開いた
 朝日の清々しい光が私の身体を照らして小鳥のさえずりが私の心を満たしてくれた
 でも心の奥にある隙間のような物までは満たしてはくれなかった
「恋・・・・ですね」
 恋?私は長年頭を悩ましていた謎が解けた学士のような感覚を感じ迫るようにリルスに詰め寄った
「なぜ私が恋をしていると?」
「恋わずらいと言いますでしょ・・・・・ため息をついたり誰か一人のことばかり考えたり」
 私が・・・・恋を?
「一目惚れなんて・・・・私はそんな軽い女ではありませんよ?」
「なら、運命だと思えばいいじゃないですか・・・・恋などいままでしたことなかったのでしょ?」
 そうか・・・・運命か・・・・
 私は悩みが解消された爽快感で窓に広がる広大な景色に目を向けて
 思い切り息を吸い込んだ
 気持ちいい・・・・それに・・・・素敵
 こんな素敵な気持ち初めて・・・・・
「リルス!」
 待ってましたとばかりにリルスが私の前に衣装ダンスを持ってきて広げた

 ここが彼の国・・・・
 幸い私が親善の為に国に来たと言うと国王は手厚く出迎えてくれた
 私がゼルを気に入ったと言うと王は『ぶっきらぼうな甥ですが気に入っていたたでけて嬉しいですよ』
 と笑い飛ばした
 私が国の案内をとたのむと王は気を利かせてゼルをその役を任せてくれた
「・・・・・・・」
 どうかしたのかしら?最初に逢った時のあのおちゃらけた感じは陰を潜めてまるで従者のように
 私の命令を待っているよう
「あの?・・・・私、なにか気に触ることでもいたしましたか?」
「いえ・・・・そんなことは」
 その瞳に私はあることを思い出した
 変わったのではない・・・・彼が変わったのは私がその瞳の色が左右違うと言った時から
「あなた・・・・私を探していたと仰いましたね?」
「はい・・・・長年」
「どうしてかしら?」
 ゼルは歩みを止めると私をまっすぐに見つめた
 それだけのことなのに・・・・その瞳に私が映っていると感じるだけで私がまるで恍惚したかのように
 顔を染めた
 息遣いもまるで私のものではないみたい
「あなたに・・・・尽くす為です」
 なんでもしてくれるの?私に?・・・・なら
「キス・・・・してください」

 まったく、まったく!
 ゼルはいったい何をしているの!?
 気・・・・気になってなんていない!
 ただ・・・・・そう、ゼルがまた鼻の下を伸ばして女の子に迷惑を掛けているに違いない
 女の子がゼルの毒牙にかからないかどうかが心配なの!
 バカらしい・・・・誰に言い訳しているのかな?
 思えば思うほど・・・・私は・・・・もう少し素直になれたら
 ゼルは私にキスしてくれるかもしれない
 抱いてくれるかもしれない・・・・
 思い浮かべたその光景が現実と重なった
 え・・・・・
 向こうでゼルがひざまずき私以外の女にの手の甲に口付けていた
 女が不満そうな声を出すとゼルは立ち上がり女の頬に手を乗せた
 やめて・・・・やめて!

 ゼルが愛していいのは私だけなの!
 ゼルを愛していいのは私だけなの!
 触れていいのも・・・・・触れられるのも・・・・ゼルのすべては私のものなの!
 ゼルなにをしているの?ダメよ・・・・やめてお願いだから・・・・
 そんな女に・・・・私だけなんだよ?
 言ったじゃない・・・・愛してるって・・・・・囁いてくれたじゃない
 私だけを見てくれるって・・・・私を護るって・・・・・
 悪夢は続いた・・・・
 ゆっくりとゼルは女に口付けた
・・・・ゼル?

 ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!
 ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!
 ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!
 ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!

 嘘だと言って!悪夢だと言って!私以外にキスなんてしないって言って!
 あんな女嫌いだって言って!私だけを見て!私だけに触れて!私だけを愛して!
 私にとって世界はあなたなの!その私からそれを奪わないで!私に気づいて!
 今なら間に合うから!そんな薄汚れた女より私の方がいいでしょ
 もう過ぎてしまったことはなにも言わない!でもそれ以上はやめて!

 私を見て!私を見て!私を見て!私に気づいて!私に気づいて!私に気づいて!
 私を見て!私を見て!私を見て!私に気づいて!私に気づいて!私に気づいて!
 私を見て!私を見て!私を見て!私に気づいて!私に気づいて!私に気づいて!
 私を見て!私を見て!私を見て!私に気づいて!私に気づいて!私に気づいて!

 こんなにも愛しているんでよ?あなたの為なら私はなんだってやってみせます
 人を殺す事だっていとわない!今まであなたの言うことはなんでもきいてきたじゃないですか!
 それに気づかないゼルもゼルだけど!許せない!あの女!私のささやかな幸せを奪った!
 許せない!不満とばかりに舌を絡めるように催促している
 許せない!殺してやる・・・・・殺してやる!

 

 

 

 

 殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!
 殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!
 殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!
 殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!
 殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!

 その醜くキスの快感で喘ぐ声を発するノド元を裂いてやる!
 男を惑わすきらびやかな髪を根こそぎ引っこ抜いてやる!
 ゼルにそれ以上近づくならその両足も切り裂いてやる!
 それ以上ゼルに触れるならその両腕を切り落としてやる!
 これ見よがしにゼルに押し付けるその胸も判別できないほどずたずたにしてやる!
 ゼルを惑わすその綺麗な顔も皮を剥いで原型の分からないほどにしてやる!
 そうよ・・・・ゼルと私の間を邪魔する女はみんな私が壊してやる!


[top] [Back][list][Next: BLOOD 本編 第5章]

BLOOD 本編 第4章 inserted by FC2 system